春GI特別企画!昨秋、好評だった今井雅宏氏本人による「GI回顧&展望」をこの春も3回限定で特別公開!「大穴血統講座2012春」最終回はグランプリ・宝塚記念を天才が斬る!!
担当編集(以下、編) 前回はダービー週にダービーと安田記念を展望してもらいましたが、そのダービーの万馬券を獲られたんですよね。
今井(以下、今) 詳しい理由は、先週までの3回で回顧しているから、それを読んでもらえばいいんじゃないかな。
編 やっぱり皐月賞は前に行った馬に厳しかったということでしたね。私は安田記念でコスモセンサーを本命にしました!
今 おおお!…ところで、どんな理由?僕は全く買って無かったけど(笑)。
編 キングカメハメハは『大穴血統辞典』では疲労耐久指数が「47」ですが、前走マイラーズC3着から間隔が開いていたので、疲れはそれほどないと思いました。この馬自身はマイルでの安定感もあるし、人気上位馬が早めに押し上げてくるだろうと見たので、それを凌げる先行力に期待しました。ただ、相手を間違えまして…。
今 今春のGIは極端なバイアスのレースが多かったよね。皐月賞の週は極端な外差しの馬場だったし、ダービーはやや前残り、安田記念は道悪のはずが乾いて高速良馬場になったから内枠以外は用なしの馬場になったでしょ。実際、先行した2ケタ馬番の馬2頭以外は、1ケタ馬番の9頭がそのまま上位を独占だからね。あんな極端なバイアスは普通お目にかかれない。天候変化があると、極端な馬場になりやすい点には注意したほうがいいよ。その馬場に合わない脚質や枠順の馬は、2クラス以上力差が無いと連対は絶対無理だから。GIでは普通、そんな力差は無いからさ。
編 そんな極端な馬場に宝塚もなるのか、まずはそこも注意したいですね。この特別企画も春は最後なので、私も万馬券を的中させたいですっ!
◆宝塚記念展望
編 まずは、オルフェーヴルはどうなのか?からお聞きしたいです。特別企画の第一回目は天皇賞でしたが、そのときのオルフェーヴルの理想条件として、「内-中目の枠で速めの流れなら戦う意欲が出やすい」と教えてもらったら、大外を引いてしまってスローで11着。昨年から、外枠はよくないとずっと教えて貰っていましたからね(笑)。
今 天皇賞は外枠もあったけど、阪神大賞典からの延長でペースが緩くなる流れだったから、余計に集中力が持続しなかったんだよね。
編 今回は短縮になりますが、どうでしょう。
今 短縮はペースが速くなるからいいけど、集中して走るタイプだから一度キレると危ない部分もある、安定して力を発揮するタイプではなく、気持ちで走るタイプだからね。
編 となると、キレてないかを見極めるポイントを知りたいです。
今 いつも言っているように、調教で規則的に時計を出してないと。1週前の追い切りがきちんとできているか、そして今週も速すぎず遅すぎずふつうに追い切れているか。
編 枠は今回も内がいいですか?
今 今までの解説通り内目のほうがいいだろうけど、今回に関してだけは内すぎるのもいまいちかな。オルフェーヴルはここ4戦で3000m以上を3戦している。長距離の使いすぎは今回の条件がどうあれ、精神的に良いことではないんだ。戦いを前に気持ちが緩んでしまっているかもしれないので、内すぎると流れに乗れない可能性も出る。かといって外枠も良くないから、真ん中-やや内目の枠が理想だろう。
編 今まではとは少し、枠の考え方が違うんですね。まずは、調教欄をチェックします。続いては、悲願の国内GIを狙っているルーラーシップですが。人気はオルフェーヴルを上回りそうな勢いがあります。香港帰りをどう見ればいいでしょうか。
今 以前にも言ったけど、キングカメハメハは若干、疲れやすいという欠点がある。
編 『大穴血統辞典』の疲労耐久指数は「47」ですね。
今 だから、このくらいの間隔を開けるのは疲れを取る意味ではちょうどいいよ。ただ、海外遠征帰りのぶん国内よりは疲れが溜まるから、間隔開けたプラスと、海外帰りの疲労と、どっちを取るかだね。
編 香港での勝ち負けは関係ありますか?
今 これだけ間隔が開けば、それはあまり関係ないだろう。それよりも、どれだけ疲れが残っているかのほうが大事だよ。
編 どんな流れが向きますか?
