先週まで掲載していた中京の考察のため、中断したデュランダル産駒について続きを考えてみたい(2月15日掲載)。
まずは、忘れてしまった読者も多いと思うので、前回までの話をまとめてみよう。デュランダル産駒は芝1200m以下の場合、複勝回収率は高いのに単勝回収率が伸びず、勝ちきれない傾向があること。それに関連して芝距離短縮の単勝回収率が不気味なほど伸びないという話だった。
基本的にエンジンの掛かりが遅いのだ。このような現象は、その後行われたレースで、身をもって体感したのでさっそく検証してみよう。
ニシノビークイックという馬がフローラルウォーク賞(2012/3/4、中京芝1400m)に前走1600mからの短縮で出てきた。これはどう見てもMでは理想的な短縮と言われる形だ。まず崩れることは考えられない。短縮におけるデュランダル産駒の勝ちきれないデータは頭をよぎったが、とにかく短縮の形が綺麗なので、凡走のシーンは思い浮かばない。そこで本命にしてみた。
ところがどうだ。いい短縮だと思って見ていたが、追い込み届かずに3着と、いかにもデュランダル産駒の短縮らしい結末に終わってしまったのだ。前走の3角7番手から、今回は3角9番手と位置取りを後ろにして差してくるも、前の2頭を捉えきれずに3着という結末である。
「なるほど、こういう形になるのか…!」
確かに直線で寄られてスムーズさを欠く不利があった。その不利がなければ連対していただろう。だが、その不利そのものが、デュランダル産駒の短縮ということを象徴しているように私には見えた。瞬時の反応が悪くて短縮だと不利を受けやすく、勝てたはずのレースをこのように取りこぼす確率が上がるのだ。そのため、馬連や3連複の方が馬券的には無難になってしまう。
ニシノビークイックは2走前の3歳500万下(2012/1/15、京都芝1600m)も似た形だった。前走は芝2000mのエリカ賞で短縮。エリカ賞では3角3番手だったが、500万下ではは3角5番手に位置を下げ、4着という惜しい競馬に終わっている。
タイプとしてはパワーが持続するS要素の強いタイプで、そういう意味では前に行く位置取りショックが一番ハマまりやすい。
例えば直近のデュランダル産駒の勝ち鞍は、3月25日中京芝1600m、4歳上500万下のフェアリーレイなのだが、これが象徴的だった。
前走は同距離ではあったが3角6番手から、今回は逃げに出る位置取りショックで10番人気1着と激走したのだ。突然逃げに出る位置取りショックの場合は、どんな馬でも一番破壊力があるわけだが、この手の突然のショックは騎手に聞かないと分からない部分が多い(今回の場合は減量ジョッキーへの乗り替わりで、逃げの指示が出ていたのかもしれないが)。
メンバー構成や、減量、延長などで、前走より前に行く位置取りショックを掛けそうな穴馬がいたら、デュランダル産駒の場合、一応チェックしておくのが好ましいだろう。
さて、余談だがプロ野球シーズンが始まった。そこで今年の横浜DeNAについて考えてみよう。もちろん、競馬の原稿はいつもと同じ分量書いてあるので、これ以降はおまけということで安心して頂きたい(笑)。
今年は権藤さん以来の楽しみなシーズンを迎えようとしている。というのも、牽制アウトを厭わずにリードを大きく取って積極的に走る野球に舵を切ったからだ。
10年以上の間、何度も他のコラムでも書いてきたことだが、バント自体、得点率の悪い攻撃方法だ。1アウトを無条件に献上するのに加え、失敗のリスク、失敗した場合の指揮の著しい低下が考えられる。
それほど1点が入る確率に大きな変化がない割に、大量点の機会が減るのも問題だ。さらにはランナーがフォアボールの場合は、コントロールが付かないピッチャーの精神的な不安定に対して、1アウトを与えて精神安定剤を渡すようなものになる。
「1球で送りバントを決めて流れがよくなりますね」なんて解説は馬鹿げている。1球で1アウトほどピッチャーが喜ぶ話はない。またランナー1、2塁の場合はバントの成功率そのものが低いし、2塁ランナーが飛び出すケースもある。しかも仮に成功したとしても点が入る保証はまったくない。せっかくの押せ押せの流れをせき止めてしまって、場に澱みを作る怖さも出てくる。
バントが許されるケースは、ほぼ完封ばかりの絶対的エースが好調な投球をしていて、抑えも年間失敗2,3回までの絶対的な投手がいるケース。終盤に4点以上リードしているとき、相手に精神的なショックを与えたいケース。9回裏同点のノーアウト1塁で、かつランナーが盗塁出来る選手ではないケース。ランナーが1塁にいて、次の打者がピッチャーまたは著しくヒットの確率が低い選手の場合。
以上の場合でも送る必要はないのだが、あえて言えばだいたいこんなもんだろう。ただ、それでも日本では他に送らなければいけない場面がいくつかある。
たとえば接戦で最終回を迎えた攻撃の場面ランナー1、2塁になり、いかにも送りバントをしそうなタイプのバッターが打席に入ったケースだ。この場合も、本来2塁ランナーの走塁スキルが高くなければ送るべきではない。でも、日本では送らなければいけないのだ。これは士気の問題である。
日本では、その場面は送るべきだと子供のときから教えられ、その行為がチームという集団を支える象徴となっている。人のために犠牲を捧げるという日本的精神だ。それを裏切って「打て」のサインを送った指揮官は、もしそれを失敗した場合、チーム内での信頼を失う。それだけならまだしも、マスコミからも叩かれ、まともな指揮ができない状態に追い込まれる。
ここで指揮官がしなければならないことは、戦略的に送りバントが正しくないことを理解しておくことだ。それを踏まえて、日本という共同体の中で要求される役割を演じる。それならバントは仕方がない。それを理解して送らせていたのは、近年では恐らく落合監督と星野監督ぐらいだろう。権藤監督は単なるバント嫌いの攻めだるまに過ぎず、そこまでは考えていなかった。
たが、やはり一番美しく正しいのは権藤さんの野球だったのも確かだ。常に前へ出て、引いては駄目だという闘い方である。プロスポーツは戦場だ。闘うときは、相手を圧倒しなければいけない。守りに入れば一気に押し込まれる。相撲で引くのと同じ、絶対にやってはいけないことだ。
そして攻めに必要なのはリズムである。リズムを常に意識して、流れをせき止めてはいけない。特に横浜のような圧倒的に戦力不足で弱いチームは送りバントなんて以ての外だ。バントをやって良いのは、投手力が安定し、強い主軸のいるチャンピオンチームだけである。大きな流れを作り出し、波を形成しながら襲いかかれば、強さが倍増するばかりか、相手の疲労を誘うことも出来る(ちなみに今後は梶谷、荒波、北という3選手に注目していただきたい)。
これは競馬における馬も同じだ。我々は鮮度があって、意欲のある馬を買わなければいけない。
これを機にはじめてモバゲーとやらをやってみたのだが、私に合うものでもなかった。本当にこのビジネスモデルで将来までベイスターズを支えてくれるのか心配だが、ぜひ頑張って経営して、日本を代表するカルチャービジネスのひとつとして世界に出ていってほしいものである。ちなみに私の好きなゲームソフトは…と、話が長くなってしまったので今回はこれで終わりにしておこう。
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