春GI特別企画!昨秋、好評だった今井雅宏氏本人による「GI回顧&展望」をこの春も3回限定で特別公開!「大穴血統講座2012春」第一回は天皇賞・春&NHKマイルCを天才が斬る!!
担当編集(以下、編) 今年も競馬王とnetkeiba.comのコラボ企画ということで、3回限定のGI特別企画をお届けすることになりました。昨年末はブエナビスタなど、ズバズバ好凡走のパターンを解説して頂いてその通りになり大反響でした。そこでまたお願いしたいと思います。今回は天皇賞春とNHKマイルCの展望をお聞きしたいと思いますが、その前に例によってここ2回のGIを軽く振り返っていただけますか。まずは桜花賞から、ジェンティルドンナの勝因をあげるとすれば?本命だったんですよね?
今井(以下、今) シンザン記念を牡馬相手に勝ったことでチューリップ賞はストレスと反動で負けたけど、今回はそれが消えたというのがM的な勝因だ。それと当日は外目の枠の差し馬に有利だったから、それがディープインパクト産駒に向いたのもある。
編 ただ、外枠の差しならジョワドヴィーヴルも該当しましたよね。
今 ジョワドヴィーヴルの場合は、チューリップ賞で本番に向けて馬群を割る競馬をさせたということで評価もされていたけど、そこで3着したことが逆にストレスになったのもある。揉まれて惨敗なら関係ないけど、むしろ負荷がかかったうえに、競馬に向けてのテンションも下がってしまった。あとは小さい馬だからマイナス体重も余計に応えたよ。
編 ディープインパクト産駒は、どの馬もマイナス体重でしたよね。
今 ディープ産駒は使い減りするのでだいたいマイナス体重なんだけど、ジョワドはそのなかでも一番小さいから。同じマイナス4キロでも、大きい馬にくらべて416キロは致命傷になりやすい。特にオークスと違って桜花賞はパワー競馬だから小柄な馬の馬体減りは良くない。
編 私は内枠のマイナスはわかっていたものの、パララサルーの勢いを上に取ってしまいました。
今 内が荒れて重い馬場になったときの内枠は、他の種牡馬以上にディープ産駒は苦手だから。
編 ディープ産駒は、全般的に重い馬場が苦手なんですか?
今 そうともいえないよ。元気な状態ならば苦にしない馬もいる。ただ、パララサルーは不良のOP特別を勝っての中3週でマイナス10キロ。疲れが出ちゃった。枠に関係なく言ったらディープ産駒で一番体重が減っていたパララサルーが、着順も一番悪かったわけだよね。
編 滞在で減った体重を戻したかったようですが、増えなかったですね。
今 滞在はけっこう難しいんだよ、人間でいったら居候するみたいなものだからね。滞在でのテンションのあがり方は馬によって極端で、合う合わないの振り幅が大きいから、栗東滞在で勝負するのはギャンブルで怖いよ。パララサルーは滞在でマイナス10キロ、デビューからだとマイナス20キロだったろ。環境の変化がイヤになってしまったタイプだ。重い馬場で勝っているから、そこに期待した人もいるんだろうけど、それ以前の問題になっちゃったんだ。
編 皐月賞も1番人気のグランデッツァが5着に終わりました。
今 グランデッツァは休み明けに激走して疲労とストレスがあった。アグネスタキオンは間隔をあけるほうがいいから前走は走れる状態だったし、その好走から中3週は心身が硬くなりやすくて危なかった。だから、ゴールドシップにしようと思ったら…。
編 何かマイナスがあったんですか?
