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クイーンS

  • 2012年07月30日(月) 18時00分
 1番人気の3歳馬アイムユアーズ(父ファルブラヴ、牝系3代母はダイナカール)が好位から楽に抜け出し、自身3つ目の重賞制覇を飾ると同時に、これで夏の牝馬重賞クイーンSは、2010年アプリコットフィズ、2011年アヴェンチュラにつづき3歳馬の3連勝となった。

 3歳馬と、4歳以上の古馬には「距離区分、シーズン」によって年齢によるアローワンス(負担重量の減量)が設けられているのは知られる通り。たとえば宝塚記念2200mでは、3歳馬のアローワンスは5kg。安田記念1600mでは4kg。ディープブリランテの挑戦したキングジョージでは約5.4kgだったりするが、今年、クイーンSのそれは従来の8月ではなく7月に行われたため「4kg」だった。

 アイムユアーズは獲得賞金額による増量のある賞金別定とあって、増量されて52kgだから、決して斤量の大きな恩恵を受けての勝利ではない。これで通算[4-2-2-1]。着外1回は距離が長かった印象の強い2400mのオークス4着なので、1800m以下ではほとんど崩れていないことになる。今回は札幌に入厩していたから、絞って臨んだ5月のオークスより24kg増の馬体。ー連のレースと同じく、崩れない代わり、相手を突き離す鋭さに欠けるのは同様だったが-上がり34秒7は1400m以上では自己最高-、一段と安定感を増したのは事実である。直行する予定の秋華賞2000m(10月14日)でも上位争い必至だろう。昨秋は3か月の休み明けになったファンタジーS1400m(京都)を快勝している。今春3月のフィリューズレビュー1400m(阪神)も3か月ぶりだった。

 同じ3歳ミッドサマーフェア(父タニノギムレット)は、オークスの1番人気馬。今回は51kgの軽量で、オークスで13着に沈んだあとの再出発の1戦。こちらは放牧先から函館に入厩し、直前輸送で札幌への出走だった。立て直しの調整に苦心したあとがあり、オークス時より10kg減の442kg。充電して一段のパワーアップを図りたい3歳の夏とすると、あまり誉められたデキではなかったろう。ギリギリに巻き上がった体つきというわけではなく、馬体重減は函館からの直前輸送によるものと思えるが、アイムユアーズとはあまりに対照的だった。51kgの利を生かし3着に食い込んだあたりはさすがだが、秋のローテーションの組み方は難しい。少なくともたくましくなっていなかった。

 夏の札幌で行われるようになった2000年以降、これでクイーンSの3歳馬の成績は、33頭の出走で[4-3-4-22]。3着以内率.333となった。4〜5歳馬の3着以内率.226を大きく上回っている。

 古馬で快走したのは5歳ラブフール(父ゼンノロブロイ)。レースの流れが思われたより落ち着いて前半1000m通過60秒2。スローに近い展開になり、後半の4ハロンは「11秒9-11秒6-11秒7-11秒8」。3コーナー手前からはほとんど一団、上がりの勝負に持ち込まれたから、スローでこそ切れるラブフール(ただ1頭だけ上がり33秒台を記録)に絶好の流れだったのだろう。これで函館、札幌の洋芝[1-2-0-2]。

 大駆けタイプとして牝馬東京タイムズ杯、阪神牝馬特別を人気薄で制したルイジアナピットが3代母。どうやら同じようなタイプに育ってきた。平坦巧者でもある。

 春の福島牝馬Sの勝ち方があまりに鮮やかだった2番人気のオールザットジャズ(父タニノギムレット)は、春シーズンがピークの状態だったから、ひと息入れたあとのここは秋に向けて始動の1戦。まだ完調ではなく、絶好位にいながらゴール前の詰めを欠いた。夏の北海道シリーズの難しさは、別に悪いデキではないが、ここを目標に仕上げる古馬などほとんどいないところであり、放牧から札幌に入ったコスモネモシン(父ゼンノロブロイ)など前走比プラス20kgだった。大半の馬がそういういう死角を持っている中、オールザットジャズもたまたまその典型例だっただけのこと。これは仕方がない。

 洋芝巧者として人気を集めたレインボーダリア(父ブライアンズタイム)は、これまで勝ったのは1000万特別と、1600万特別。この相手でも通用するかとみえたが、オープンではまだ切れ味不足なのか。最後の詰めを欠いた。フミノイマージン(父マンハッタンカフェ)は賞金別定だから仕方がないが、斤量の軽い3歳馬が活躍するここで、増量されての57kgはどうみても不利。また、使いながら調子を上げるタイプでもある。

 着順の良くなかった中では、控えて進んだためまったく流れが合わなかったが、最後に馬群の中から伸びていたエリンコート(父デュランダル)に復調の兆しがあった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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