アグネスタキオン産駒の復習になると思うので、ダービー4番人気グランデッツァについても、考えて見る。
このコラム開始以来、再三解説してきた揉まれ弱く疲れやすいアグネスタキオン産駒だ。前回書いたように、徐々に疲れが蓄積するタイプでもある。叩き2戦目より、3戦目の方がさらに悪くなるケースが多々あるのがアグネスタキオン産駒だった。
もちろん、今回のプラス材料もある。揉まれ弱く疲れやすいタイプに、レース間隔が開いたこと、広い東京コースに替わることは良い材料だ。
事前解説では「揉まれると良くないので内枠はまずいが、自慢の体力が切れてしまう可能性があるので外枠も良くない」と話した。2歳時の札幌2歳S、休み明けのラジオNIKKEI賞とスプリングS。この3つとも外枠で好走したのだが、まだ若かったし、休み明けだったりと、体力が有り余っていた。だから揉まれ弱いアグネスタキオン産駒には、絶好の外枠だったのだ。
しかし、今回は叩き3戦目。休み明けを1着して、一応GI皐月賞も5着に好走している。蓄積疲労しやすいアグネスタキオン産駒には、ここでの大外枠は揉まれないプラス要因以上に、自慢の体力が外を回ることで消費されるマイナス要因の方が大きくなる可能性が高くなる。
だから今回に関してだけは、得意の大外枠は逆にマイナス材料の心身状態となっていたのだ。なのに8枠17番。ということで予想では7番手に下げた。
では、フェノーメノはどうだったか?
この馬を分析することは、Mの血統理論の理解に繋がると思うので、早速見ていこう。
フェノーメノの父はステイゴールド。ステイゴールド産駒はMではC系と呼ばれる。L系のアグネスタキオン産駒とは真逆の性質を持っている。
馬群に入って強く、間隔が詰まると集中しやすく、強い相手に踏ん張れるというのが、その主な特徴だ。
反面、弱い相手に取りこぼしやすく、単調なレースには弱い。体力が伴わないケースが多く、集中力がキレると安定感を欠き、惨敗する場合が多いなども特徴だ。
ステイゴールド産駒のゴールドシップが最内を突いて皐月賞を勝ち、大外枠の天皇賞でオルフェーヴルが惨敗したのは、まさにその象徴と言えるだろう。
最近ステイゴールド産駒のGIでの活躍が目立つのは、以前はトニービン、サンデーサイレンスの一部、サッカーボーイなどと、いろいろいたC系種牡馬が、スピード競馬の弊害もあってほとんどいなくなった為、C的な質を求められるレースになった場合に、相対的に激走しやすくなったことが挙げられる。
で、話をフェノーメノに戻そう。
フェノーメノの母父はデインヒルだ。安定して量を供給しやすい種牡馬で、母父は基本的にこういうタイプの方がアベレージは上がりやすい(これはMの血統論として、以前から書いてきたことだが、最近は根本的な血統論を書く機会があまりなかったので、触れることも少なくなっていた)。
そのぶん、やや狂気が薄れる。母父としてはC系のメジロマックイーンを重ねたゴールドシップの配合のような、怖さ、危険性のようなものは、あまり感じない。
その為に、ここでの事前の解説では、緩い流れになったらフェノーメノ、厳しいペースになったらゴールドシップと話したのだった。
単調な流れになった場合、折り合いを欠くなどの精神的な破綻を来しにくいのはフェノーメノの方になる。
また、他の馬が走れないような凡戦になった場合に自動的に順位を上げる可能性が高いのも、安定した量を供給されているフェノーメノの方である。
そこで予想では、フェノーメノには「平均ペースになれば」と書いた。
では何故、スローになればゴールドシップに先着しやすいフェノーメノの解説が、「スローになれば」ではなかったのか?
もちろん、C系のしぶとさを活かすにはスローよりある程度締まった流れの方が良い。
また同じ差し馬でワールドエースとの比較では、同馬により鮮度がある。したがって、厳しいペースにある程度耐える確率は、今回に関してはワールドエースよりフェノーメノの方が上だ。また、スローの上がり勝負になった場合、キレ味で負ける可能性が高まることもある。
そこで、同じ差し馬のゴールドシップとワールドエース両方に対して同時に先着する可能性が一番高まるのが、「平均ペース」だったのだ。
レースは縦長で、前は比較的速い流れ、後ろは超スローとなった。
フェノーメノはやや前目の位置取りで、早めに仕掛けた。
これが良かった。スローの流れに入れなかったことで、自身にとって一番有利な平均的な流れに、自分自身の競馬を近づけたのだ。
だが、それでも後ろはスローの流れではあった。
本来の物理的な計算式では、ワールドエースの差し脚に交わされている流れだ。
この差し馬の中ではワールドエース向きの流れで、同じ差し馬のフェノーメノをワールドエースが捉えきれなかったことは、示唆に富んだ結末だった。
つづく
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