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神戸新聞杯

  • 2012年09月24日(月) 18時00分
 秋になり、種牡馬ステイゴールド(父サンデーサイレンス)産駒の快進撃、大活躍がつづいている。9月16日のフランス「フォア賞」でエース格の4歳オルフェーヴル(母の父メジロマックイーン)が凱旋門賞への展望を広げたのに呼応し、17日の「セントライト記念」を日本ダービー2着の3歳フェノーメノ(母の父デインヒル)が快勝。

 この週は、東の「オールカマー」を4歳ナカヤマナイト(母の父カコイーシーズ)が完勝し、そして西の最重要トライアル「神戸新聞杯」を皐月賞馬ゴールドシップ(母の父メジロマックイーン)が圧勝した。さらには、22日の「九十九里特別」(2500m)を勝った新星フェデラルホール(母の父ドクターデヴィアス)も、菊花賞への出走ほぼ大丈夫と思える賞金1500万円に達した。ふつうは無名の1000万特別ではあるが、2004年、デルタブルースが勝って、菊花賞快走に結びつけた長距離戦である。

 重馬場のオールカマーを制したナカヤマナイトは、もちろん古馬のビッグレースの注目馬となったが、天皇賞.秋や、ジャパンCの有力馬というよりは、12月の得意の中山の有馬記念の方が合うイメージが強い。今週の主役は断然、ゴールドシップである。

 今回は乗り込み量こそ不足してはいなかったが、皐月賞馬ゴールドシップとすればあくまで本番「菊花賞」を見据えたステップの一戦であり、最終追い切りでもたつき、ここを使って本番では…、そんな仕上がりだった。この馬、2歳夏の函館の新馬戦当時からずっと馬体重は変わらずの500kg前後。大きさはまったく異なるが、2歳12月の新馬戦から、7歳12月の香港ヴァーズまで丸5年間、ずっと不変の420〜430kgの馬体重で走りつづけた父ステイゴールドと同じで、馬体重の変化しない馬なのだろう。

 神戸新聞杯(1953年が第1回)と、本番菊花賞の強い結びつきは知られるが、秋に京都新聞杯があった当時を含め、過去に皐月賞馬としてこの重賞を勝ったのは、1954年のダイナナホウシュウ、74年キタノカチドキ、76年トウショウボーイ、2005年ディープインパクト、11年オルフェーヴルの5頭。その5頭の菊花賞成績は【4−0−1−0】である。

 間に合えばダービー馬ディープブリランテがぶっつけで本番に出走意思を示しているが、間に合うと、菊花賞の直前になって取り上げられると思える「皐月賞馬と日本ダービー馬の菊花賞での対戦成績」は、たしか、ダブルスコア以上の差で皐月賞馬の先着である。ゴールドシップはきわめて強気になれる。

 レース全体のバランスは「1分13秒2−1分12秒0」=2分25秒2。超スローになることも珍しくないトライアルの2400mとすれば、もっとも反動など考えなくていい負担のかからない流れであり、かつ紛れの生じにくいペースだった。前半は人気を分けたマウントシャスタ(父ディープインパクト)をすぐ前に置き、いつでもスパート可能な馬群の外。ダービーでは高速の芝コンディションにもかかわらず、ちょっと置かれ過ぎた悔いもあったから、ペースの上がり始めた3コーナー過ぎからあまり待つことなく自力スパート。抜け出してからはまったく楽、ゴール前100mくらいは流す余裕もあった。

 ディープブリランテは決して順調ではなく、おそらく出走すると思えるフェノーメノもまだ菊花賞出走は明言していない。強敵は非常に少ない。

 強敵になるはずだった2番人気のマウントシャスタは、ゴールドシップから約4馬身差(0秒8)の3着。トライアルとはいえ、まだ2200mまでの経験しかない同馬にとっては、もう少し手ごたえある結果を出したかった。どちらかといえばさらに距離延びる3000m歓迎とはいえないこの馬、引退に追い込まれた同期のトーセンホマレボシ、長期休養を余儀なくされているワールドエースに代わって池江厩舎の菊花賞候補になるはずだったが、あまりいい秋の始動戦ではなかった。手ごたえがかんばしくなかったためかもしれないが、イン狙いに出る策など今回のレーステーマではないと思える。

 2着ロードアクレイム(父ディープインパクト)は、2001年のオークス馬レディパステル(父トニービン)の産駒。ゴールドシップ、マウントシャスタと前半はほぼ同じ位置にいて追い上げたから、単にデキの良さがもたらした好走ではない。セントライト記念で2着したスカイディグニティ(父ブライアンズタイム)とともに、だいぶ手薄になりつつある今年の菊花賞の伏兵に浮上してきた。距離はこなせるだろう。

 4番人気ヒストリカル(父ディープインパクト)は、調整に失敗して大きく体の減っていたダービーから立て直してきたが、あまり理由のはっきりしない乗り代わりで、後方のまま見せ場なし。半兄カンパニーと似た部分大としたら、距離延長は必ずしも歓迎ではなく、また、完成にはもっと時間が必要なタイプだろう。素晴らしい内容だったきさらぎ賞、マウントシャスタと接戦の毎日杯から、その素質には衆目一致でも、やや無理な状態で出走したダービーの反動がまだ残っていたように思えた。

 本番の伏兵候補と考えたユウキソルジャー(父トーセンダンス)は、どのみち大駆けタイプだから、うまくはまれば可能性は少しあるかもしない…と思わせたから、まずまずか。凡走では望みが消える。かといって、2〜3着してはそれなりの評価を受けかねない。4着善戦ならちょうどいいところだろう。しかし、正直、パンチは乏しい。

 カポーティースター、ミルドリームは、ゴール前もう流していたゴールドシップからともに10馬身以上も離されてしまった。残念ながら菊花賞タイプではなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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