すっかり恒例となった秋の種牡馬辞典制作の作業が始まった。そこでしばらく、種牡馬の解説をしていきたいと思う。今回はゼンノロブロイ産駒にスポットを当ててみたい。
ゼンノロブロイは現役時代安定した量と体力を誇り、海外を含め20戦して、馬券圏外だったのはわずか3回。5着以下に敗れたのは引退レースの有馬記念だけという、予想する気力が萎えるような、堅実無比な成績を残した。その自慢の体力と量は産駒にも継承されている。
しかし、そのぶんロブロイ自身もそうだったように産駒にも淡泊さがあり、また父の現役時代ほど圧倒的なパワーは産駒に伝わっていないので、相対的により淡泊さが目立つケースが多いのが特徴になっている。
それでは具体的に好凡走パターンを見ていこう。
ゼンノロブロイ産駒中、最多の6勝(中央のみ)を挙げているのがトレイルブレイザー。2月の京都記念で重賞2勝目を挙げた。
このレースは、9頭立ての少頭数でスローペースを先行したもの。揉まれずに単調な流れになれば体力を活かし切れるので強い競馬ができる。また京都記念は京都競馬場で行われる。重賞1勝目のアルゼンチン共和国杯が東京であったように、広い単調なコースのほうが自分の競馬はしやすい。
加えて、京都記念が芝2200mで、アルゼンチン共和国杯は芝2500m。量が豊富で体力が伴っている馬は、だいたいが単調なパワーで押しきれる非根幹距離を好むのだが、やはりゼンノロブロイ産駒も、極限では非根幹距離のほうが競馬はしやすいのだ。
「でも同じロブロイ産駒のコスモネモシンは今年の春、小回り福島16頭立ての2番ゲートという条件で4番人気2着に好走しているぞ?」という意見もあるかもしれない。確かにそうだ。
私はこの福島牝馬Sで、そのコスモネモシンを本命にしていた。ゼンノロブロイ産駒だったからだ。矛盾しているが、そこには理由がいくつかあった。
第1に、今回が相手弱化であるという点。前走の中山牝馬Sより、ローカルの福島牝馬Sのほうが一枚メンバーは落ちる。メンバーが落ちたからと言って必ずしも有利にならないのが競馬であり、Mの基本でもあるのだが、量系は相手弱化のほうが精神的にスムーズに競馬ができるので、比較的プラスに働くケースが多いのである。
第2にストレスがない点。前走中山牝馬S、外枠の差し馬はまず物理的に好走できない馬場状態だった。そのため、レースを途中で投げ出して凡走した。力を出していないため、疲労やストレスはまったくない。
ストレスがない状態での巻返し力が高いのも量系の特徴だ。ややゼンノロブロイ産駒は重い。重いタイプというのは、ちょくちょく巻き返すという交互パターンは案外少ないのだが、ゼンノロブロイ産駒の場合はかなり気がいいので、交互の色彩も強くなっているのだ。
(次週につづく)
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