春の天皇賞3200mは、馬にとってマラソンと言っていいほどの距離。また、京都外回りコースには3コーナーから4コーナーにかけて名物の坂があります。そのため、折り合いが重視される難レース。この一戦に、今年は17頭がエントリーしました。
そのなかで、やはり話題の中心はオルフェーヴルでしょう。前走の阪神大賞典で逸走し、勝利を逃した汚名を返上したいところです。
4月11日の調教再審査が行われましたが、その前夜、池添騎手は眠れないほど緊張していたそうです。当日はコースの3、4コーナーを無事に回って一発合格。池添騎手は「汗びっしょりでしたよ。ホッとしました」と笑顔を見せました。
さて、水曜の追い切りは坂路でバーディバーディを1馬身ほど後方から控える形で追走し、終いを伸ばしてクビ差先着。52.4-38.5-12.2秒をマークしました。
「前走は気合いが入りすぎてハミを噛むところがありましたが、今回は1回使ったことで気負いが抜け、我慢して走れるようになりました。それに精神面が大人になり、力も付きましたね。いい動きでした」(池添騎手)
調教再審査に向け、普段の調教からコミュニケーションを取ったり、メンコを着用してみたりと工夫を重ねてきました。その成果が「我慢できる走り」に繋がっているのではないでしょうか。速さだけでなく、落ち着きという新たな武器も手に入れたオルフェーヴル。これは、手強そうです。
そうそう、同厩舎のトーセンジョーダンも出走予定。こちらは秋につづいて春の盾制覇も目指しています。
水曜は岩田騎手を背にCWに入り、ティアモブリーオを5馬身追走。直線で気合いを付けると並ぶ間もなくラスト1F12.7秒でフィニッシュしました。池江先生は「岩田騎手が闘魂を注入してくれましたよ。気合いが乗ってきました」と嬉しそう。
また「3200mのレースは初めてですが、この馬はスタミナがあります。また、折り合いもつくし、長くいい脚が使える…とレースに注文のつかない馬です。どこからでも競馬ができるので、この馬らしいレースをしてくれればと思っています」とも話してくれました。
調教上がりで運動をしていたトーセンジョーダンを見ましたが、筋肉が締まって脚さばきが軽く、いい歩様をしていました。秋の盾覇者として、オルフェーヴルとどんなレースをするかが楽しみです。
![マッサージ中のウインバリアシオン](https://cdn.netkeiba.com/img.news/style/netkeiba.ja/data/tsuneishi/120426_01.jpg)
マッサージ中のウインバリアシオン
この2頭の前に立ちはだかるのはウインバリアシオン。これまで天皇賞・春を6度も制した武豊騎手を背に臨みます。水曜はCWでモータウンサウンドを後方から追走。直線で並びかけ、鞍上の合図があるとアッという間に相手を突き放しました。
跨ったユタカさんは「馬が仕上がっているから、先生は僕が乗っての様子を見たかったようですね。いい動きでしたよ」と笑顔。また「この馬に乗るのは、このレースで2度目。前走の日経賞は特殊な馬場状態のなか、ルーラーシップを相手にしっかり最後まで走ってくれたのは大きかった。能力はありますから、そろそろGIタイトルを獲らせて上げたいです」とコメントしてくれました。
ウインバリアシオンの現在の馬体は、腰からお尻にかけての筋肉が張り裂けそうなぐらい引き締まっており、お尻がツンと高く上がっています。調教後は担当の竹邑厩務員がお尻に電気マッサージをするなど、ケアも万全です。
ちなみに、この電気マッサージ「ツネちゃんもやってみる?」と言われて僕も挑戦してみましたが、声がブルブル震えるぐらいの振動がありました。でも、バリアシオンはお構いなしにモクモクと飼い葉を平らげていましたよ。かなりマイペースな性格ですね。
竹邑さんは「冬場より、今の方がいい動きをしているよ。前走より仕上がっている感じがするね」とニコニコ。ちなみにユタカさん、先週の落馬で負った打ち身も回復したとのことですから、これは侮れない1頭になりそうですね。
![男・藤田伸二騎手とヒルノダムール](https://cdn.netkeiba.com/img.news/style/netkeiba.ja/data/tsuneishi/120426_02.jpg)
男・藤田騎手とヒルノダムール
また連覇を狙って出走するヒルノダムール。昨年は国内だけでなく、海外でもフォワ賞で2着するなど活躍しました。その頼りになる鞍上、男・藤田伸二騎手がダムールのことを話してくれました。
「現状打破に向けて、2週間前からシャドーロールをつけているが、リラックスして走っているし、操作もしやすくなったよ。長距離は能力だけでは通用しない、折り合いが大事なレース。それに、京都はコーナーが大きいから、コース取りも重要になってくる。外を回し過ぎると、ふくれて鋭角に回ることになるからね。この馬は、GIをもう1つ2つ獲ってもいいぐらいの能力を持っているから、これまでの経験を活かして連覇を狙いたいね」(藤田騎手)
打倒オルフェーヴルに向けて、チーム・ダムールがどんな戦いを挑むのか注目です。また、藤田騎手は、「ウイナーズサークルで手を振るからな」と言ってくれました。楽しみです!
さてさて、今週の僕の気になる1頭はギュスターヴクライ。前走の阪神大賞典では、オルフェーヴルを相手に大金星を挙げました。
厩舎に行くと担当の佐藤助手が「ちょっと見てや!」と声をかけてくれました。馬房でくつろぐクライは、腹回りから胸、そして首回りまできれいに銭紋が浮き上がっていました。これは、絶好調の証。しかし、首回りにまで出ているのを、初めて見ました。佐藤さんも「ビックリしとんねん」とのこと。絶好調ではなく、絶絶絶好調なんですよね。
荒川先生は「もともと能力があるのに、腰に緩さが出たりしていました。でも、ここにきて、(馬体が)しっかりしてきましたね。ひと皮剥けた感じがします」と、デキに自信ありのコメント。調教もパワフルでしたし、ここは一発ありそうな気配。淀のゴールを先頭で切ってくれるといいですね。