絡んだ糸はなかなか解けない。
先週もちょっと振り返ってみたが、天皇賞ではそういった競馬の怖さを改めて感じたので、詳しく見ながら、主に鮮度について考えておきたい。
オルフェーヴルについては、もう多くを語る必要は無いだろう。馬群に入って集中力を引き出すC系の大外枠で単勝1.3倍では、如何に偉大な馬だろうが、本命にまでは出来ない。
トーセンジョーダン、ウインバリアシオンは精神コントロールが難しく、乗り方が嵌まらないと勝ちきれない。
そうなれば穴を狙いたくなるのが人情だ。
だが、ここで私の思考回路も路頭に迷うこととなってしまった。
次位人気の4番人気ギュスターヴクライから見てみよう。
前回は本命にした馬だが、今回は3000m超の長距離重賞が連続3回目で、しかも2着、1着と好走中。3走前が準OPという鮮度はプラスだが、さすがに長距離鮮度が一時的に著しく低下している。
長距離は鮮度が極めて重賞だという話は、この連載の第一回、菊花賞のテーマから口を酸っぱくして言ってきたことだ。また、昨年の夏に展開した、短距離と長距離の生涯鮮度問題においても、詳しく書いてきたことである。
90年代以降、前走が阪神大賞典で2走前も3000m以上だった馬で、どちらかで3着以内に好走した馬は、僅か2頭しか本番は連対していない(勝ち馬は1頭のみ)。もちろん人気馬も多く、1番人気3頭が連を外している。
連対した2頭はともに4歳。少なくとも生涯鮮度が高くないと、この長距離直近ストレスはどうしようもなく補えないのだ。
しかも唯一の勝ち馬メジロマックイーンは、前走が中京で行われた阪神大賞典だった。つまり、小回りローカルだったので、3000m以上やトライアルの感触は薄く、また中央のだらけた長距離戦ではないぶん、活性化もされていた。
前走が格式高い阪神の阪神大賞典で、2走前も3000m以上で、どちらか1つでも好走した馬で勝ったのは、唯の1頭もいないというわけである。
「長距離に慣れているので走りやすい」なんていうのは、あり得ない話なのだ。少なくともキャリアの多い歴戦の古馬に「慣れ」なんて全く必要ない。必要なのは刺激、今を生きようとする意欲、あるいはリセットされた鮮度なのだ。
そうすると無難なのはヒルノダムールだ。
前走は激走とも言えないのでストレスは少なく、昨年の覇者で適性も申し分ない。
ただ、引っ掛かることがあった。
昨年は大阪杯だったのに、今年は阪神大賞典をステップに使ってきて中途半端に好走したことだ。つまり昨年より長距離戦度が、短期、長期ともに落ちる。
昨年は流れに嵌まっての接戦の1着だったので、鮮度の落ちた今年、果たして同じだけの成績、つまり1着があるかというと疑問だ。
また「問題が無い無難な馬」というのが、どうも引っ掛かる。
つまり、生命の躍動を欠いている。馬本人も、そしてそれを本命にしてしまう私自身も、共に生命のダイナミズムから一歩引いてしまっているのでは?という疑問が残るのだ。
これは理論と言うより、直感的な何か、生きていくために大切な部分でもある。
6番人気ローズキングダムはM的にではなく、物理的に無理だ。
この距離は長いので、体力ロス無く、内でセコく捌かなければいけないのに、外目の枠。
しかもM的には、GI経験が豊富で、トップクラスで常に勝ち負けしていた馬だ。生涯鮮度も低い。
では7番人気クレスコグランドはどうだ?
前走が約1年ぶりの4歳馬。
これは鮮度が豊富ではないかっ?!
しかし、ここで私は鮮度と慣れについて、敢えて逆説的なことを書かなければならない。
ところで、中畑監督も、さすがに開き直ったのか、多少若手を使い、また攻撃的な野球も少しするようになった。
昨年の尾花監督はどんどん守備的になり、ベテランを登用するようになって去っていたのだが、そのあまりの驚きに他のブログに投稿したのだった。それと全く同じ状況が、監督が替わっても行われることにまた驚いて、今年も同じことを書かざるを得なくなってしまった。どうにも、人が守りに入ると良いことがない。
野球の話ばかりもなんなので、今度は相場について書こうかと思っている(笑)。
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