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秋華賞にみる鮮度馬アロマティコの取捨

  • 2012年10月24日(水) 18時00分
 格上挑戦馬の取捨について、何度もここで書いてきたわけだが、何頭もいると絞りきれないこともある。例えば、先日の秋華賞だ。

 抜けた人気2頭、ジェンティルドンナとヴィルシーナは力も抜けているし、どちらもローズSに出走して秋1戦している。しかもローズSは少頭数のスローという単調でレベルの低いレースだったので、取り立てて問題にするようなストレスや疲労が残ったとは思えない。

したがって、この2頭は崩れないだろうし、他のストレスがある実績馬が2頭を覆すシーンはほとんど考えることが出来ない。

 ということは、前走条件戦の鮮度がある馬が1頭、3連複に食い込むと考えるのが普通だ。また、人気2頭の比較では精神的にもよりしっかりしたジェンティルドンナが先着するのも、ほぼ確かだろう。

 そこで、断然人気のジェンティルドンナを対抗にし、本命を前走条件戦のアロマティコか、ハワイアンウインドのどっちにするかで悩んだ。

 アロマティコは秋2戦だけで、しかも前走負けているため疲労の心配がないのがいい。また、やや疲労に弱いキングカメハメハ産駒だが、フレッシュなときは馬群を厭わないのも今回の内枠はプラスに働いていい。

 唯一の問題は、ここ数戦スローばかりを経験している点だ。流れが厳しくなるGI前に、トップクラスの馬とのレース経験が少ない条件戦の馬にとって、これはマイナス材料となる。

 ハワイアンウインドの場合は2走前にハイペースを経験しているので、厳しい流れに対する心配がない。心配なのは、前走接戦勝ち後の中2週で、休みなく使われている点だ。こちらの場合は疲れている可能性がある。

 疲れてないが厳しい流れの経験がない馬か、疲れているが経験のある馬か。格上挑戦の馬を狙うときには、よく起きる難しい選択局面だ。

 ハワイアンウインドの場合、反動が出るかどうかは半々。出なければ一気に勝ち負けまで持っていけるが、出れば惨敗だろう。アロマティコは疲れはないので惨敗の心配はないが、厳しい経験がないので好走確率はかなり高いものの、勝ち負けまで持っていく確率はやや落ちる。

 以上の理由からハワイアンウインドを上位に取り、アロマティコはジェンティルドンナに続く3番手、ヴィルシーナをその次で予想したのだ。しかし、ハワイアンウインドは道中掛かってしまい制御が効かなくなって凡走した。

 流れがスローだったので、逆に厳しい経験を近走していたぶん、掛かりやすくなっていたのだ。それに加えて疲れの影響も出た掛かり方だった。疲れると精神的にコントロールしにくくなり、掛かりやすくなる可能性も高まるのだ(精神的にダメージが大きいと掛かりもしなくなるが)。

 逆にアロマティコは内回りのGIとしては異例のスローになったこともあり、唯一最大の不安材料だったスローの経験が多いことが大きなマイナスにならなかった。そのため、当然3着に好走。結果縦目でスプリンターズSに続いて5点目の3連複的中という微妙な形に終わってしまった。

 ただそれでもアロマティコは3着止まりだったように、下級条件からのステップの場合は、鮮度は高いものの、厳しい流れを経験していないと、例え今回が同じスローであっても、なかなか突き抜けないのもまた事実なのである。

 逆に経験豊富な実績馬の場合は、今回のジェンティルドンナのように、前哨戦は緩くて単調なレベルの低いレースのほうが、心身ストレスを受けにくくて有利になるケースが多い。

 これまでのキャリアによって、最適な前哨戦の流れというのは自ずと違うことを覚えておきたい。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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