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区切りの安田記念

  • 2012年06月02日(土) 12時00分
 ダービーが終わったことによって、気持ちに区切りがつくホースマンやファンは多い。特に今年は「ダービー馬はダービー馬から」じゃなく、なんだっけ……と「ダービー」と「新馬戦」でキーワード検索して判明。なるほど、「ダービーからダービーへ」か。このキャッチのもと、ダービーの翌週、つまり今週から新馬戦が行われるようになったので、余計に区切りがつきやすくなった。

 しかし、ここ数年の私の区切りは、もう1週後ろにズレたままだ。

「またかよ」と言われるかもしれないが、贔屓のスマイルジャックが4歳時の2009年に出走するようになってからずっと、安田記念が私にとって「春シーズンの締めくくり」として区切りになっているのである。

 スマイルは、今年で4年連続安田記念に出走することになる。先日、天皇賞・春に7年連続で出走するという大記録(阪神大賞典でも同記録)をつくったトウカイトリック同様、立派である。フルゲートにならないことの多い春天と違い、安田記念は2000年からずっとフルゲートになりつづけている「狭き門」だ。しかもスマイルは、09年こそ前の馬の脚に躓いて9着に終わったが、10年と11年はともに3着と健闘している(トリックも07年の春天で3着になっている)。部分的には、大記録をつくった「トウカイトリック先輩」に負けない実績を残している、と言っていい。

 今も私は、スマイルに、8歳でGI初制覇を達成した「カンパニーさん」の背中を追いかけてほしいと思っている。実際に何度か叩き合いをした仲だけに、目標としてふさわしいのではないか、と。

 と同時に、同い年で、イケメン度もかなり近く、これも何度かやり合った「ファリダット君」をちょっと羨ましくも思う。先々週のダート路線転向3戦目となった栗東Sで前をブッコ抜き、砂路線での新たな可能性を広く知らしめたからである。

 スマイルにもダート適性がないわけではない。ただ、絶好調だった昨春と違い、立て直しながら仕上げていた時期に臨んだ初のダート戦が、相手がメチャメチャ強いフェブラリーSだったから結果を出せなかっただけだ。ダートの走り自体は悪くない、というのは管理する小桧山悟調教師も認めるところだ。

 私はローテーションを決定できる立場にないので、あくまで「希望」というか「夢」として勝手なことを記すわけだが、頂点を目指す舞台を「芝のマイル戦」に限定すると、使えるレースが本当に限られてしまう。なので、もう何度かダートでの可能性をテストさせてやってほしい。ダートならば適距離の幅がもっとひろがるだろうし、ひょっとしたら、アグネスデジタルやクロフネのように、芝とダートの「両刀遣い」としての高い能力もあるかもしれない。

 今年の安田記念で、スマイルは3枠6番という絶好枠を引いた。昨秋、一頓挫あってからは大きく負けるレースがつづいているが、ただ馬場を回ってくるだけの馬ではない、というところを見せてほしい。

 個人的な見どころはスマイルの走りに尽きるのだが、強いメンバーが揃った今年は熱戦が期待される。

 オークス、ダービーにつづき、「ディープインパクト旋風」がターフに吹きつけるのか。昨年の覇者リアルインパクト、ヴィクトリアマイルで2、3着になったドナウブルーとマルセリーナのどれが勝ってもおかしくない。特に桜花賞馬マルセリーナは明らかに復調しており、08、09年に連覇したウオッカ以来となる牝馬の優勝シーンが見られるかもしれない。

 牝馬ということでは女王アパパネの走りにも注目したい。

 また、06年のブリッシュラック以来、しばらく勝ち星から遠ざかっている香港勢の復権も、今年は考えられる。南半球産で遅生まれのグロリアスデイズはまさに伸び盛りだし、日本でのレースが3戦目となるラッキーナインの安定したレースぶりも魅力だ。

 また、09年の朝日杯フューチュリティSを勝って以来のマイル戦となるローズキングダムが、ほぼ1年ぶりに武豊騎手を背に迎えてどんな走りをするか、ということにも興味がある。

 昨年の2着馬ストロングリターン、昨年のマイルCSの覇者エイシンアポロン、気難しいがハマればすぐにでもGIを勝ちそうなペルーサ、名手ウィリアムズを背に復活したサダムパテックなど、メンバーを眺めれば眺めるほど迷ってしまう。

 それはいいのだが、私はここに何頭の名を挙げただろうか。スマイルジャック、リアルインパクト、ドナウブルー、マルセリーナ、アパパネ、グロリアスデイズ、ラッキーナイン、ローズキングダム、ストロングリターン、エイシンアポロン、ペルーサ、サダムパテックと12頭か。残りの6頭は、内枠からダノンヨーヨー、ガルボ、グランプリボス、コスモセンサー、フィフスペトル、シルポートということになる。

 関東馬は7頭か。もっと少ないときは「関東馬ボックス」を買うこともあるのだが、今回はやめておこう。

 いつも無条件で買うスマイルの「がんばれ馬券」以外の買い目は、これからじっくり考えたい。

 いや、でも本命ぐらいは書いておかないと、誰も「このコラムに注目する」をクリックしてくれないような気がするので、挙げておこう。ラッキーナインとマルセリーナ。2頭のうちどちらかを◎、どちらかを▲にするつもりでいる。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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