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ディープインパクト産駒・ステップと母父

  • 2012年04月11日(水) 18時00分
 ここでも何度も解説してきたが、未だにとらえどころがない部分を残すのがディープインパクト産駒だ。産駒によって様々な表情を見せるので、全体像を掴みにくい。精神的な難しさ、脆さを持ちつつ、闘う意欲もあるのが、より輪郭をはっきりさせない。今まで私が分析してきた種牡馬の中でも、1、2を争う、「よく分からなさ」だ。

 そこで今週は、直近のGIでディープインパクト産駒の人気馬が多数出走していた桜花賞を振り返りながら、現状で分かっている部分を再確認していこうと思う。

 このレースには1番人気ジョワドヴィーヴル、2番人気ジェンティルドンナ、4番人気ヴィルシーナ、7番人気パララサルーと、4頭のディープインパクト産駒が出走していた。

 この中で私が本命に選んだのはジェンティルドンナだった。前日の感じから、馬場はやや内枠不利に傾いてきていた。馬場は生き物なので日曜にどう変化するかは神のみぞ知るだが、この週は天候変化がなく、さらに1日進むのだから、普通に考えれば少なくとも急に内枠が有利になる可能性はそれほど高くない。

 これは皆さんご存じだろうが、外が伸びて、差しの決まる馬場での外目の枠では、ディープインパクト産駒は比較的堅実だ。それとメンバー的に、とんでもない急流というのは考えられない。恐らく平均ペースの範疇だろう。

 以前書いたが、速すぎない流れというのも、ディープインパクト産駒のツボだ。前走より急激に速くなると対応出来ない産駒が多い。以上から、外目に入ったディープインパクト産駒には絶好の条件が揃っている。

 で、外目の枠で何を選ぶかだが、最初にヴィルシーナについて考えて見よう。この馬は他のディープインパクト産駒3頭と違って、2走前が2000mである。つまり長い距離を経験している。M的には比較的プラスと捉えられるステップだ(短縮ショックの反動は気になるが、前走がそれほど激走でもなく、またレース間隔が開いているのでほとんど気になるレベルでもない)。ただ前走が前半36.6秒のスロー。2走前が2000mというのも、桜花賞の速めの流れに対しての備えとしてはやや気掛かりになる。

 ということで、ディープインパクト産駒のステップとしてはそれほどよろしくないと考えた。そこで残るのがジョワドヴィーヴルとジェンティルドンナ。ただジョワドヴィーヴルはマイルGIも走っているので厳しい流れを経験しているように思えるが、じつは前走のチューリップ賞の前半35.7秒が最速だ。同じ阪神マイルだった阪神JFの0.4秒差圧勝のパフォーマンスは素晴らしかったが、このレースの前半は35.8秒。マイルGIとしては超の付くレベルのスローだ。

 逆に考えれば、これだけのスローだったからこそ、圧倒的パフォーマンスで阪神JFを差し切ったとも言える。実際、レース後の予想着順回顧でも、スローだったのが良かったという解説をした。ハイペースだったら凡走していたかもしれないわけで、必ずしも差し馬だから速い流れが良いわけではない。

 さすがに今回はそこまでの超スローはないだろう。となると、対応に不安が残る。結局残るのは、シンザン記念でそこそこの流れを体験しているジェンティルドンナということになる。そして最後の決め手になったのが、血統面だ。

 去年、ディープインパクト産駒の解説をしたときに、母父にS要素の強いタイプを持ってきた方が安定しやすいというようなことを話したのを覚えている読者も多いだろう。リアルインパクトが母父S系で、激流の安田記念を制したという話である。

 ジェンティルドンナ、ヴィルシーナの母父は比較的S要素が強いが、ジョワドヴィーヴルの母父はL系カーリアンだ。量的安定は与えるが、闘う意欲は薄い。

 今までの緩い流ればかりのステップから、ある程度厳しい流れになる桜花賞で、それに対応するには、ディープインパクト産駒の場合、特に母父のS要素は重要と考えられる。以上のような問題意識からジェンティルドンナを本命に選んだというわけである。

 また、今週もおまけを少し。それにしても中畑監督には失望した。

 もちろん、勝てないからではない。そんなことで失望しているようでは、横浜ファンを20年以上続けるのは不可能である。あの戦力で闘うのだから、もちろん負けるのは仕方ない。

 それより、その作戦だ。盗塁に失敗するや否や、急に弱気の虫が出てきたのか、あるいはどこかから恐れていた日本的なプレッシャーがあったのか、送りバントばかりをするようになり、ベテランを重用するようになった。

 そうすれば結論は目に見えている。早速、無得点を重ね記録を作り、さらに萎縮して点を取りたくて送りバントを繰り返す。

 引きっぱなしだ。そんな引いた送りバントばかりしていたら、点を取れないのは当たり前だ。あるいは1点取っても、突き放されるのをただ待つだけである。

 流れは澱み、どんどん重苦しくなる。恐怖を感じると、人がどれほど早く守りに入ってしまうのか、それを目の当たりにして、私も気を引き締めないといけないと思いを新たにした。

 闘いは引いては終わりで、行くしかないのである。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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