いよいよ夏競馬が始まった。北海道の澄んだ日差しの中を走る馬を見ると、ふるさとでもないのになにか懐かしさを感じるのは、この世界に長く居すぎたのか、あるいは単に年を取ったからなのか…。
今回は久しぶりに短縮ショッカーについて考えたいと思う。
分かりやすく、簡単に大穴が獲れ、それでいてMの基本が詰まっている。それが、下らない名前ながらも、短縮ショッカーがずっと支持を集めてきた、今も昔も変わらない魅力だと思う。
最初に、初めての方にも分かるように、短縮ショッカーとはどんなものか? 分かりやすい例を使って狙いどころをチェックしていこう。
今週土曜メインの
テレビユー福島賞。ここにちょうどよく短縮ショッカーが出ていた。まずは3番人気で1着したジュエルオブナイル。これは実に分かりやすい“ショッカー”だ。
1.前走が1400mで今回が1200m。200mの距離短縮になる。短縮ショッカーの第一条件は、「前走より距離短縮である」というもので、まずは無事クリア!
2.次は前走の位置取りだ。前走3角が3番手。「前走3角5番手以内」というのが、短縮ショッカーの第二条件になる。これも無事クリア。
3.最後は2走前。1200mで2着だった。「今回の距離以下で連対経験がある」というのが第3条件。したがってこれも無事クリア!
めでたく短縮ショッカーに任命されたので本命に予想し、馬単万馬券を的中することが出来たのだった。というのも、実は2着馬も短縮ショッカーだったのである(3着馬もショッカーで、3頭しか出ていないショッカーが1〜3着を占めたレースだった)。ただ2着馬を見る前に、もう一度ジュエルオブナイルを見てみよう。この馬は短縮ショッカーの中でも、かなり美しい部類の、「完全なる短縮ショッカー」だったからだ。
短縮ショッカーの要件、前走3角5番手以内というのは、どうしてあるのだろうか? これにはいくつかの理由がある。
まず第1に、距離短縮で流れが速くなる可能性が高いので、前走後方からの馬では流れに乗りきれず、取り残されるリスクがあるからだ。そのリスクを減らすには、前走先行しているのが好ましい。だがそのぶん、前走より距離が短くなるために流が激化し、先行馬が気分良く先行できずに、レースを投げ出すリスクが出てくる。このリスクをいかに回避できるかが、短縮ショッカー最大の肝である。
同馬の場合、2走前に今回と同じ芝1200mを、テンが33.5秒というハイラップで逃げている。ということは、短縮1200mでも、流れに戸惑うリスクはかなり低い。ただそれだけでは、まだ「美しい短縮ショッカー」にまではいたらない。
3走前がなんとも秀逸なのだ。テンが32.7秒というハイペースを、2番枠から4番手の位置取りで差し切っている。短縮ショッカーが最高パフォーマンスに達するのは、「前走先行した馬が、短縮で差しに回る位置取りショックを掛けた瞬間」なのだ。短縮+位置取りショックというのを、二重に掛けるダブルショック。これがショッカーの最も理想的な型だ。
また、同馬の3走前は2番枠から差せたのだから「短縮の激流で揉まれて嫌がる」という、ショッカー最大の心配事もほぼない。美しく、完璧な短縮ショッカーである。
ここで、4番人気ダンスファンタジアを見てほしい。前走が、2走前1800mを先行して16着惨敗後に、短縮1200mで差しに回って4着に激走した馬だ。同馬は1200m以下では出走歴がないので準短縮ショッカーだが、16着から4着へ激変したことからも、「差しに回る位置取りショック付き短縮」の効力を示すには充分だろう。
今回はOPから準OPと相手弱化に加え、1200mの流れに慣れも見込めるということで、前走よりも人気に支持されたが、結局相手が弱化したのに同じ4着に終わった。毎回言っている「慣れが見込める」ことの虚しさ、ショック後の反動の両方を我々に教えてくれるのに、充分な内容だったと言える。
では、2着馬ニシノステディーはどうか?これはややギャンブルなショッカーだった。
(次週に つづく)
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