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[春のGI特別企画]日本ダービー、安田記念展望

  • 2012年05月23日(水) 18時00分
 春GI特別企画!昨秋、好評だった今井雅宏氏本人による「GI回顧&展望」をこの春も3回限定で特別公開!「大穴血統講座2012春」第ニ回は日本ダービー&安田記念を天才が斬る!!

担当編集(以下、編) 大好評のGI特別企画!今回はダービーと安田記念です。その前に、例によって前回の復習からやりましょう。天皇賞春はオルフェーヴルが11着に終わりました。今井さんには前回、天皇賞春の展望でオルフェーヴルの理想条件として「内〜中目の枠で速めの流れなら戦う意欲が出やすい」と教えてもらっていたので、大外枠は不利だなと思いました。やっぱり枠は重要なんですね。

今井(以下、今) そうだね。天皇賞についてはこの連載で回顧しているから、それを読んでもらえばいいんじゃないかな。

 鮮度を中心に書かれている「生涯鮮度と直近鮮度」ですね。阪神大賞典の結果を見てどころか、デビュー前からオルフェーヴルの外枠がよくないことは分かってることだという話でしたよね(笑)。それから、NHKマイルCではアルフレードについて「鮮度が消えたぶん過剰に揉まれると投げ出す」ということで、内枠ではないほうがいいと聞きました。実際に17番枠で連対しました。朝日杯のときは内枠でも良いという話でしたから。

 アルフレードは、朝日杯を走ったぶんGI鮮度が落ちていたからね。今回は外枠で揉まれなかったのが良かった。それから、時計が速くてもペースが上がらない淡々とした流れで、単調な競馬だったのが向いたよ。勝ったカレンブラックヒルともども、こういう単調で揉まれないスピード競馬でないと危なかったからね。見た目は完勝でも、流れが向いただけでほとんど他馬との差はなかった。今後、彼らが古馬になってからのマイル路線は、王者不在でかなりの混戦になるだろうから楽しみだよ。

◆日本ダービー展望
 今回はダービーと安田記念について伺っていきます。まずは皐月賞を振り返っていただきたいのですが。勝ったゴールドシップはオルフェーヴルと同じ、相手が強くなるほど力を発揮するC系のステイゴールド産駒ですね。

 タイプに合った乗り方で完勝だった。

 内を突いた内田騎手の好騎乗が評価されていますが、馬のタイプともマッチしていたわけですね。今回はどうでしょう。相手強化にはなりますよね。

 集中しているときは相手が弱くなったほうが危ないよ。枠は内枠、ペースは少し速めがいい。今回は、前走が速かったから遅くなると気持ちだけが先走って引っかかる可能性がある。共同通信杯はスローでも掛からなかったけど、それは休み明けで疲れがなかったからだ。今回はそれよりも多少疲れはあるから、入れ込みにも注意したいところだよ。

 ステイゴールド産駒では他にフェノーメノが青葉賞を勝っての出走です。青葉賞勝ち馬のダービー制覇はないんですよね。

 本質的には2頭ともC系で同じなんだけど、ゴールドシップは母父メジロマックイーンで、フェノーメノは母父デインヒルでしょ。前にこの配合の話はしたと思うけど、母父マックイーンは集中力が際立っているのに対して、母父デインヒルは量とか体力、パワーを供給するから、ゴールドシップよりもまとまっていてそれほど狂気みたいなものはないんだ。安定しているぶん、ステイゴールド特有の強い相手により強いという部分が少し薄れる。それから、ちょっと硬くなりやすい。逆に弱い相手とか単調なレースでの安定感はゴールドシップよりもフェノーメノのほうが少し分がある。だから単調な青葉賞は完勝だった。ゴールドシップが青葉賞に出ていたら、弱い相手の緩い流れでは、取りこぼした可能性があるからね。