今 タフすぎない流れ、平均ペースくらいのほうが走りやすい。それで枠も内目すぎないこと。ルーラーシップはGIで勝てなかったのが不思議なくらい潜在能力はかなり高い馬だよ。それでも結果として勝てなかったのは疲れやすいからに尽きる。たとえば、去年の宝塚は不良馬場の金鯱賞を勝って中3週の出走だったから反動が出ての敗戦だし、有馬記念は4着だけど、宝塚以来の休み明けで万全で無かったので11番人気だった。それで4着激走だから、体調が万全で無くても、疲れてないことの方が重要だということを意味している。
前年(一昨年)の有馬記念の場合は休み明けの鳴尾記念を勝っての出走だったから反動が出て6着に終わった。さらに、最初のGI挑戦だったダービーは、プリンシパルS勝ちから中2週と間隔が詰まっていた。そのプリンシパルSが0.7秒差圧勝だったから人気になったんだけど、プリンシパルSのパフォーマンスが良かったぶんだけ、疲れが出て5着だったんだよね。プリンシパルSを出走せずダービーというのは賞金的に難しかったけど、もしそのステップが取れていたなら、ダービーは連対してたと思うよ。
編 たしかに、前走勝ちで間隔が詰まっているときは、見事に人気以下に凡走してますね。今回は前走勝ちだけど間隔が開いているから…。
今 2200mも過不足なくちょうど良いし、今までのGI挑戦よりは比較的チャンスがあると判断するのはふつうじゃないか。何れにせよ問題は疲れの一点に尽きる。M的にいうと量、パワーで押すタイプだから余計に、あまり馬体を減らしていないこと。それからレースの流れとしては、激しすぎるレースでの最内枠は疲れが出やすいので避けたい。平均やや遅めが疲れが出にくくて理想の流れだ。
編 ただ、今回は逃げ宣言をしているネコパンチや天皇賞を2番手から早め先頭で勝ったビートブラックがいるし、アーネストリーも先行して結果を残しているから今回は先行するかなと考えると、ペースは上がるんじゃないかという気がするんですが。
今 ただ、ネコパンチにしてもビートブラックにしても長距離を逃げただけで、2000m以下を先行出来るような馬はいないでしょ。ペースは流動的だね。
編 メンバー的には流れが向きそうですかね。
今 好位から一本調子で捲っていくのが一番合うタイプだから、外から追い上げていくのが良いだろう。それがハマるとなると平均ペース、あるいは逆にやや遅めを先行する形が理想かな。それが出来るのがウィリアムズだし。
編 人気でこの2頭に続きそうなのが、ウインバリアシオンです。今回は岩田騎手への乗り替わりが注目のひとつですね。
今 岩田なら、ある程度好位につける位置取りショックがあるかもしれないね〜。
編 この特別企画でも何度かお聞きしましたが、ハーツクライは戦う意欲が強く集中しているときは強い相手にも関係ないけど、気持ちがキレやすくて一度キレるとしばらく走れないんでしたね。
今 気持ちを集中させるには位置取りショックは効果的だし、岩田でいつもと違う位置取りをするのは、勝ち負けするには面白いだろうね。
編 今までと同様の追い込みでは厳しいですか?
今 追い込みに徹すれば安定して伸びてはくるから、上位を狙うというだけなら、追い込みでもいいと思うよ。
編 精神的に集中させるための要素は、ほかに何かありますか?
今 馬場は特殊なほうがいい。道悪とかは走りに集中できるからね。枠はあまり気にする必要はないだろう。敢えていうなら、最内や大外など。何れせよ、特殊性がハマることが、好走することでなく、勝ち切るということを主眼とするなら重要になる。
編 理想の流れは?
今 バラけるような流れが理想だよね。ペースもハイペースとか、緩い流れの差し競馬とか極端なほうがいい。勝ち切るには、これらの特殊な環境がハマらないと。
編 好走度は高いけど、勝つのはハマり待ちですか。エイシンフラッシュはドバイ以来の出走になります。昨年の3着馬だし気になるところですが、理想はありますか?
