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ダービー、人気馬2頭が敗れた必然

  • 2012年06月06日(水) 18時00分
 今週も、引き続き昨日のダービーについて見ていこうと思う。

 1番人気のワールドエース前走皐月賞では、外差し馬場の流れに乗って2着した。前走は出遅れた上に前半不利もあり、外を追い込んでの2着は強い内容。最内を突いたゴールドシップとは距離ロスの差というのが、一般的な見方だった。

 しかし、私の見解は違った。レースが終わった週に発表している『予想着順』(現在は会報等の回顧で見られるようになっている)では、「差し馬場の流れに乗って何とか2着。疲れがあったので仕方ないか」と書いた。

 つまり、「流れに乗って何とか2着」が正解だったのだ。

「出遅れて好走した強い内容。次回は」という話を耳にすることがよくあるだろう。もちろんそういうこともあるのだが、ほとんどの場合、むしろ逆のケースが多い。これはMを発表した20年近く前、その初期の作品に再三書いてきたことである。

 出遅れるというのは、流れの外に出るということだ。この場合、精神的な負荷は、馬群に入らないのだから、かなり低減される。大出遅れでもない限り、出遅れた馬が揉まれ弱いタイプ(L系)、または外差し馬場、追い込み馬なら、むしろプラスに左右される確率の方が高いのだ。

 ワールドエースの場合は、もともと追い込みに近い差し馬で、しかも当日ははっきりとした、というか異常なほどの外追い込みバイアスが発生していたのだ。そういう状況なら、スタート直後にスムーズさを欠いて後方に下がり、外から追い込む形になったのは、精神的にも物理的にもかなりのプラス支援になったと考えるのが普通である。

 それで2着では、「流れに乗って何とか2着」以外に、なんの表現も思いつかない。

 ただ、今回は軽い超高速の馬場で、しかも広くてスムーズ。なんの負荷もなく外に出せる東京だった。前走以上に軽い差し馬の同馬は、気持ち的に走りやすくなる。他に外差し馬場向きの強い馬もいないで、東京にありがちな「速い上がりの差し競馬」になれば、相対的に有利になることは確かだったのだ。

 逆にマイナス要素は「鮮度低下」である。

 前走は裏路線からの出走で鮮度があったが、今回は皐月賞からなので鮮度が一枚落ちる。そのため、前回話した「勝ち切るには、負荷の掛からない外差し馬場にならないと」という見解に落ち着くわけである。鮮度が一枚落ちるために、心身負荷をなるたけ避けたいわけだ。

 ところが、前日の土曜は皐月賞のような極端な外差し馬場ではなく、フラットで、やや前よりが有利な馬場になっていた。ということで、ある程度負荷を自分自身に掛けないと勝ちきれない。条件は合うし、他の差し馬に条件の合う馬が少ないので崩れる要素はかなり少ないが、勝ち切るとなると疑問符が付く。

 それが前日の状況だったので、3番手評価が妥当と判断した。

 次に2番人気ゴールドシップだが、馬群に入ったほうが集中力が出やすい同馬には、有利な内目の枠に入った。あとは前回話したように、速い流れになるか、緩い流れになるかという問題に尽きる。

 速い流れなら他の差し馬には先着するだろうが、緩い流れなら同馬の集中力が活かしにくいし、キレ味で勝るディープインパクト産駒や、同じステイゴールド産駒で前回解説した量要素で勝るフェノーメノに勝つ可能性は少ない。

 ただ、仮にスローであっても今の内が伸びる馬場を騎手が見て内を突けば、外を回すであろう前述の差し馬2頭を出し抜く可能性が出てくる。

 ペースと乗り方、二重の防波堤があったので、ディープブリランテの相手、対抗評価とした。

 結果は、縦長の展開だったために同馬の後方位置ではスローの流れになり、また大外を回したので、二重の防波堤は二つともレース中にあえなく突破された。その必然として、前述の同じ差し馬2頭の後塵を拝し、差し馬では3番手入線となったのである。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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