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ジャパンCとマイルCSから見えたディープインパクト産駒の狙い時

  • 2012年11月28日(水) 18時00分
 ジャパンCではこの連載の読者なら、ジェンティルドンナを本命にした人が多かったはずだ。もちろん私も本命に予想して当てることが出来た。

 再三書いているように、古馬初戦というのは鮮度が抜群に高く有利だ。そういう理由で天皇賞・秋ではフェノーメノを本命にしたわけで、今回は当然ジェンティルドンナの番である。

 レース前には、過去にウオッカを始め、3歳牝馬がジャパンCを優勝していないことが言われていたが、ウオッカは取消明けだったし、3着だったレッドディザイアや2着だったファビラスラフインは、国内の2400m前後の牡牝混合戦では、そもそもGIIクラスの馬で、GIだと5着程度のレベルだった。実際ファビラスラフインが2着に来たのも、鮮度が高かったからでしかなく、ジャパンC2着後の有馬記念では初古馬戦激走の反動も加わり10着に沈んでいる。

 もし、ジェンティルドンナがエリザベス女王杯を挟んでいたら、おそらくジャパンCは5着前後だったろう。そう考えると、フェノーメノも天皇賞・秋を使わずにジャパンCに直行していたら連対していたかもしれない。

 また、前回話したようにディープインパクト産駒は疲れているときのタフな競馬で一番パフォーマンスが落ちるため、今回レース間隔を空けて心身がフレッシュな状態で初古馬戦に臨んだことや、パンパンの高速馬場はまたとないシチュエーションであった。ここで勝たなければ話にならない。だからこそ、本命に予想したのである。

 このジャパンCでのジェンティルドンナ本命の伏線として、実は前週のマイルCSがあった。この秋のGIで、一応買い目評価の67点以上の馬で馬券圏内を占めたとはいえ、唯一予想が狂ってしまったレースだ。

 私は雨が上がる予報だったので、軽い京都らしくディープインパクト産駒得意の摩擦のない高速レースになると読んで、凡走後でストレスがなく、また人気薄だったこともあり、ダノンシャークを本命に予想していた。

 ところが、当日は思いのほか重たい馬場での消耗戦になった。そのため、5頭もいたディープインパクト産駒では、短縮で体力補完をしていたドナウブルーがかろうじて3着に入っただけに終わった。

 例年よりタフなレース質になったので、短縮のサダムパテックが優勝。同馬はC系フジキセキ産駒である。ダノンシャークは先週話したようにタフなレース質になった場合は、C系やチャンピオン系に脚元をすくわれやすいという、ディープインパクト産駒の負けパターンを如実に示した形で終わったのだ。そして2着も、C要素があるサクラバクシンオー産駒のグランプリボスだった。

 この結果を受けて、「秋のGIはディープインパクト産駒以外が狙いだぞ!」とはならないのがMの面白さだ。Mの血統論は、何が強いとか、そういうことを議論するものではない。

 ディープインパクト産駒が「疲れているときにタフなレース質となった場合、C要素が強い、いい馬に脚元をすくわれやすい血統」と分かると、むしろ逆説的にディープインパクト産駒のプラス要素が強調される。つまり鮮度の高いときに軽いレース質になったら相当に強いということだ。

 これだけ産駒が活躍しているのに、各馬に疲れがあり、またタフなレース質になった秋のGIでは、取りこぼしが増えている。ということは、疲れが少なく、軽いレース質になった場合、相対的にかなり強くないと、血統地図のバランスが取れなくなるのだ。

 だからこそ、初古馬戦で鮮度が高く、高速馬場になる今回のジェンティルドンナは、相手がオルフェーヴルだろうが何だろうが、勝つ可能性は相当に高かった。馬は絶対的な何か以上に、相対性の中で走るのであり、それは記憶の相対性であり、あるいは性質の相対性である。だからこそ、ディープインパクト産駒のジェンティルドンナが本命になったのだ。
 
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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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