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スプリンターズS、ドリームバレンチノ好走は条件が揃っていた!(2)

  • 2012年10月10日(水) 18時00分
 ドリームバレンチノのスプリンターズSは、前走に比べ相手が一気に相手強化された。相手が強くなるほどパフォーマンスが上がるのが、集中力系の基本になる。

 また、フルゲート16頭立ても混戦になりやすくていいし、前走の13番枠から内枠の3番枠に入ったのも好都合だった。馬群の中で集中力を引き出すのが、C系の基本になるからだ。ところで、前走は時計の速い馬場で摩擦がないのもマイナス要因だったと解説したが、今回も高速馬場では? と気になる読者もいるかもしれない。しかし、これはほとんど関係ない。

 前走のキーンランドCは函館の重い馬場から札幌の速い馬場に変わったので、その落差から摩擦を好むC系が嫌気に感じるという解説をした。今回は「前走すでに速い馬場だった」ので、速い馬場で走ってもそれがマイナスになるということはない。いつも言うように、今回の条件が問題なのではなく、前走と今回を比べるとどうなのか? という、落差が最大の問題だからだ。加えて、前走は凡走しているので、前走より辛く感じる心配はほとんどない。

 実際、スプリンターズSでは前半32.7秒という超ハイペースになったため、同馬の集中力が存分に活かせ、9番人気で3着と激走を演じた。同馬にとっての唯一の誤算は、内が案外伸びない馬場で、馬群が外に膨れてしまった点だった。

 そのため、自身も最内ではなく、中目に出ざるを得なかったし、また外目が伸びたぶん、外の人気馬にやられてしまった。これで内目のほうが伸びる馬場だったなら、集中力を最大限に活かして、恐らく連対していたはずである。

 ところで、このレースには、ラッキーナインという外国馬が出ていたのだが、これもM的には興味深かった。

 外国馬はほとんどの場合、日本初戦のほうが走る。2戦目で「慣れてきたから」という理由で人気になって、消えた外国馬は枚挙に暇がない。これに関して、Mを知る人間には説明の必要がないだろう。それは、日本初戦のほうが精神的にフレッシュだからだ。

 特に外国のタフな馬場から、日本の単調な馬場に替わるショックは劇薬になる。そこで「摩擦がないから楽だなぁ」と好走した場合、次走の反動は計り知れなくなるわけだ。

 ただし、短距離の場合はジャパンCのような長距離と違って、日本2〜3戦目の馬が走る確率は若干多い。これもいつも言うことだが、短距離のほうが生命力が必要ないため、生涯鮮度の落ちた馬でも好走出来るチャンスがより広がるからだ。

 今回人気を裏切る形での2着だったが、スプリントGIの常連、カレンチャンが連対したのも、似たような理由からだ(前哨戦で凡走してストレスが薄れたことや、ロードカナロアには及ばないまでも、惨敗したパドトロワ、ダッシャーゴーゴーなどの有力馬よりは、まだこれが日本GI3戦目で遙かに生涯鮮度が高かったことも大きいが)。

 では、ラッキーナインの場合はどうだったのか?

 昨年は前哨戦のセントウルSを59キロ背負って2着と激走。それを受けて、スプリンターズSでは日本の競馬にも慣れ、斤量も2キロ軽くなるということで、相手強化にも関わらずセントウルSより人気になった。が、やはり慣れるより飽きのほうが当然早く、不利をはね除ける力もなく凡走した。

 そして今年だ。陣営は「フレッシュな方が走る」ので、今回は直接スプリンターズSに連れてきたと話していた。

 一年経って、やっと日本競馬のストレス・システムを理解したのは素晴らしいことだ。実際、昨年直接スプリンターズSに出ていたら、連対していた確率は相当に高い。ただ今年の場合、ちょっとしたことだが新たな問題が横たわっていたのである。(次週へつづく)


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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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