今 土曜が雨の外差しで日曜は晴れる予報だから、内の乾きが早まって、極端な内の前残りに変わると考えて「普通の馬場なら一番有利だが」って書きながら、3着馬本命にして対抗に回しちゃったよ(涙)。当日も差し馬場になったから、そのままあっさりゴールドシップが勝っちゃった。なにしろ、前の9レースは全部追い込みが決まって、内の先行馬は全滅という、差さないと無理な馬場だったから。3連複は1点目できっちり当てたけど。
編 私は上位人気馬の逆転候補として、トリップにしていました。
今 それはないぞ(笑)。弥生賞連対は一番ストレスが溜まるのに、その状況で多頭数のタフな競馬で当日内が伸びないのに内枠だろ?もしこの状況で来たら歴史的名馬だよ。それに、クロフネも休み明けのほうが走るし、疲れてるときに揉まれるのも嫌がるから。
編 重馬場の経験が生きるかと思ったんですけど。
今 弥生賞は休み明けでフレッシュなときだったから重馬場でも走ったけど、今回はね。これはどんな血統にもいえるけど、疲れがあるときに重い馬場の内枠、とくに揉まれ込まれる状況は一番キツいから。
編 まったく見当違いの狙いだったわけか、恥ずかしいですぅ〜。
今 まぁ、人生はそういうものだから(笑)。
◆天皇賞・春展望
編 大注目のオルフェーヴルからいきましょうか。今井さんはオルフェーヴルをデビュー当初から注目していて、有馬記念でも不安材料が少なくこれはもう仕方ないということで、めったにないGIで1番人気を本命にしたんですよね。
今 有馬記念は初古馬戦で鮮度があったし、相手が強くなるほど力を発揮するのがC系ステイゴールド産駒の特徴だから、古馬との初対決は余計に有利だった。でも、阪神大賞典では本命にしないで、ギュスターヴグライを本命にしたんだよ。最近、雨が多くて馬場が読めずに予想はベイスターズ同様散々だけど、何故かこういうキーになるレースは当ててるね(笑)。まぁ、大きいレースはレース質が固定されやすくって当てやすいのがあるんだけど。
編 あのときはオルフェーヴルは単勝1.1倍の大本命でしたが・・・。どうしてギュスターヴクライですか?
今 ギュスターヴクライは大賞典の2走前が準OPで古馬重賞は2戦目という鮮度があったことと、オルフェーヴルは少頭数の外枠だったから。C系は内枠で馬群に入って集中させたほうがいいという話は、さんざんしてきたでしょ。このときは相手も弱いから集中力を切らす可能性がそれなりにあった。
編 そのとおり、外枠で引っかかってしまいましたね。となると、今回も外枠ではないほうがいいですか?
今 多頭数ならばそれほど問題はないだろうけど、内枠がいいに越したことはないだろう。それから有馬記念のときにも話したけど、前哨戦で追い込んでばかりいると戦う意欲が薄れてくるのが馬の特徴でもあるんだよ。特に非L系はね。
編 思い出しました。前回のこの企画で教えてもらいましたが、後ろから行く競馬ばかりしていると、気分が乗らなくなってしまうんでしたね。
今 そういう意味では、阪神大賞典は後ろからの軽い、かったるい競馬をしたわけではないから、逆に良かったと思うよ。
編 ただ、逸走したことによって無理はしたんじゃないかと思うんですけど。あれで消耗したことにはなりませんか?
今 結局負けは負けだから、それが直接的な心身ストレスにはなっていない。もちろん、おかしなことをしてしまったということに対する、精神的な後遺症がどれだけ残るかはわからない部分だけどね。
編 では、今回の理想条件は?
今 内〜中目の枠で速めの流れなら戦う意欲が出やすい。あと、精神的な後遺症は馬体に出やすいから、極端に馬体重が減っていたら注意すべきだろう。それから追いきりは時計より規則性が重要だから、順調に追いきれているかどうか。
編 まずは追いきりと馬体重で精神的部分をチェックしながら、枠順と流れを考えればいいですね。そのオルフェーヴルに阪神大賞典で先着したギュスターヴクライはどうでしょう?本命だったわけですが。
今 鮮度は一戦毎に失われていくから、前回のほうが良かったことは確か。ただ、他のトップクラスと比較すればまだ古馬重賞のレース経験は少ないから、それはプラス材料だろうね。
編 ハーツクライ産駒として気をつける点は?
今 もともと戦う意欲が強く集中しているときは頑張れるし、強い相手にも関係ないから揉まれることも問題はない。ただ、気持ちがスパンと切れやすいのも特徴だよ。
編 気持ちが切れていないかは、どこを見るといいですか?