 同じステイゴールド産駒でも少し違うんですね。

 フェノーメノは、弥生賞のタフな流れのあとに、延長の緩い流れの青葉賞で圧勝するのは、一般的なステイゴールド産駒にはないパターンだから。

 ダービーに向いているのは、どちらなんでしょう。

 流れによるでしょう。タフな激しい流れになればゴールドシップ、淡々とした単調な流れになればフェノーメノのほうが向いているよ。ただ、フェノーメノのほうが疲れやすいし、前哨戦のGIIを走るというのは疲れることだから、馬体重の大幅減には注意したほうがいい。

 皐月賞は、1番人気のグランデッツァが5着でした。

 アグネスタキオンは、いつも話してるとおり、揉まれたくなくて使い込むと良くない。だから間隔が詰まっていたうえに、休み明けのスプリングS激走後だから、反動で硬くなりやすいタキオンには好走しづらい条件だったんで仕方ない。それに、混戦の激しいレースは苦手だから、厳しい流れのタフな競馬になったことも合わなかった。

 となると、タキオンに向いているのはどんなレースになりますか?

 淡々とした流れで疲れていないとき、そういう部分でいえば皐月賞よりもダービーの流れのほうが向いているかもね。

 単調な競馬ということは、シンボリクリスエスと似ていますね。では、今回は皐月賞よりも期待できますね。

 レース間隔も皐月賞よりは開いているし、負けたぶん疲れもないし、広いコースということでは、条件は好転しているけど。

 スプリングSの好走要因は?

 休み明けで揉まれない大外枠、そして淡々とした流れのスローペースだったから、好きな条件が揃っていた。

 あ! 『大穴血統辞典』では、アグネスタキオンの疲労耐久指数が「43」でした。すっかり見逃していました…。こうやって聞いていると、今回はチャンスがありそうな気がしてきました。

 ただ、タキオンにはタイプが2種類あるんだ。ひとつは硬くなりやすいタイプで、1回凡走すれば体力が回復する、叩き3走目で好走するパターン。つまり、休み明けで走って2戦目に凡走して、また3戦目で走るような馬。

 いわゆる、○×タイプですね。もう1種類は?

 疲労が蓄積するタイプで、これは尻すぼみになっていく。つまり、1、2戦目が良くて3、4戦目で落ちるというパターン。たとえばリディルとか、タキオンはこのタイプが多い。

 グランデッツァは硬くなりやすいタイプなのかな。

 心身が硬直しやすくて若いときのほうがいいから、NHKマイルCのアルフレードと同じようなことが言えるね。どちらかいうと後者だから、人気が先行しやすい。

 今回の理想条件はどうなりますか?

 能力自体は高いからタフで競りこまれたりせず、何の問題もないスムーズな競馬がいいだろう。平均やや遅めのペースで淡々と単調な流れになれば。嫌なことがあっても頑張り通すようなタイプじゃないから、ハードなレースになると厳しいね。

 枠の希望はありますか?

 スローなら内枠のほうが物理的に有利にはなるけど、6枠くらいがいいんじゃないかな。少し疲れもあるからずっと距離ロスがある大外すぎるのも自慢の体力が切れやすいし、内で激しく揉まれるのも良くないだろう。

 ダービーはディープインパクト産駒が複数出走してきますが、ディープインパクトはどんなタイプですか?

 普通の話になるけど、緩めの流れを外が伸びるような競馬が基本的には向いている。産駒によって少しタイプは変わってくるけどね。

 ゴールドシップの逆転候補として挙げられているワールドエースですが。皐月賞では大外を回ったぶん、勝ち馬との差が開いたといわれています。東京が合うのでは?

 そう乗るしかなかったとも言えるし、あの日は外が伸びたからね。この馬がゴールドシップみたいに荒れた中山の内突いてたら2着も無かったさ。タイプ的に東京が合うのはたしかだ。上がり勝負で外差し競馬、中〜外が伸びる馬場なら向くから。前走より不利な点としては、前走のローテーションが抜群に良かったということ。前走は弥生賞とかの厳しいレースではなく若葉Sという裏路線からのステップだったでしょ。皐月賞まで5戦しかしてないし、トップクラスとの対戦がなく鮮度も高かった。今回は前走ほどの鮮度がないので、勝ち切るには、肉体的な不可が掛からない、きれいに外が伸びる馬場になって欲しいね。

 枠はどこでも大丈夫ですか?

