皐月賞に王手をかけたエイシンチャンプ、2歳牡馬チャンピオンの弥生賞優勝ですから、そう言っても当然でしょう。派手さのないこの主役を、昔のシンザンにオーバーラップさせる思いが、少し出てきました。
圧倒的に勝つのではなく、負けないレースを積み重ねていく、そんな渋さがあるのです。そして、なんと言っても勝負根性、せり合いに負けないところが似ています。
瀬戸口調教師は、「どのレースもハラハラさせられる。もう駄目かと思っても、最後まで頑張って勝ってくれるのだから偉い。調教でもそんなに走る方ではなく、ごく普通の動きで、これと言ったところの見られない馬だ。」と語っている。朝日杯を勝ったときもそうだったが、じり脚だから、なにか速い脚のある馬に一気に来られたらかなわないかもしれないと、胸を張った強気のコメントは出していません。
しかし、朝日杯のあの速いペースを追いかけてバテなかったスピードも、改めて思い起こさねばならないでしょうし、弥生賞のような、一度は止まりかけてまたひと伸びする粘り強さは、かなりのものです。
パートナーの福永騎手にしてみれば、最優秀2歳牡馬でありながらいざ弥生賞出陣といっても華々しい迎えられ方をされないことへの不満があり、この勝利で、接戦になると負けないという自信を胸に本番での闘志を燃やすことでしょう。
それにしてもエイシンチャンプという馬、実況アナウンサー泣かせです。比較的馬群の前にいて、一旦出かかったところで脚色が鈍ったように見せるのです。この時点で、たいていは切り捨てて、伸びてくる他馬に目を移すのですが、ゴール前の接戦から下がることはなく、他よりわずかでも先着しているのですから、実況放送はあわてます。朝日杯FS、弥生賞とレース実況では痛みつけられたので、本番でこそと心を引き締めています。