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函館2歳Sでアットウィルを本命にしなかった理由

  • 2012年07月18日(水) 18時00分
 血統解説が最近少なかったので、毎年秋恒例の血統辞典発売を控え、新種牡馬のこれまでをまとめておこう。

 まずは、ちょうど函館2歳Sで産駒が1番人気になっていたアドマイヤムーンを見ていく。

 昨年勝ったファインチョイスの全弟ということで、今年の函館記念では、アットウィルが1番人気に支持されていた。思えば、昨年の種牡馬辞典で解説ししたように、そのファインチョイスを本命に予想して的中し、産駒初重賞勝ちを一緒に祝うことが出来たのだ。

 だが、今年私が函館2歳Sで本命にしたのは、全弟のアットウィルではなく、3番人気ストークアンドレイだった。なぜ、昨年ファインチョイスを本命に予想したのに、今年は全弟のアットウィルを本命にしなかったのか? 一言でいってしまえば血統で勝ち馬は決まらないからなのだが、同時に血統的な問題でもあった。

 というのも、Mの血統理論は、「この血統は強い」とか、「この血統はこの条件で走る」というような固定化されたものではない。もちろん、そういう面もあるのだが、それはたいした問題ではなく、そこに至るリズムがその血統に合っているかの方が、遙かに重要なのである。

 そうでなければ、芝2000m以上のGIを勝った馬の全弟は、みんな芝2000m以上のGIを勝たなければいけない。しかし、芝2000mの未勝利さえ勝てず、それより何百メートルも短いダート戦でようやく勝てた思ったら引退という馬もいる。固定化された強さや、適性を問うような血統論は、すでにその時点で特別重要な意味は持たなくなる。

 実際、アットウィルも、全姉が勝った函館2歳Sで5着に終わったのだ。

 ちなみに勝ったストークアンドレイのお兄さんテイエムキングダムは芝1600mで初勝利。芝1200mは一度だけ使って16着に大敗している。他にストークアンドレイの兄弟で中央連対した馬はホブノブしかおらず、同馬はダート1400mと1700mでそれぞれ2着が1回あるだけ。過去5頭いる兄弟で1200m以下を好走した馬は1頭もいない。

 話は少しアドマイヤムーンからずれるが、なぜそういう血統背景のストークアンドレイを本命にしたのだろうか? 血統を見なかったから、あるいは気にしなかったからか? 答えはむしろ逆で、血統を調べたからである。同馬は、芝1000mからの出走だった。

 逆に兄のテイエムキングダムが芝1200mを惨敗したのは芝1400mからの短縮だった。テイエムキングダムの父はキングヘイロー。S系で、やや一本調子に加速していくタイプになる。ストークアンドレイの父はクロフネ。LないしS系で、やはり一本調子に走るのを得意とする。似たような血統だ。だから良い。

 つまり、短縮で1200m以下だと揉まれてリズムを崩しやすいのだ。クロフネの方がもともと短距離向きなので、その度合いは低いが、方向性として、つまりMの血統論で重要なリズム、時系列として同じ方向性があるのは心強い。それなら、今回の延長というステップはむしろスムーズに走れて、有利に働くはずだからだ。

 また兄弟がダート1400m以上でのパフォーマンスが一番高いのも、体力とパワーの証明であり、今回の延長芝1200mというステップ、しかも函館の力が要る洋芝での延長というステップにも完全にシンクロする。

 このように血統は戦績の見方同様、Mでは今回と同じ条件で強いことはあまり意味がなく、そのレースに至る臨戦過程の中で要求される質に見合った適性が重要になってくるのである。

 ただ、アットウィルの場合は、「新馬1200m勝ち」と、ローテーションも姉とまったく同じだったのでは? と思われる読者も多いだろう。確かにそうなのだ…。
 
(次週につづく)

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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