 最内以外なら問題ないんじゃないかな。

 ディープインパクト産駒は、ステップをチェックすると良さそうですね。同じ皐月からのディープブリランテは、共同通信杯、スプリングSと惜敗続きで皐月賞も3着でした。

 皐月賞は外差し馬場だったから、競馬の内容として一番良かったのはこの馬だよ。あの馬場で先行馬が残るのは奇跡的だったから。ただ、精神コントロールが難しいからね。今回は延長になるから大変だ。前走よりもペースが上がって前が残るような流れになればいいけど、そうじゃなければ逃げるのが一番だよ。それか、雨が降って馬場が悪くなればそれに気を取られるから、走りに集中出来るけど。超高速馬場の速い流れで前残り競馬か、逆にスローを逃げる、または重馬場、こういった極端な条件になるといいよ。いずれにしろ、内目の枠がベターだ。

 ディープインパクトで面白そうな馬はいますか? NHKマイルCで失格になりましたが、マウントシャスタはどうでしょう。まだ4戦しか走っていないですね。
 ディープインパクトだけど、この馬はマイルからの大幅延長なので今回に関してだけは馬群に入っても大丈夫だから、内目の枠のほうがいいだろうね。中長距離を使われてきた他馬と違って、裏路線の鮮度はあるから、スタートを決めて好位につけられて流れが緩めで高速決着なら悪くないけど。

◆安田記念展望
 つづいて、安田記念もお聞きします。昨年の2着馬ストロングリターンが、骨折明けで京王杯に出走しての叩き2戦目です。

 シンボリクリスエスは何度もいうように、鮮度があって適性距離よりも短ければ強い相手に頑張れるタイプだから、前々走が準OPだった去年は前走が1400m勝ちでもローテーション的に良かったんで、予想でも評価できた。その後もまだ2戦しかしていないので、いまだに5走前がその準OPという部分では生涯鮮度はあるほうだ。とはいえ、去年より鮮度が落ちるぶん、昨年ほど期待値が高くないのもたしかだよ。

 理想の流れはありますか?

 得意の速い上がりの差し競馬になれば。

 京王杯SCで復活を遂げたサダムパテックはいかがですか? 『大穴血統辞典』では、フジキセキは「集中力と戦う意欲があって混戦に向き、強い相手にも気後れしない」とあります。

 集中力系ではあるけど精神コントロールが難しい馬だから、前走は短縮と乗り替わりの刺激が嵌まって走りに集中させることができた。前回の馬券圏内だった鳴尾記念(3着)も菊花賞からの大幅短縮だったでしょ。

 なるほど。となると、今回の延長は…。

 流れが緩んだら集中させるのが難しくなる。だから、内目の枠でペースが上がってくれたほうがいいだろう。本来フジキセキは1400mから1600mのステップでの内〜中枠をベストとしているんだよ。

 前走勝ち組では、今年に入ってマイルで好走しているガルボがいます。前走からは2か月開いていますが。

 でも、ダービー卿CTを勝ったストレスがあるから。中山から東京に替わって流れが緩くなるだろうから、スローで前に行く位置取りショックがかけられたら良いけどね。この馬はパターンがあるんだよ。昨年末の阪神Cは1400のハイペースで負けたけど、次走のニューイヤーSは中山でも延長で流れが少し緩んだから好走できた。そして次走の東京新聞杯は、ニューイヤーSと同距離で先行だけど、さらに東京なので流れが緩くなってスムーズに先行できたから相手強化でも着順を上げることができた(1着)。そして、次走の阪急杯は内回り1400のハイペースで揉まれてアウト。前走は延長でスムーズな競馬ができたから勝てた。だいたい、同じパターンで好凡走している。

 『大穴血統辞典』でも再三、マンハッタンカフェはとにかく揉まれるとダメということと、生涯鮮度が重要だと書かれてましたもんね。

 フレッシュなときと、特殊馬場なら揉まれてもいいんだけどね。

 今回は枠次第ですか?

