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関屋記念

  • 2012年08月13日(月) 18時00分
 過去の平均勝ちタイム「1分32秒3」を誇る高速のマイル重賞は、今年も決して前半の流れは速くなかったものの、レース上がり44秒5-32秒8を記録し、なんと1分31秒5のコースレコード(日本レコードと0秒2差)の快時計が記録された。

 ゆったり流れがちな新潟1600mとあって、レッツゴーキリシマが先手を奪ったが、同様の好スタートを切ったドナウブルー、エーシンリターンズが素早くスタート直後から2〜3番手。ドナウブルーは春のヴィクトリアマイルと同じ2番手の先行策。エーシンリターンズも好時計で乗り切るときのベストパターン。流れが速くならないことは見えているだけに、この時点でもう人気の牝馬2頭の「好走」は約束されただろう。

 前半ゆったり流れる新潟1600m。レッツゴーキリシマの先導したペースは、「前半47秒0-1000m通過58秒7…」。オープン馬にとっては、特に高速決着のみえている平坦の新潟ではスローだが、超スローでもなく、先行のドナウブルー、エーシンリターンズには一番気分良く「リズム」に乗って助走できる前半だったのである。

 後半の半マイルは「44秒5-32秒8-11秒3」。先行2〜3番手の牝馬がこの流れに乗って併せ馬で抜け出し、それぞれ上がり32秒5〜6でまとめたのだから、伏兵の差し馬陣は苦しかった。

 レコードが記録されるのは前後半のバランスのとれたムリのない流れの際に多いが、平坦の新潟で、かつ直線が約660m(上がり3ハロンに相当)の特殊なコース。1600mでは前半の1000m通過が「58秒台」になるのは、余力のある先行抜け出し型はさらにピッチを上げることが可能な「余力を残せる流れ」ということだろう。レース時計の際に、平均的な関屋記念の前後半バランスは「46秒8-45秒5」としたが、今回は後半の800mの方が「2秒5」も上回ってみせた。ともにマイルのGIで好走実績のある同士。理想のペースに乗って、100点以上のスピード能力を全開させたのがこのレースだったといえる。

 ドナウブルーはふっくら見せてデビュー以来最高の438キロ。一方のエーシンリターンズは多少とも余裕のあった前走から8キロ絞れて理想の466キロ。夏の牝馬らしくともに絶好の仕上がりだった。流れも斤量もすべて理想的だったのである。

 3番手以降だが、この高速上がりのレースで抜け出し、ともに3ハロン32秒5〜6でまとめた2頭に並びかけるのは難しい。中団からうまくイン寄りに入り、内ラチ沿いから突っ込んだスピリタスは、幸運にも賞金上位馬が次々に回避して出走できたツキに、この日、絶好の冴えをみせていた和田竜二騎手の好騎乗が重なった。今季の新潟、もう後半戦に入ったが、相変わらず外を回ってはアウト。インを狙った馬だけが最後にもうひと伸びしている。直線の1000レースでもそうである。

 最速の上がり32秒4を記録したのは7歳スマイルジャックと5歳ゴールスキー。ともに後ろから一気に伸びて3着争いに加わったが、このレース上がりでは善戦止まりは仕方がない。といって先行できるものでもない。

 新潟巧者マイネイサベルは巧みに好位にとりつき、この馬も上がり32秒9を記録したが、さすがにこれ以上の切れは難しい。

 人気の1頭エアラフォンは、外枠のロスが大きかった。途中でイヤ気をだしたところもあったが、ひと息入ってやけに体が立派に映ったから、数字通りに太め残りだったろう。

 最近の関屋記念では、牝馬の快走はごく少なかったが、これは春の牝馬シリーズなどがあって、常に出走馬が少なかっただけのこと。今回の結果をみると、牝馬が好走して当然の条件がすべて揃っている。上がりの速いレースになるあたりが、スピード型の牝馬には願ってもない条件だから、来年はここを目標のひとつにする牝馬が増えるかもしれない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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