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レパードS

  • 2012年08月06日(月) 18時00分
 まだ今年で4回目。ごく歴史の浅いダート重賞とあって、どうしても第1回の勝ち馬トランセンド(GI格4勝、ドバイWC2着)をイメージし、勝ち馬の尺度にしてしまいがちだが、それは後続のこのレースの勝ち馬にとってハードルが高すぎる。かわいそうな観点になりかねない。

 ダートの分野では、キャリアの浅い3歳馬限定の夏のGIIIなど、駆け出しの重賞にすぎない位置にある。あくまで出発点の1つにすぎないから、広がる可能性、やがては…を思わせてくれれば十分だろう。

 ホッコータルマエ(父キングカメハメハ)は、これでダート1600〜1800mで4勝目。前回のジャパンダートダービー(大井)では、初コースのナイター2000mとあって、好位のインにおさまったものの、もまれた経験が浅かった。ハタノヴァンクール(父キングカメハメハ)から差のある5着にとどまったが、ここは前回の敗戦を糧にできた。

 コンビの幸英明騎手は、好スタートのホッコータルマエにさらに出ムチを入れて1コーナーまでに好位の外を確保。スムーズに流れに乗せることができた。この時点で勝機はみえたろう。前回とちがって距離はベストに近い1800m。もまれる心配のない外枠。コーナーで外に振られるロスさえなければ、圧倒的に先行抜け出しタイプに有利なカーブのきつい小回りコース。乾いた良馬場とはいえ全体に時計の速い今季の新潟ダート、など、取り巻くすべての条件が好転していた。

「抜け出すのが早かった……幸騎手」というが、前半1000m通過61秒4は重賞とすれば決して厳しいペースではなく、自分のリズムでスパートしたのだから、紛れを生じさせないダート戦の地力勝負ではこの形でいいだろう。ナムラビクターが猛追してきたゴール前、並びかけられたらまた伸びた。着差以上の完勝である。

 陣営の展望は、秋には「ひとたたきしてジャパンCダート」。幸騎手は、対戦して2戦2敗の「ハタノヴァンクールにもう1回挑戦したい」という。当面のライバルであるハタノヴァンクールと同じく、現在のダート部門のチャンピオンサイアーになりつつあるキングカメハメハの産駒だが、同馬はハタノヴァンクールと異なり、アパパネ、ルーラーシップなどと同様、サンデーサイレンスの血を母方からも受けていない。背景はミスタープロスペクターの(3×5)。母方からカウントフリート、ローマンなどの血を引く文句なしのダート巧者ファミリーの出身。パワーを感じさせるに十分な500kg近い馬体も光る。

 まだ相手をねじ伏せるような重量感に物足りなさはあるが、未来のダートチャンピオンへの道は開けた。求められるのは一段のパワーアップと、迫力である。

 道中、巧みにインに入り、もまれる展開になりながら馬群を割って伸びてきたナムラビクター(父ゼンノロブロイ)は、これでダート1800m[3-1-1-0]。今回はキャリアの差も、また、強敵相手と対戦していない弱みもあって、「並びかけたら相手はまた伸びた……和田竜二騎手」となった。しかし、勝ち馬との着差はクビだけ。あまり調教では動かないため、4月のデビュー戦は15番人気。勝った2戦目も10番人気という渋い成長株である。マイル戦でハイペース追走の形になったりするとき、真価発揮がある気がする。おそらく切れるダート巧者と思える。

 母ナムラシゲコ(父エンドスウィープ)の半兄には、ナリタブライアンのライバルの1頭で、再三再四の脚部不安を乗り越えながら、高知競馬で12歳秋までに27勝(うち地方競馬21勝)もした不屈のナムラコクオー(父キンググローリアス)がいる。

 1番人気に支持されたイジゲン(父は注目の種牡馬エンパイアメーカー)は、パドックから返し馬に入るまでは、まったく不安を感じさせない闘志を内に秘めた感じだったが、ゲート入り直前になって明らかにテンションが上がりすぎてしまった。ゲート入りを嫌がったうえ、スタート直後につまずいている。スムーズに流れに乗れないのは再三のことで、これまではそれはキャリア不足と思われていたが、明らかなスタート不安が連続するのは大きな死角になってしまう。

 相手が前回のように条件級なら、強引にも映るレース運びでねじ伏せることもできたが、さすがにオープンではそうはいかない。迫力ある追い込み、鋭さあふれるフットワークはだれもが認めるところだが、ゲート不安(カーッとする気性も関係する)は、早くに解消したい。こういう馬にはほんのささいなことも影響すると思えるが、さすがの内田博幸騎手にも少々のスランプ時期はある。ここ3週ばかり、内田騎手は(もちろん成績はそれなりにまとめているが)、珍しくリズムが良くない気がする。

 1000m通過61秒4。後半50秒4-37秒8=1分51秒8。4コーナー手前でラップが落ちた部分はあったが、ダート戦でこの平均ペースの流れだと紛れは生じない。 

 結果は実力勝負。伏兵ダノンゴールドは、巧みに勝負どころで息を入れたが、まだがんばる根性が不足していた。好馬体の光る魅力的なダート血統のフリートストリートは、今回はやけにお上品に映ったから、スランプを脱せず完調ではなかったのだろう。以下の伏兵は、見せ場を作ったり、食い込むことはできなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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