今 見極めは難しいところだけど、たとえばキョウワジャンヌはローズS3着・秋華賞2着だったのに、マイルCSは相手が強かったこともあるけど18着で、次走の阪神牝馬Sも12着でしょ。
編 おお、見事にキレてますね。つまり、昨年から3着以内を外していないギュスターヴクライも、集中が続いているということですね。
今 そうだね。ハークライは力とは関係なく急にキレるんだけど、それがいつなのかがわかりづらいのもまたハーツクライなんだよねぇ。
編 一度崩れたら、キレた可能性が高いということになるんですね。でも、キレる瞬間を見極めるのは難しそう…。
今 これはどの血統にもいえることだけど、キレさせないようにするには位置取りを変えて刺激を与えるとか、走りに気持ちを集中させるのがいい。
編 そういわれると、ウインバリアシオンもハーツクライ産駒らしい成績ですね。
今 ウインバリアシオンの場合は、追い込みと捲りに徹しているでしょ。つまり、ハーツクライ産駒で精神コントロールが難しいから、気分を乗らせるために細工をしないといけない。京都記念は2番人気6着だけど、このときはキレちゃった。
編 今回は追い込んで2着した日経賞の後ですが。
今 コントロールするには一番後ろから行くのが無難ではあるけど、逆に思い切って逃げるとかすれば面白いだろうね。ルメールだったら、前に行く位置取りショック掛けるよ、たぶん(笑)。ハーツクライはパワー型というのもあるけど、馬場が湿っているとか特殊な走りづらい馬場だと、走ることに飽きず、走りに集中しやすい。そこはダンスインザダーク産駒と同じだよ。
編 有力馬では、ジャングルポケット産駒のトーセンジョーダンがいます。前走の大阪杯は逃げて3着でした。
今 この馬自身、消耗戦向きの体力タイプでスローのヨーイドンはよくない。だから、自分から動いて消耗戦に持ち込んだほうがいいし、58キロを背負っていたぶん切れ味は殺がれるから、前走の逃げた判断は見ていて納得できるよ。休み明けは逃げたほうが気分よく競馬できるし。
編 前走のレースぶりと着順は想定内ですね。
今 逃げるショックを本番に取っておきたかったとはいえるけどね。もし一押しをするなら、矯めて捲らせるとか大逃げを打つとか変化をつけることが有効だよ。いずれにしろ、スタミナ勝負に持ち込みたいので、上がりがかかるほうがいいからね。
編 上がりがかかる展開にするなら、逃げて自分でペースを作ったらどうでしょう?
今 でも前走も逃げているから、ふつうの逃げだとマンネリ化しちゃっう。だから、もし逃げるなら大逃げとか、1頭が離した逃げで縦長の2、3番手とか、団子状態は一番避けたい。団子状態になるくらいなら、道中溜めて一気に捲るほうが気持ちが乗りやすいよ。
編 馬場状態の理想はありますか?
今 湿ったほうがいいね。
編 なんだか、オルフェーヴルで仕方ないのかなという気がしてきましたよ。穴で面白そうな馬は…。メイショウウズシオは2走前に準OP勝ちして、初重賞挑戦です。
今 鮮度としてはこれ以上ないけど(笑)。オペラハウス産駒は、馬群がバラけて少し重い馬場で、揉まれなければ一発あるからね、ガハハハ。
◆NHKマイルC展望
編 つづいて、NHKマイルCをお願いします。まずは、予想でもマイネルロブストから当てられた朝日杯FS勝ちのアルフレードですが、前回のこの企画のときに的確な解説をして頂いた馬ですよ。
今 マイルGIの前哨戦で同じマイル戦を使うとストレスが出るので、1800のスプリングSというのはローテーション的には有利だ。
編 短縮もプラスですか?
今 そうだね。2000だと根幹距離だから疲れるけど、非根幹距離の1800ならば疲れが溜まりにくいので、なおいい。ただ、この馬の場合、気になるのは少しでも嫌なことがあると投げ出すシンボリクリスエス産駒だってこと。
編 ハーツクライとはまた違ったタイプのキレる種牡馬ですか。
今 ハーツクライのS系は戦う意欲はあるのでやる気を盛り上げてやると、強い相手や困難な状況でも走れるんだけど、弱い相手に負けることもある。シンボリクリスエスのL系は困難な状況だと嫌気が差してしまうんだ。
編 『大穴血統辞典』のなかでも、シンボリクリスエス産駒は弱い相手に安定して強い、TRに強い血統だと書いてありました。
今 だからGIでも隙間系に強い。そういう意味では、NHKマイルCはクラシックに行かない馬が出走する隙間系GIだから悪くはないんだけど。あと、2〜3歳とかまだ若くて生命力に満ち溢れているとき、レース経験が少ないときは、多少の困難にも耐えられる。
編 これも前回の企画で、2歳GIに向く理由として教えてもらいました。となると、今回もそれほどマイナス要素はなさそうですね。
今 ただ、その効果も、前回の朝日杯より1つ薄れてはいるよ。それから、肉体的には長距離に適性があるんだけど、精神的には自分の適性よりも短い距離、力が余っているうちにレースが終わるような距離だと力を出しやすいのがシンボリクリスエス産駒。だからサンカルロは1400m〜1600mが物理的には合うんだけど、一番強い相手に高いパフォーマンスを見せてるのは1200だ。
編 マイルなら、投げ出す前に走りきれる可能性が高いわけですね。マイナス点は?
