何はともあれ、競馬にとって鮮度が大事であることは言うまでもない。
ただ、これまでも何度か書いてきたことだが、ある程度の経験はもちろん必要だ。生まれて始めてボーリングをする人が、同じような体型で月に1回はやっている人にいきないり勝てる確率は、かなり低いというのは説明するまでもない話だろう。私も嵌まって週に1回ペースで通ってた頃は200ぐらい出していたが、1年に1、2回程度の今は平気で100もいかなかったりする。やはり慣れは重要だ。
しかし素人のボーリングの例とサラブレットが決定的に違うのは、彼らは走るプロであり、そのための稽古を嫌になるほど毎日している連中だという点である。しかも新馬を除けば、プロとしての実戦経験もある。だから、大抵の場合は慣れより鮮度の方が上回ってしまうのだ。
以上から、慣れているのにストレスがない、鮮度のある馬が一番有利になる。
例えば天皇賞・春なら、何走か前、あるいは半年以上前に3000m以上を1回だけ走っている形が、サラブレットにとって理想的な慣れとストレスのバランスになる(ビートブラックは連続で走っていたと思う人も多いだろうが、同馬の問題に関しては後に詳しく解説する)。
これは3000m以上の場合であって、短距離ならそこまで経験の間隔が開く必要はない。距離が短ければ短いほど鮮度要求率は落ちるからだ(これについては以前の連載に詳細があるのでそちらを参考にして頂きたい)。
昨秋の連載を思い出してほしい。生涯鮮度の落ちる高齢馬が天皇賞・春で連対した珍しい直近の例として、マイネルキッツをあげた。10年に7歳で連対したのだが、このときは前年の天皇賞・春勝ち以来1年ぶりの3000m以上だったのだ。これだけ長距離適性が高ければ3000m以上を使いたくなるところをグッと我慢して使わなかったために、なんとか生涯長距離鮮度の低下を、直近長距離鮮度の高さで補えたのである。
あるいは前述したヒルノダムールも、昨年は菊花賞惨敗以来半年ぶりの3000mだったことで勝ったのだが、今年は前走で3000mを走ってまずまず好走して長距離ストレスを受けたために11着に惨敗したのである。
もちろん生涯のトップクラス蓄積ストレスの少ない馬(必然的に若い馬になりやすい)なら3000mとの間隔を詰めることは許されるのだが、まだ5歳で体調も問題なく長距離適性も高いヒルノダムールでも惨敗したように、極力避けるにこしたことはない。
で、話をクレスコグランドに戻そう。
ある程度の経験がベターとされるわけだが、同馬の場合、まだ2500m以上を一度も経験していない。また古馬との混合重賞も、距離を問わず一度もない。あるいは、3歳限定戦を春までしか経験していない。夏を境に3歳限定戦でもタイトさが強調されるのだが、それを経験していないのだ。
だが実際のところ、こういった程度の経験不足は、鮮度による生命力の充実で、一気に覆すことは可能だし、これまでたびたび私たちもそういうシーンを目撃してきたのである。
ところがこの馬の場合は、残念ながらその可能性はそれほど高くはなかった。同馬には鮮度と経験に関する、もう1つ大きな問題が横たわっていたのである。
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次回5/23(水)の更新は、春のGI特別企画「大穴血統講座2012春」第2回「日本ダービー&安田記念展望」をお届けします。
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