 枠はスローならばどこでもいい。枠よりもペースのほうが大事だよ。あとは疲れているだろうから、これ以上の馬体減りは避けたい。今回は被されたりしたら投げ出す可能性が高いよ。

 アパパネはこのところ結果が出ていません。ヴィクトリアマイルも1番人気に支持されましたが、5着でした。

 僕もヴィクトリアマイルは評価しなかったよ。アパパネは硬くなりやすいんだけど、そこへ無理やり馬体重を絞ったりしたから、心身ともに硬くなっている恐れがあったんだ。

 その通りの結果といえますかね。今回はどうでしょう?

 去年と違うところは、ヴィクトリアマイルを勝っていないぶん、疲れはない。ただ、ヴィクトリアマイルの凡走で心身疲労が取れたかというと、まだ取れきっていない気もするから。今は超高速馬場の速めの流れとか、一本調子の競馬がいいだろうね。それでやや外目をスムーズに走れたら。

 まずは、疲労チェックで馬体重は見たほうがよさそうですね。復活といえば、武豊ジョッキーとのコンビが昨春以来のローズキングダムは?

 短縮の恩恵が出てくる、ハイペースの差し競馬がベスト。ただ、前走で前へ行っていればよかったんだけど、最後方だと差しのショック効果がいまいちだから、嵌らないとね。

 枠の注文はありますか?

 速い流れの追い込み競馬ならどこでもいいよ。今の状態なら馬群は割れるはずだから。

 登録段階では香港から2頭参戦予定ですが、チャンピオンズマイル2・3着馬なので注目されそうです。

 外国馬は初出走のほうが基本は有利。短距離は生命力がそれほどは必要でないからJCほどではないけど、来日2度目とか2戦目とかだとイヤになってくる。昨秋のラッキーナインはセントウルSを使ったからスプリンターズSでは飽きてしまった。直行だったらスプリンターズSは恐らく連対してたでしょう。

 つまり、ラッキーナインよりグロリアスデイズのほうが面白い存在なんですね。

 ラッキーナインも短距離しか使っていない、日本のマイルを走ったわけではないからそんなに悪くないし、人気もこっちの方が無いんでしょう?鮮度面では香港勢のほうが今年は有利だ。理想は内枠じゃないけど、騎手が最後に内に突っ込む競馬で、内が伸びる馬場のとき。このかたちは鮮度があって生命力旺盛な状態の外国馬なら、興奮して、激走率が倍になる理想型なんだ。最初は日本特有の流れの外側にいて一息入れて、最後に一気に流れの中に入っていく競馬ね。今回に限らず、今後もこのかたちは何度も激走するはずだから、覚えておいて損は無いよ。

 ただ外国馬って状態が読みにくいでしょ?安田記念で外国馬同士の万馬券とか、過去に当てていて外国馬の取捨に定評がある今井さん、何かポイントありますか?

 調教の過程でやる気のなさそうなのは結構雰囲気で分かるけど、騙されることもよくあるから(笑)。走らない外国馬って、パドック見た瞬間に、こんな硬くてごっついの日本では無理でしょう〜、みたいなのが多いよ。サイズの感覚が普通じゃ無いから、誰が見ても変な違和感があるやつが結構多い。そういうのを感じたら、止めておこうね。それと外国での競走過程も国内ほどではないけど鮮度に影響を与えるから、チェックしておきたい。それについては以前に連載で詳しく書いてるから、そっちを参考にして下さいね。確かマイルCSで穴を当てたときの解説でしてたと思うよ。

【お知らせ】
次回5/30(水)の更新は通常連載に戻ります。「大穴血統講座2012春」第三回は6/20(水)宝塚記念展望をお届けします。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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