最後はブービーの15番人気だったマイネオーチャード。何度も解説している相手が強くなるとしぶといステイゴールド産駒だ。それが前走格下の1000万からの出走というのだから、鮮度も高く、相手強化も甚だしいので飛びつきたくなる。
ただ、再三書いているように、ステイゴールド産駒はしぶとさが売りで、果たして外回りの外枠という淡泊な条件でしぶとさが発揮されるのか?というと微妙な条件設定だ。
そこで66点にして、同点だと人気の無い馬が上位という評価形態を取っている為、7番手の評価で予想した。
4頭の結果は、条件戦の中で一番評価したピクシープリンセスが、プラス体重、スロー、外枠有利の馬場という3つの不利が当日発生しながらも、最速上がりで3着。
雨で予想以上にタフな流れだったことと、外枠有利の馬場にも嵌まり、外枠が懸念された15番人気のマイネオーチャードは4着に好走。
ラシンティランテは、想定以上のタフなレース質に嫌気が差して8着。
マイネジャンヌは当日重まで悪化した馬場で、懸念された重の苦手な部分が荒れて伸びない内枠で助長された為、延長による体力不足が如実に出て15着に終わった。
鮮度とステップ、そして当日の馬場のタフさ具合。この3つの相互作用によって、格上げ戦の鮮度馬の着順も決定されていくのだということが、手に取るように分かる結末だった。
勝ったのは7番人気レインボーダリア。
3走前まで条件戦で、前走4着と軽く負けている。つまり生涯鮮度が高く、直近ストレスも無い。
加えて、タフなレースでしぶとさを発揮するブライアンズタイム産駒。
好走条件はこれでもかと揃っていた。
実際本命にしようかと悩んだが、唯一、そしてそれが致命的になる問題を孕んでいたので、ピクシープリンセスの相手の一頭とした。
その問題とは、マイネオーチャード同様、「外枠」である。
京都外回りという単調な競馬の外枠では、強みであるしぶとさが十二分に活かし切れない可能性が高い。実際、ここ2走も内枠なら、問題なく勝ち負けしていたレースであり、2戦の凡走原因は、外枠だけだった。
だから内枠を引けば、短縮と反動の懸念があったピクシープリンセスを押し退けて、躊躇無く本命にするべき馬である。
当日は、予想以上の雨が降ってかなり重い馬場になった為、重巧者であることはもちろん、同馬のタフさが外枠でも十二分に活かせる条件となった。
またピクシープリンセスを除けば5着以内が全て二桁馬番だったように、苦手な外枠自体が逆に物理的には優位な馬場になった為、唯一最大の不安だった「外枠でしぶとさが活きない」という問題は、これで完全に払拭された。
結果、荒れたエリザベス女王杯も、私の取りあげた上位5頭中3頭が3着以内を占め、また4着の15番人気マイネオーチャードも含めると、予想上位7頭中4頭が4着以内を占めるという、だいたい想定された通りの結末に終わったのだった。
ところで、鮮度馬の取捨問題と同時に、このエリザベス女王杯で注意すべき点がもう1つあった。
断然人気のヴィルシーナがレインボーダリアに負けたことである。
確かにレインボーダリアは古馬にしては重賞経験が少ないので生涯鮮度がまだ高く、またここ2走は適度に負けていた為に直近ストレスからも解放されていた。さらには、道悪巧者で、当日の想像以上の雨量が大きく味方していた。
ただヴィルシーナは今回が初古馬戦で、生涯鮮度はレインボーダリアとほぼイーブンか、若干ヴィルシーナの方が上回っていた。
休み明けから短期間で2戦連続連対している直近の頑張りは気になるが、まだ3歳なら動けないほどの致命的な疲れは残ってないだろうし、メンバーが替わるのでストレスもそれほどない。
そういうクリアな心身状況なら、直近は凡走しているより好走している方がもちろん有利だ。
同じストレス状態で、勢いのある馬と、凡走している馬では、勢いのある馬の方が有利なのは当たり前の話である。
競馬で一番有利なのが勢いがあって、かつストレスの無い馬なのだが、そういう条件を満たすケースは希であり、それが今回のヴィルシーナだったのだ。しかも、3歳だから斤量も2キロ軽い。
それでも負けてしまった。
理由は、予報以上のかなりの雨量になり、相当にタフな馬場になったことに尽きるのだが、それは重の巧拙という単純な物理的な問題以上に、もっと意味のある問題を提起している。
再三ここで書いてきた、ディープインパクト産駒の本質に関する問題だ。
疲れがあるところに、レース摩擦が強すぎると、一押しを欠きやすいという性質である。
ただし、今回の場合は、Mの血統論ではSC系という、現況では少なくなったチャンピオン系のブライアンズタイム産駒が菊花賞同様にいたことも大きかった。
あるいは、これまでのGIでは、C系のステイゴールド産駒にディープインパクト産駒がやられるシーンも多かった。
タフで混戦のレース質になれば強さを発揮するSC系、ないしC系が出ていなければ、ディープインパクト産駒が相対的な強さを見せて、勝つ確率が上がるのは確かだろう。
ただそれにしても、雨などで臨戦過程からその馬にとってタフなレース質になったとき、疲れがあるディープインパクト産駒の単勝は、あまり期待値が高くないということ。
そのことを再確認出来たレースだったのも、また確かである。
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※正誤表が
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