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札幌2歳ステークス

  • 2012年08月31日(金) 18時00分
 ダート(砂)の1200m時代が23年間つづき、そのあと芝1200mの時代が8回行われたのがこのレースの歴史。2歳の早い時期の短距離重賞とあって、翌年のクラシックや、GI格の競走とはほとんどというほど結びつきはなかった。

 ところが、洋芝の1800mの重賞に生まれ変わった1997年以降、それまでとはレースの持つ意味が一変、重要度も大きく変わった。のちのクラシックホースや、GI格レースの勝ち馬が何頭もここに出走している。2000年ジャングルポケット、2008年ロジユニヴァース。2頭の日本ダービー馬を筆頭に、ウメノファイバー、テイエムオーシャン、スズカマンボ、アドマイヤムーン、マツリダゴッホ、ゴールドシップ…などがこのレースに出走している。

 近年は、北海道シリーズで勝ち上がった馬だけでなく、今年のトーセンパワフル(阪神)、ラウンドワールド(阪神)、マイネルホウオウ(福島)など、他場でデビューした馬も、洋芝の1800mを求めてここに回り、さらには人気の中心になっているあたりがこのレースの重要度を示す。どうも夏のローカル開催の日数は減らされる流れになりそうだが、評価の高い札幌、函館の洋芝のレース数削減は宝の持ち腐れ、あまりにもったいない気がする。

 阪神でデビューし、全兄ロジユニヴァースと同じように札幌を2戦目に選んだトーセンパワフル(父ネオユニヴァース)に期待したい。厩舎が異なるので仕上げの手法は変わるが、大型馬で仕上がりに時間がかかるようでいて、まったくそうではないのがこの兄弟の特徴。おそらく父母両系にヨーロッパ血脈が濃く、早熟というのとは全然ちがうが、調教を重ね、また実戦を使うようになってからの進展が早いのだろう。ロジユニヴァースは歴史的な不良馬場のダービーを制覇した反動が尾を引き、2年も休んだあとの先々週の札幌記念は回復途上だったが、順調に鍛錬と休養をかさねた2歳後半から3歳春までは一戦毎に充実し、弥生賞までは4戦4勝だった。上がりは勝負強く33秒3だった新馬の勝ち方からすると、トーセンパワフルにも同じようなスケールを期待していいだろう。未来を感じさせるレース内容に期待したい。スケールがある。

 対するのは、同じ阪神デビューのラウンドワールド(父ディープインパクト)。強烈な切れ味、レースへの対応力は、すでに3戦もしているからトーセンパワフルを上回るものがあるが、一戦毎に馬体重が減り、前回はもう424kg。今回がすでに4戦目。未勝利馬ならともかく、勝ち上がった期待馬とすると型破りである。体調に不安などないからの出走だが、なんとなくこの先も期待しつづけるのは危険な気もするので2番手。

 人気のコディーノ(父キングカメハメハ×ハッピーパス)は、関東の藤沢厩舎の期待馬。1800mの新馬戦は、スローだったとはいえ、最後11秒3-11秒1の切れ味勝負を楽々と抜け出している。センスあふれる素晴らしい馬体も光っている。中間、函館から札幌に移動したとはいえ、やけに控えた調教が気になるが、評価を落とすほどではない。

 割って入る伏兵の魅力は、ラウンドワールドと同様、もう4戦目になるブリリアントアスク(父ネオユニヴァース)。いかにも洋芝向きの渋いタイプで、距離が1800mに延びるのも歓迎だろう。以下、マイネルホウオウ、エデンロック。あまりムキになって馬券を買うレースではないが、おそらく今週一番の必見レース。ハイレベルの攻防に期待したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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