今 有馬記念のときにした解説と同じで、緩めの流れで3枠くらいがちょうどいいんじゃないか。あのときは、その条件にハマって2着だったでしょ。
編 有馬記念の特別企画で展望してもらいましたね。そこで、そういう話をしてもらって、解説通りの条件にぴったりハマったから、好走したのでした。それでしこたま儲けたんですよねぇ〜(笑)。
今 前回もJC惨敗後だったけど、今回もドバイで6着だからストレスがない。しかもドバイワールドCはペースが速くて後ろの位置取りになっていたから、今回ペースが緩くなって前に行く位置取りショックがかけられたらいい。それから、パワーで押すタイプだから、有馬記念以上に馬体減りはしないほうがいいよ。
編 まずは馬体重の変化をチェックしつつ、枠順とペースですね。安田記念を除外されたショウナンマイティはどうですか? 鳴尾記念で最速上がりの2着から中2週ですが、『大穴血統辞典』に出てくる種牡馬の中でも何よりも鮮度要求率が高いマンハッタンカフェですよね。
今 そこでも再三触れているけど、鮮度があれば馬群を割れるのがマンハッタンカフェだし、GIをそれほど使っていないから生涯鮮度も、このメンバーの中では高いぶん、有利だ。ただ、鳴尾記念を使っての中2週で直近疲労はある。
編 鮮度的には微妙でしょうか。
今 イーブンに近い。多少、鮮度が落ちている状況では激しく揉まれ込むレースは合わないよ。外枠ならペースは多少速くてもOKだろうけど、内枠なら緩めの流れで淡々として欲しい。理想は4〜6枠あたりかな。それから、エイシンフラッシュと同じように、ショウナンマイティもパワーで押すタイプだから、馬体減りは良くない。いずれにしても、自分の競馬ができないとレースを投げ出す、今回のメンバーの中でも一二を争うもろい馬だから。
編 いろいろと好走条件が必要ですね。
今 バラけるという意味では雨は降ったほうがいいかな。雨が降ってペースはそんなに速くないけど、差しが決まる馬場ならば、揉まれるリスクも減るしパワーも活かせるから、ベストだね。
編 ここまで挙がった馬のなかでは、一番スムーズさが大事で、そこが鍵になりそうですね。では最後に、昨年の勝ち馬アーネストリーで締めましょうか。
今 前走は速い上がりのない馬だから、スタート時点で終わった。スタートで抑えたのを見て、「ハイ!消えた」と思ったよ。ああなれば、出走してないのと同じだ。馬券買ってた人は超可哀想だよ。速くなりそうにないメンバーで、速い上がりの無い先行馬を無理に押しででも前に出していかないなんて、怠慢騎乗にもほどがある。だからあの敗戦自体はまったく気にならない。
編 今回の理想条件は?
今 前へ行く位置取りショックがかけられるかが重要だ。
編 去年は2番枠から2番手でしたが、ここ2戦は先行できていませんね。
今 前走は「逃げたくなかったのに最内枠で、それを考慮したら後ろになってしまった」というけど、速い上がりがないんだから。逃げた有馬記念で惨敗したから2番手で競馬をしたいんだろうけど。前が引っ張って速くなってくれるような流れが合うのは分かるけどさ。
編 自分が引っ張ってペースを作るんではないんですね。
今 34秒後半で先行して、上がり34秒後半で勝ち負けできる流れが一番いいから、スローの高速上がりで差しも間に合う馬場だと後ろに捕まる。グラスワンダーで体力は有り余っているから、消耗戦は問題ないわけだし。
編 『大穴血統辞典』の疲労耐久指数も「61」と高いですね。
今 さっきもいったように、今回は生粋の逃げ馬もいないんだよね。アーネストリーは先行馬だけどペースが上がらないとだめだから、逃げてもいいよ。有馬記念の敗因は逃げたことではないから。有馬の上がりは34.6秒だからアーネストリーにとって理想なのに勝てなかったわけだから、もっとペースアップして逃げなければいけなかったということだ。つまり、ペースを落としすぎたのが敗因だ。去年の有馬のような豪華メンバーで、スローの溜め逃げなんかして、逃げ切れるような馬ではないよ。
編 では、無理に逃げとか2番手とかにこだわらず、自分のペースで行ったほうがいいですね。
今 逃げるなら離して逃げる、34秒後半くらいで上がって逃げ馬が残れるような流れにすればね。もしくは、遅い逃げなら、最近よくある縦長で前は平均ペースで後ろは超スローというパターン。エリ女のクィーンスプマンテとか、今年の天皇賞とかね。ところで佐藤哲っちゃんといえば、タップダンスシチーでしょ。
編 はい。JCで離して逃げて9馬身の圧勝でした。
今 ああいう感じで大逃げしないとね。あのときは馬券買ってて、僕の望み通りの逃げを打ってくれたから、かなり美味しい思いをしたんだよ。まだ佐藤哲も多少は若かったからね。今、あんな思い切った騎乗が出来るかなぁ。いろいろGIも大穴当ててきたけど、配当的にはたいしたことないのにあのJCはやけに思い出に残ってるんだ(笑)。まぁ、アーネストリーの状態自体が悪い場合はどうしようもないけど、その辺は我々は調教を見るしか無いから。
編 私はアーネストリーの積極策に期待しますよ(笑)。
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