スマートフォン版へ

函館2歳ステークス

  • 2012年07月13日(金) 18時00分
 これまでより3週間早くなった2歳の「初重賞」。最初に勝ち上がった馬にとっては間が開きすぎない利点はあるが、有力どころがステップに選ぶことの多かったラベンダー賞はなく、ほとんどの出走馬が新馬勝ちの1戦だけ。比較が難しい。

 それだけではない。不思議なのは、たとえば最有力馬の1頭アットウィル(父アドマイヤムーン)の勝ちタイムは、自身「36秒5−35秒3」のバランスで1分11秒8だった。しかし、昨年の勝ち馬だった全姉ファインチョイスの新馬勝ちは「34秒3−36秒0」で、勝ち時計1分10秒3である。ともに先行抜け出しながら、まるでラップバランスも、勝ちタイムも異なりすぎている。馬場差ではない。前半の方が1秒以上も遅い1200nの新馬戦などマレである。

 ところが、アットウィルだけではない。人気のローガンサファイア(父ダイワメジャー)の勝ち時計も1分11秒3にとどまり、自身の前後半バランスは「36秒4−34秒9」。まるで、快速タイプの快勝した2歳1200mの新馬戦らしくないのである。 

 1000mを57秒9の好時計で抜け出したストークアンドレイ(父クロフネ)にしてさえ、前半はさして速くなく、後半の3ハロンが34秒2。伏兵人気のロゴタイプ(父ローエングリン)など、勝ちタイムの1分13秒1が平凡というより、「37秒5−35秒6」の前後半にびっくりする。前半のほうが2秒近くも遅いのである。

 例年だと、ファインチョイスのように、なだめながらも「前半34秒台」で勝った記録を持つ馬が必ずいる。それも複数存在するのがふつうだが、今年のメンバーでは、新馬1000mを勝った前出ストークアンドレイの前半「推定35秒2」と、福島で2戦目の未勝利1200mを「34秒8」で行ったトルークマクト。あれでも芝1200mの前半とするとなだめてのスローに近いが…。そして阪神の新馬1200mを「35秒4−35秒4」のバランスで抜け出したティーハーフ(父ストーミングホーム)の前半のダッシュがまあまあ芝1200mらしい記録として残るだけで、みんなのレースの中身がまったく初期の1200mらしくないのである。

 当然、2戦目になれば行き脚のちがってくる馬がいる。レースの流れも異なり、今度はさすがに良馬場だと前半「34秒台前半」で展開するのが例年のパターンである。みんな新馬戦の後半がしっかりしていたから、例年通り、スパッと切れそうな味のある馬を狙うにはこと欠かない組み合わせだが、新馬があまりにスローの流れだったから、突然、初戦より前半で2秒近くも速い流れを追走して、デビュー戦と同じように伸びる脚があるのか、全然、保障の限りではないのである。最初からゆったりペースを楽々とこなした、折り合い自在の逸材ぞろいが今年のメンバーなのだ、とはさすがにいえない。みんな怪しいタイプかもしれないのである。

 ローガンサファイア、アットウィルの2頭は中間の動きの良さから衆目一致の候補。しかし、初戦があまりのスローだったから、信頼性は乏しい気がする。ムキになって買うレースではないので、人気薄の小柄な牝馬ジーブラック(父クロフネ)の単、複と、流し馬券を買いたい。新馬の時計は平凡な1分11秒6だが、そのとき差し切ったコナブリュワーズも、エターナルムーンもすぐに勝ってきたから、時計以上にレースレベルは高い可能性がある。新馬戦は割って出てきたが、今回のもまれない外枠の方がいいだろう。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング