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オールカマー「こんなときのロブロイ産駒は危ない」

  • 2012年09月26日(水) 18時00分
 今週はオールカマーが重馬場で行われた。重のレースは着地点を探る段階で、いくつか馬券的に難しい判断を迫られる。

 今回、雨が降ったことで、俄然難しくなったのが、ゼンノロブロイ産駒である1番人気ルルーシュの判断だ。ゼンノロブロイ産駒は、以前書いたように、L系だ。つまり、体力や量は豊富で気分良く走ると強いが、厳しい状況になって踏ん張ろうとはしないので揉まれることを嫌がる。

 前走は11頭立ての札幌日経賞(OP特別)で、800m距離延長のレースだった。体力が豊富な量系にとって、大幅延長は大きなマイナスにはならない。むしろ、揉まれず、スムーズに走れる可能性が高まるので、プラス要素の方が強い。ゼンノロブロイ産駒の中にはSの強いタイプとLの強いタイプがいるのだが、牡馬は単調なL系が多い。

 さらにルルーシュは、3走前に東京の9頭立てという嫌になるほど単調なレース(6/9江の島特別、1000万下)を勝ち、その後に相手強化で頭数も増えたOP特別の巴賞(7/1、函館)で1番人気2着。さらに、巴賞よりメンバー落ちで距離が延び、頭数も減って単調さが増した前走であっさり1着。しかも0.4秒千切って勝った。

 この戦績から、同馬がL要素の強いタイプのゼンノロブロイ産駒と考えて間違いないだろう。

 オールカマーでは頭数が一気に増え、しかも内枠で相手も強化された。L系が一番嫌がる条件だ。それでも鮮度がある場合や、ストレスがない場合はいいのだが、前走オープンを実際に勝っているわけだからストレスはある。鮮度はまだ3走前が条件戦だから高いので、その点は悪くない。しかし、多少でもストレスがあるときに、前走より一気に取り巻く状況が厳しくなるのでは、レースを投げ出すリスクのほうが高い。

 5番人気なら生涯鮮度の高さのほうを取ってもいいが、1番人気ではあまりにも期待値が低すぎる。即、切り捨てが正解だ。

 が…、待てよ? 天気予報が変わっているぞ。前日の昼過ぎの段階で、天気予報では「雨量のほどは定かではないが、それなりの雨が中山で降る」という予報に変わっていた。これは厄介だ。重巧者だからか?

 実際、重では2戦しており、そのうちの1戦は1年以上ぶりのレースにもかかわらず3着。また、やはり重だった江の島特別では0.2秒差つけての1着という戦績がある。もともとパワー型で、拙著『血統辞典』の重馬場評価は「A」の種牡馬だ。加えて、実際の実績でもいいとなると、これは重の鬼といっても過言ではないだろう。

 だが、それ以上の問題が、今回はあったのだ。重になると、馬群がばらける可能性が高まる点である。

 そうすると揉まれるリスクが減る。これが、同馬が危ない大きな理由だった。前走の少頭数から一転多頭数での最内枠に「レースを前走より厳しく感じて投げ出す」というリスクが半減してしまうのだ。

 それに加えて元来が重巧者なら、雨で重い内の馬場を他馬が避けて、ポッカリ開いたその内を、揉まれることなくスムーズに、重巧者ぶりを発揮してスイスイ突っ込んでくるシーンが現実味を帯びてくる。ステップと枠順によるマイナス要素の中に、当日の雨の降り具合で訪れるかもしれない大きなプラス要素。その錯綜の中では、相手の1頭ぐらいが妥当という判断をした。

 そこで、外枠が嫌だったが重のタフな競馬に向くナカヤマナイトを本命にし、ルルージュを3番手評価した。

 そして、レースは、ゴール前で馬群が密集する形に。しめたっ! と私は思った。

 この形だったら前走楽な競馬をして好走した直後で、ストレスがある状態のL系なら、嫌がって馬群は割れないはず…。もし、これでインがポッカリ開いていれば、重巧者ぶりを発揮してスイスイ脚を伸ばすところだったが、この形になれば大丈夫。まだ開幕間もなく、雨でもインがポッカリとは空かなかったのが幸いした。

 実際、馬群を嫌がって伸びず、1番人気4着に終わったのである。

 このように、馬場とタイプは、それまでのレース間隔や枠順と、密接に関わる。また、重馬場はその日の降り具合によって、伸びる場所が変わるし、また何より騎手のコース取りが変わる。したがって、かなり繊細な微調整をレース直前まで続ける必要があるのだ。


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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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