トレイルブレイザーはこれまで7回連対しているが、1回しか連続連対が無く、連対と連帯できないレースを交互に繰り返す色彩が強い。連続連対したのは、準OPの古都Sで2着に負けた後臨んだアルゼンチン共和国杯。これは、叩き2戦目のレースだった。下級条件で負けた後で、休み明けから2戦目だったのだ。
つまり、ほとんどストレスや疲労の無い状態で連続連対しただけで、他は連対後には負けているというわけである。ストレスに弱く、そのぶん気が良くて巻き返すというタイプの戦績だ。
では、コスモネモシンの場合はどうだろう。彼女は8回連対しているのだが、休みを挟んだ場合を除いて連続連対したのは、未勝利勝ち直後に一気に重賞へ格上挑戦したフェアリーSのときだけだ。
このフェアリーSのときはトレイルブレイザーが連続連対したときとまったく同じ条件だった。つまり、格上挑戦でストレスがなかったのだ。彼女の場合は、このレースが5走目と使い込まれてはいたがまだ2歳で、しかもデビュー5戦目のレース。休み明け2戦目だったトレイルブレイザー同様に、前走のストレスばかりか蓄積疲労もあまりない状態だったわけで、それ以外は交互のパターンが基本になっている。
どの種牡馬でも連続連対するのは生涯鮮度が高いときというのが普通だが、その傾向がゼンノロブロイ産駒の場合はより強く、生涯鮮度が落ちると次第に踏ん張りを失っていく。
ただし、1つだけ彼女がトレイルブレイザーと違う点がある。それは文字通り、「彼女」であること。つまり牝馬だということだ。今まで何度も書いてきたが、牡馬と比べれば牝馬の方が集中して走る傾向にある。ゼンノロブロイ産駒は特にその傾向が顕著で、コスモネモシンも牡馬のゼンノロブロイ産駒と比べると、かなり粘っこい走りをする。
11年中山牝馬Sの3着も、12年福島牝馬Sの2着も、多頭数内枠での好走だったように、馬群に入ってもそれほど嫌気が差さない。嫌気が差さないためのポイントは、ストレスが無いこと、ややレース質が重いことの2つだ。
牝馬としてはパワーがあるのが、ゼンノロブロイ牝馬の特徴なので、荒れた馬場状態での内枠なら、ある程度馬群がばらけるうえに、パワーで荒れた内の馬場を苦にしないため、相対的に牝馬同士では有利になる。
同じ牝馬のアニメイトバイオも似たタイプで、阪神ジュベナイルFを18頭立ての6番枠で連対するなど、内目の枠の消耗戦で体力を活かして好走したケースは結構ある。特に牝馬限定戦なら、パワーレースは他種牡馬との比較上、相対的に有利だ。
逆に牡馬の場合は、前述のトレイルブレイザーはじめ、量や体力は牝馬に対して比べものにならないレベルにあるものの、その表裏として、より単調さ、淡泊さが強調されている馬が多い(もちろん、ここで話しているのは、どちらが競走馬として強いとか優秀とかいう話ではなく、性質の話である)。
ペルーサも何度かこの連載で登場したが、少頭数やスローの高速上がりでの追い込みなど単調な展開向きで、出遅れると揉まれずに済むのでより好走率が上がるという、いかにも量が突出して豊富なL系の典型らしい戦績を残している。
そのような訳で、先週話した福島牝馬Sのコスモネモシンは、凡走後でストレス無く、荒れた福島のパワー馬場での内枠だったので、ちょうど内枠でも走り頃と判断したのである。
もちろん牝馬でもサンテミリオンのような、牡馬並みに単調なパワーで押し切るタイプもいるが、基本的には今まで見てきたように、性別で多少修正を加えて考えると馬券になりやすい。また牝馬でそういうパワータイプだと、どうしても純粋なパワー競馬では牡馬に対しては劣るケースが多いので、尻つぼみになりやすい。
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