福山競馬が廃止の方向に進んでいる。単年度黒字の見通しが立たなければ廃止という当初からの方針にしたがい、市長によって廃止の意向が伝えられた。廃止を覆すには、確実に赤字を解消できるような劇的な予算の組み替えか、または有志による赤字補てんなどのウルトラCでもない限り難しいかもしれない。
それを考えると、さまざまに状況は異なるものの、一度はほとんど廃止という方針が示されてからそれを覆して競馬が続いている、高知、笠松、ばんえい、岩手などは奇跡といえるかもしれない。
福山競馬が廃止となると、市(町村)が主体となっている地方競馬の主催者は、ばんえい競馬が唯一となる。それにしても4市での開催から帯広単独開催として存続するときに、民間への業務委託が行われた。そのほかの主催者は、道や県レベル(大井は23区)が主体となっている。また金沢では年間21開催のうち18開催が県営で、3開催が市営で行われているという例はある。
もはや競馬の開催は、市町村レベルが主催するには財政的なリスクが大きすぎるものになってしまっているのかもしれない。近年廃止された競馬場では、上山、益田、荒尾、中津が市の主催だった。
ちょっと特殊なのが笠松で、主催者である岐阜県地方競馬組合は、かつては岐阜県を筆頭に、競馬場がある笠松町、岐南町とで構成されていた。しかし05年度に廃止の方針が示されたときに、笠松町と岐南町が開催継続の意向を示したことから、以降はその2町が主体となり、県は一歩引いた形でかかわるようになったと記憶している。
また岩手では、県が廃止の意向を示したときに、競馬組合の構成団体である奥州市が市単独でも継続の意向を示したことがあった。赤字ではあっても、雇用や税収などの面で競馬という一大産業がなくなることのほうがダメージが大きいと考えたのだろう。
そうした競馬主催者と直接の雇用関係にあるわけではない厩舎関係者は、廃止かどうかとなったときに本当に立場が弱いものだと思い知らされる。「今以上に経費を切り詰めてもいいから続けさせてほしい」というやり方もあるかもしれないが、それもギリギリのところまでいって立ち行かなくなったときに補償金などの問題に影響が出てこないとも限らず、それを考えると引き際も難しい。