今 朝日杯は初GIだったけど、今回は2度目のGIなので鮮度は落ちる。それから、朝日杯は500万からの格上げ初戦でデビュー3戦目で鮮度抜群だから、内枠で揉まれても大丈夫だと予想でも評価したんだけど、今回は鮮度が消えたぶん過剰に揉まれると投げ出す。超高速とか滑るとか、特殊馬場でのもの凄く単調な競馬が良い。あとは、さっきもいったようにシンボリクリスエスは体力を生かして相手を見下ろして走るのが理想だから、馬体減りは自慢の体力が鈍るから避けたい。それがステイゴールドのC系とは、投げ出すの意味が違うところだよ。
編 そういえば、前走のスプリングSもデビュー以来最低体重だったので、当日の馬体重はチェックしたほうがよさそうですね。有力馬ではダイワメジャー産駒のカレンブラックヒルはどうですか? 目下、3連勝中です。
今 ダイワメジャーはS系で戦う意欲は強いし、相手の強さは関係ないから相手が強化されたからといって評価を下げる必要もない。ただ、心身が硬くなりやすい、つまり疲れが出やすい。
編 疲れが出やすいのに、前哨戦で勝ってしまったというのは…。
今 気掛かりだよね。
編 疲れはどこで見ればいいですか?
今 シンボリクリスエスにある意味近いパワータイプだから、これ以上馬体減りしていたら疲れが溜まっているということで注意したほうがいいだろう。
編 理想条件は?
今 疲れの影響が出る場合があるから、内枠のハイペースは心配。理想は、湿った馬場の平均ペース、流れが緩いならばペースは速くないけど上がりがかかる流れ。もしくは逆で、前残りの超高速ハイペースならバラけて揉まれる不安も少ないでしょう。
編 カレンブラックヒルと同じNZT組で2着だった、セイクレットレーヴは?
今 アドマイヤムーンもダイワメジャーと同様、少し疲れやすいというか、心身が硬くなりやすいからTRで2着がどうかというところだよね。だから、この馬も馬体減りには注意したほうがいいぞ。
編 この馬は枠の理想などありますか?
今 体力的なストックが心配だから、それを補うには内目の枠がいいだろう。
編 揉まれても大丈夫なタイプですか?
今 精神的にはあまり気にならないよ。だから、内枠でそれほど速くない流れ、摩擦のない流れになって好位チョイ差しみたいなセコい騎乗を、ジョッキーにやってもらえばベターじゃないかな。
編 横山典ジョッキーの巧みな騎乗に期待ですね。
今 自力で勝ちにいく競馬は、今回は疲れが出てしまうだろうから。
編 このレースも穴で面白い馬はいないですか? 今井さんは競馬王で前日予想をやってもらっていたときに、毎年的中していたんですから。
今 今はローテーションが多様化したからね。僕の理論は前哨戦で結果を出すと疲れが溜まるというもので、同路線ストレスを考慮して別路線の人気薄を狙っていたんだけど、7、8年前から陣営もやっとそれがわかってきたからローテーションも変わってきて馬券的に面白味が薄れてはきてるかな。
編 たしかに、前走は多様化していますね。
今 500万条件のマイル戦を勝ち上がった馬とか、そういう鮮度馬がいれば良いんだけど。そうじゃないと位置取りショックとかで決まるかもしれないよ。
【お知らせ】
次回5/2(水)の更新は通常連載に戻ります。「大穴血統講座2012春」第二回は5/23(水)日本ダービーと安田記念展望、第三回は6/20(水)宝塚記念展望をお届けします。
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