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セントライト記念

  • 2012年09月18日(火) 18時00分
 ローズSのジェンティルドンナ、ヴィルシーナ。フォワ賞のオルフェーヴル。そしてこのレースを快勝したフェノーメノ。この週のトライアルレース、あるいは本番を前にした前哨戦は注目の人気馬が順当にビッグレースに向けて中身ある内容を示した。

 フェノーメノ(父ステイゴールド)は、レース前にも、勝利した直後も、オーナーのサンデーレーシング関係者がフランスに遠征していたため、このあとの路線は明言されていないが、今秋の菊花賞は正直、非常にメンバーが手薄である。

 神戸新聞杯に出走予定のゴールドシップ(父ステイゴールド)を別にすると、日本ダービーのディープブリランテは仮に出走してもぶっつけ本番になる。トーセンホマレボシは脚部難で引退し、ワールドエースも戦線離脱の脚部不安。春の注目馬のうち、グランデッツァはこういう長距離向きではないのははっきりしている。いまのところ高い評価を受ける菊花賞候補はきわめて少ない。

 菊花賞の3000mが特殊な距離になったのは事実で、3歳限定の長距離3000mに興味を示さなくなった陣営が増えたのはたしかだが、中〜長距離路線のビッグレースを展望し、その頂点をたとえばオルフェーヴルの挑戦する凱旋門賞や、ディープブリランテの挑んだキングジョージVI世&クイーンエリザベスSにかかげるなら、多くの競馬人が認めざるを得ないのが、日本の馬場なら、スローの菊花賞3000mぐらいは平気でこなせるスタミナ兼備の総合力であることもはっきりしている。

 キャメロット(父モンジュー)がドンカスターのセントレジャー(約14F)で負け、凱旋門賞出走の可能性が少なくなったと伝えられる。しかし、このまま引き下がっては守るべき名誉も、種牡馬としての高い価値キープもあり得ず、実力負けの烙印を押されかねない。3歳限定のダービーは、実はどこの国でも評価は微妙である。無敗の記録は途絶えたが、タフなドンカスターとはいえあの相手の約14Fで伸びを欠いたから引退では、スタミナ能力に思われた以上の決定的な限界があり、よりタフなコンディションもありえる凱旋門賞に出走し、さらに敗戦の数を増やすのを回避しようという情けないキャメロットと思われても仕方がない。逆転する方が評価は高まるだろうに。

 距離区分というのは、1200m前後こそベストのスプリンターと、そこからマイル戦を飛び越えて、2000m〜2400m級が理想の中距離タイプでは明確な違いがある。また、天皇賞(春)の3200mや、メルボルンC,欧州でいえば20FのアスコットゴールドC、ロンシャンのロワイヤルオーク賞3100m、カドラン賞4000mなどの長距離戦ではまた大きな違いはあるも。しかし、ひとたび2400m級を超えてしまえば、あとはレベルと、決定的にスピードがない馬は別にして、必要なスタミナ能力にはそれほど距離区分が異なるほどの差はないという考え方がある。

 一部の国では2400mはスピード優先の距離に近づいているから難しいが、総じてそれ以上の長い距離は決まってスロー。もちろん世界の長距離戦も同じこと。もっとスローになる。だから、2400m級なら距離がもたらすスタミナ不足はないが、3000mになってはそれを乗り切るスタミナはないというのは、あまり説得力はないという意味である。人間の競技とはおよそ距離に対する考え方は異なるが、ボルトはマラソンの42?はいやがるだろうが、10、000mを得意とする長距離選手は、マラソンを楽々とこなしてしまうのと同じかもしれない。

 脱線したが、日本ダービー2着のフェノーメノは、春に示した高い能力を再現しただけでなく、ステイゴールド産駒らしく明らかに成長していた。そのステイゴールド産駒にしては500キロにも近づいた馬体を誇るから、たしかに陣営が迷うように必ずしも3000mへの距離延長は歓迎でない面もあるだろうが、流れに乗れる自在性もみせた強みは大きい。出走するなら菊花賞の最有力候補の1頭だろう。蛯名騎手は重賞100勝目。レースの前から自信にあふれていた。そしてレース後も。菊花賞に対する血統面の魅力は、母ディラローシェが母の父としても大成功の万能型デインヒルであり、また、母はリボー(4×4)のクロスも秘めることか。

 2着に突っ込んだスカイディグニティ(父ブライアンズタイム)は14番人気の伏兵。阿賀野川S2200mで凡走したため大きく人気を落としていたが、中団から外を回って追い込んで2分11秒0(上がり34秒2)なら、フロックではない。現8歳ゴールデンダリア(父フジキセキ)の半弟。兄もセントライト記念2着だった。兄は1800〜2000m級を得意とするスピードタイプだったが、弟は2400〜2600mで2勝。祖母の父は凱旋門賞や菊花賞になると決まって登場するリボー系アレッジド。4代母になるスコッチヴァーディクトは、種牡馬リアルシャダイの3代母でもある。候補の少ない今年、魅力十分の伏兵たりえる。

3着ダノンジェラート(父ディープインパクト)までが菊花賞の優先出走権を獲得したが、ダノンジェラートはどちらかとスピード系か。距離延長には不安もある。

 上位人気馬では、エタンダールは青葉賞、日本ダービーでのフェノーメノとの着差とほぼ同じだから、今回は力負け。エキストラエンドは馬体こそ悪くなかったが、せっかくの好スタートを弱気にどんどん下げてしまった。それで3コーナーからやおらスパートしては坂で失速は当然。ちょっと悔いが残るだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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