東京プリンセス賞(5月10日 大井 サラ3歳牝馬 定量54キロ 南関東SI 1800m)
南関東牝馬クラシック第二冠目東京プリンセス賞。牡馬路線同様、近年レース体系が整備され、平成15年からは施行順も含め、現在の桜花賞=浦和千六→プリンセス賞=大井千八→関東オークス=川崎二千百と完全に固まった。ただ、すべて大井コースを舞台とする牡馬に対し、こちらは3競馬場を巡る形の戦いになり、そのぶん二冠、三冠の難しさ(同時に波乱度)は、ワンランク上という印象もある。
中でただ1頭、見事な三冠を達成したのが18年チャームアスリープ。繰り返し書くことだが、その春彼女がみせた末脚と勝負根性は鬼気迫るものがあった。そして二冠目プリンセス賞は水しぶきがあがる不良馬場、三冠中、最も苦労したレースかもしれない。道悪巧者の伏兵・ヨシノアルテミスがインからスルスルと抜け出し、それを最後の最後、力まかせにねじ伏せたところがゴールだった。南関東生え抜きに限れば、ロジータに準ずる名牝。そう改めてふり返る。
個人的な余談を少しだけ。チャームアスリープは5歳秋に引退し繁殖入り。記者はその初年度産駒(父キングヘイロー)を一口馬主で持っている。ローレルアウェイクという男馬。競馬友だちに、「スリープ好きだったよね?」などと謎をかけられ、何やら発作的に「ローレルクラブ」に入ってしまった。たいした投資ではないけれど(純粋一口)、忘れているわけではもちろんない。すでに3歳夏。仕上げの難しいタイプなのか、はたまた大器晩成(?)か。首を長くして、しかしあまり期待せず静かにデビューを待っている。
(1)…波乱含み。1番人気[3-0-1-6]、2番人気[2-4-0-4]、3番人気[2-0-1-7]。強いていえば2番人気だが、総じて信頼度は高くない。1→2
気のワンツーは、過去10年1度だけ。
(2)…川崎勢。川崎=5勝、2着3回、3着4回。船橋=5勝、2着2回、3着3回もほぼ互角だが、他重賞と比較して川崎勢の活躍が目立つ。大井=0勝、2着5回、3着3回。13年ナミ以降優勝馬が出ていない。
(3)…道営出身。道営からの移籍組が5勝、2着7と近年優秀。昨年もマニエリスム→オーゴヒリツのワンツーだった。桜花賞優勝馬=不8、8、3、1、11、7、1、2着、同2
着馬=1、2、11、5、10、1、6、2不。半信半疑か。
(4)…逃げ=3、先行=5、差し=9、追込み=3。好走パターンはさまざまだが、道悪なら先行有利、良馬場なら差し有利がひとつセオリー。行った馬同士、時計勝負の際はおおむね内枠が馬券に絡む。
※データ推奨馬
◎コテキタイ…道営出身の川崎所属馬。迷いのない逃げで桜花賞を圧勝(3.1/2馬身差)した。内田勝義厩舎はこのレース、15年サルサクイーンで優勝。張田Jは11年ディアヴィクティー、22年トーセンウィッチとのコンビで2勝している。
☆ ☆
◎エンジェルツイート 森
○アスカリーブル 今野
▲コウヨウタレイア 戸崎
△リカチャンス 本橋
△グレコ 坂井
△コテキタイ 張田
△グラッツェーラ 真島
レイモニ 杉村
ショコラヴェリーヌ 吉田稔
エンジェルツイートの巻き返しに期待する。前走桜花賞はよもやの出遅れ。久々(3か月半ぶり)、浦和初コースもやはり厳しく、結果不完全燃焼のままレースが終わった(3着)。それでも道中ひるまず追い上げたあたりが、同馬のスピード能力と闘争心。昨秋、平和賞、2歳優駿牝馬、2重賞を制した芯の強さは十分示したといえるだろう。今回スムーズな右回り大井コース、青写真通り順調なステップ。課題とされる距離千八も、半兄オオエライジン(昨夏・大井黒潮盃勝ち)をイメージすれば大きな減点は浮かばない。エミーズパラダイス、ゴールドキャヴィアの羽田盃挑戦でライバル分散。逃げるコテキタイを目標に強気の捲りだ。
アスカリーブルが相手本線。転入当初こそ実績(兵庫4戦4勝)ほど動けなかったが、前々走ユングフラウ賞を勝って真価発揮。続く牡馬相手の京浜盃も、牝馬最先着(4着)と地力をみせた。ブラックタキシード×ホワイトマズル。一見華奢な馬体でも、エンジンかかっていい脚を長く使う。新星はコウヨウタレイア。デビューから3戦3勝。馬格(520キロ台)、走法ともパワーにあふれ、ことスケールというなら、この相手でも互角以上の感がある。前走千四1分25秒8。スピード自体は通用する計算で、あとは初千八をどう折り合うか。SS系の中でも地方向き、中〜長距離タイプが目立つエイシンサンディ産駒。エース・戸崎Jがこだわって乗る。
桜花賞馬コテキタイは、今回当時(1番)と一転、大外枠(16頭・15番)を引いてしまった。再び徹底先行の構えだが、ハナに立つまでかなりのロスは避けられない。大井千八適性も、血統(父サウスヴィグラス)、気性(一本調子)からは正直疑問だ。それなら、自在型でしぶとく順調さにも強みがあるリカチャンス、遅いデビューながら破竹の4連勝(JRA交流含む)を果たしたグレコに食指が動く。とりわけ後者は成長力のありそうなハーツクライ産駒。差す競馬を強いられ、そこで逆に新境地を開く可能性も浮かぶ。