さて、先週のつづきだ。函館2歳Sで1番人気に推されながら、6着に敗れたアットウィル。この馬は、姉と同様に新馬の芝1200mからのステップでこのレースに臨んだ。それなら、要求される質も姉とまったく同じではないか? と考えるのが普通だろう。
それなのに、なぜ昨年はファインチョイスを本命にして、今年のアットウィルは本命ではなかったのか? ひとつには、牡馬と牝馬の違いがある。
いろいろなところで今まで書いてきたことだが、牝馬のほうが心身の構造が柔らかいのが競走馬の基本になる。逆に牡馬は硬い分だけ、パワーがストレートに伝わるし、闘争心もやはりストレートに伝わりやすい。一長一短があるわけで、一概にどちらがいいとも言えないのだが、今回の場合は牝馬のほうがいい。
というのも、芝1200mという同一条件を勝った直後、しかもそれが新馬戦なので、今回は反動で心身が比較的硬直化しやすい場面になるからだ。何度も書いてきたように同一条件のほうが精神的ストレスを受けやすいし、新鮮な状態で走った後のほうが肉体的反動は出やすい。
今回のステップで言えば、牡馬より牝馬のほうが安定感があるわけで、だからこそ牝馬のファインチョイスは本命にしたのである。
また、昨年のファインチョイスは外枠だったが、今年アットウィルが引き当てたのは外枠。しかも、多頭数の外枠だ。柔軟性があってしぶとい牝馬より、より単調な牡馬のアットウィルの危険性は高まる。
それと、もうひとつ。これも今まで再三書いてきたことだが、種牡馬の生命力の問題がある。
これはあくまでも傾向であって、当然馬によって個体差はあるのだが、初年度産駒のほうが2年目以降の産駒より生命力が高い傾向にある。まして、昨年はファインチョイスによる函館2歳Sがアドマイヤムーン産駒の初重賞挑戦レースであり、今回とは生命力に雲泥の差があった。だからこそ、昨年は本命だったわけだ。
このように、まったく同じ血統でまったく同じステップでも、枠順、年度、性別などの違いによって、結果も違ってくるのである。
さて、今年の函館2歳Sには3番人気でティーハーフという馬が出てきた。その父ストーミングホームは昨年デビューの種牡馬で、まだ解説していなかったので少し見ておこう。
ストーミングホーム産駒のなかで一番出世しているのは、京王杯2歳Sを2着したサドンストームだ。同馬は他にファルコンSでも3着に好走した。その両レースとも、広いコースの1400mだった。そのことからも分かるように、基本は一本調子に単調なスピードに乗せて走るタイプだ。M3ではSLないしLS系に近いタイプと言えるだろう。
道中の起伏に弱く強引に走るのが特徴で、1200mの昇級戦・すずらんSで凡走した後、延長1400mで出走した京王杯2歳Sで連対したり、間隔を開けたときに好走している点に、淡泊さ(L)を感じる。また重や洋芝で好走している点には、パワーや強引な走り(S)を感じる。
そう考えるとティーハーフの場合、単調な流れになりがちな阪神の新馬戦を楽勝した後に、同じ距離の小回り函館の多頭数重賞に向かうステップは、必ずしもいいステップとは言えない。自分のペースで走れずに嫌気が差す可能性があるからだ。ただ、函館替わりは芝が重くパワーが活きるので、プラスだろう。
プラマイの両面と人気を考慮すれば相手の1頭といった評価が妥当と判断した。結果も、そんな感じに終わった。
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