今年の菊花賞では、4着のベールドインパクトを除いて、予想で取りあげた上位6頭が5着以内を占めた。また天皇賞・秋では4着以内の全馬が予想で6番手以内に取りあげた馬だった。
菊花賞は断然人気のゴールドシップ以外は5、7、10、11番人気と人気薄が上位を独占し、天皇賞・秋では一転、5着以内はすべて5番人気以内の人気馬が占めた。まったく人気馬の結果が違った2レースとも、私が上位に取りあげた馬が、ほとんどそのまま上位を占めたわけだが、これには理由がある。
実はGIにおいてはある程度展開にヤマを張り、その予想と違った極端な展開、ペース(あるいは急激な馬場変化)にならない限り、人気の如何に関わらず走れる状態の馬をピックアップするのは比較的簡単なのだ。
実際、菊花賞では人気薄が上位を占める中、その人気薄のほとんどを予想で高く評価したわけだが、逆に天皇賞・秋では67点以上の上位7頭以外は、菊花賞では多く存在した中間の66点という点数を廃し、すべて切り捨ての65点以下とした。そして、その予想上位7頭中5頭が5着以内を占めた。つまり菊花賞と違って、レース前から人気薄が介在する余地がまったくなかったのが天皇賞・秋だったのだ。
GIで勝ち負けするには、特殊な展開が発生しない限り、特別な生命力が必要になる。そのため、走れる馬のピックアップ作業は比較的容易なのだ。逆にクラスが下がると、特別な生命力が必要なくなるのでピックアップ作業は難解さを増す。ただ、下級条件でも2〜3着でなく「勝つ」ということに関しては、特別な生命力を必要とする。
このために生まれたのが「単勝爆弾」という戦略である。逆に「勝つ馬」というより、「走れる馬」のピックアップが比較的しやすい上級条件では、馬連、あるいは3連複という馬券が面白味を増してくるのだ。
もちろん単勝爆弾でもいいのだが、この秋のGIのように1番人気がいいステップなので切れないときは、単勝爆弾の妙味はガクンと落ちてしまう。では、その走れる状態の馬のピックアップ作業とは、実際にどのようなものなのだろうか? 菊花賞と天皇賞・秋という、まったく人気馬の結果が違った、異なるタイプのレースを通じて考えてみたい。
菊花賞は比較的前に行く馬が多くいたうえに、捲り気味に早めに動きたい馬も多くいた。しかも各馬、これまで経験した最長距離よりも一気に距離が伸びたうえでの18頭立てGIだった。澱みのないペースになった場合、かなり心身にはタフに感じる競馬になることは間違いない。
タフな競馬になれば、何が必要か? 今までのMの解説を思い出せば、自ずと答えは見えてくる。精神的にタフなタイプ、あるいはストレス、蓄積疲労のないタイプだ。または、圧倒的に体力が抜きん出ているか。
ただ最後の選択肢は、ゴールドシップ以外の馬には今までのパフォーマンスから可能性としてゼロに近いことは誰でも容易に想像出来る。となると、精神的にタフな馬か、鮮度の高い馬以外は用なしの競馬になるだろう。またストレスがあるときに、心身ともに自分の限界点上のタフな競馬になると高いパフォーマンスを出せないタイプの種牡馬も怪しい。
例えばディープインパクト産駒。各方面から絶賛されているが、私の評価は初年度産駒から今まで、その根本的な評価はまったく変わっていない。以前から書いているように、ある程度鮮度が高いときにはしぶとい走りをするが、蓄積ストレスで疲れているときにタフな流れになると、パフォーンスが落ちるタイプなのだ。
これはM的な心身傾向になる。
また一般的な血統論が善しとする絶対的な身体特徴からは、速い上がりの競馬に強く、上がりが掛かる消耗戦に弱点がある。これはこの間発売した『血統辞典』の「高速上がり指数」を見ていただければ一目瞭然だろう。
もちろん、私はディープインパクト産駒が強いとか、弱いとかいう話をしているのではない。Mの血統論は、血統の強弱を語ることが、少なくとも馬券においてはほとんど意味が無いことを何度も実際のレースで証明している。
問題は前走との相対関係の中で、各血統がどのように行動するか、さらに具体的に言えばどのような着順になるのか、ただそれだけである。もとより、ディープインパクト産駒の基礎能力が低いわけがないのは、別に血統評論家に解説されるまでもないことで、みなさん重々ご存じのことだろう。
私は菊花賞では、ディープインパクト産駒の2番人気マウントシャスタを7番手に評価、3番人気ロードアクレイムは13番手に評価と、完全に評価を下げ、6頭もいたディープインパクト産駒で4番手以内に評価した馬は1頭もいなかった。最高は12番人気で7着したダノンジェラートの5番手評価である。
結果、4着のベールドインパクトが最高で、6頭もいたディープインパクト産駒は、すべて馬券圏外に消えたのだった。(来週につづく)
※文中の「点数」は、今井氏の予想サイトなどで使用している、馬の評価方法によるものです(編集部)
大穴血統辞典2013-2014
競馬王新書054『ポケット版 大穴血統辞典2013-2014 反動編』は、10月20日(土)発売です!!
今作は、シリーズ最多100頭の父&母父の最新データ、激走後の反動力を見る新指数「衝撃指数」、激走の仕組みや狙い方を血統が苦手な人にも使えるように書き下ろした「ショックの全貌」など、著者・今井氏の理論の集大成ともいうべき一冊になっています。進化を続ける血統辞典を片手に、驚愕の大穴馬券を狙い撃ちしてください!!
※正誤表が
競馬王ブログに掲載されています。