芝のレースは最近十数年のあいだに、コース・距離を問わず、ほとんどの「レコード記録」が塗り替えられている。
めったに使用されない特殊な距離を別にすると、古いレコードで現在も残っているのは、1988年に樹立された函館芝2000mの1分57秒8(サッカーボーイ)ぐらいなものである。
この中山3600mのステイヤーズSのレコードは、1994年に記録されたエアダブリン(父トニービン、母ダンシングキイ)の3分41秒6(内回り2周になったのは1979年からのこと)。エアダブリンの記録にもっとも接近したのは2001年のエリモブライアン(父ブライアンズタイム)の3分43秒3。
最近10年では3分43秒4の記録が2回あるが、ステイヤーズSだけはレコードが更新されない距離になっている。
芝の高速化は進んでいるから、こういう距離だと春の天皇賞3200mのようにもっと速いタイムが連続して不思議ないが、これはスタミナ型がどんどん少なくなっていること。また、スローペースが多くなったことに関係している。エアダブリンの年は、前半の1800m通過1分49秒1だったが、最近ではもっとも速い3分43秒4が記録された2010年のそれは1分52秒1である。
3600mだからスタミナがなくてはとてもこなせない距離だが、うまく前半なだめて前半を1分54〜55秒前後の流れに乗っていくと、ステイヤーがいた当時よりは、ごまかしの利く距離になっているといえる。
今年のメンバーには、もう今回が6回目の挑戦になる10歳トウカイトリック、4回目の出走になるフォゲッタブル、3度目の挑戦になる9歳ネヴァブション、7歳メイショウクオリアを筆頭に、ステイヤーズSが初めてではない馬が計7頭もいる。最高の持ち時計を持っているのは、9歳ネヴァブションの3分43秒7(2010年に3着した際)である。
初めて挑戦するうちの人気馬、デスペラード、ケイアイドウソジン、メイショウウズシオは、そう厳しいペースを作るタイプではないから、推定勝ちタイムは「3分45秒0」前後か。これはマイネルキッツが6歳時の天皇賞・春3200mで記録した3分14秒4に、約30秒を足したタイム(ふつうの距離の400m延長だと25秒程度)である。
あまりスタミナ能力にこだわる必要はないだろう。短距離タイプが挑戦してきているわけではないから、デキの良さがあれば、2500m前後の重賞で勝ち負けできる能力があれば、十分に勝ち負けできると考えたい。
不確定要素のかたまりのような未知の上がり馬デスペラード(父ネオユニヴァース)に期待したい。ダート1900mで、ジャパンCダートに出走しているソリタリーキングと0秒2差の1分56秒6が、ある程度のスタミナ能力を示す程度で、たった3回しか出走していない芝では1800mに1分48秒台が2回あるだけ。
心もとないといえば心もとないが、上昇中の4歳馬らしくデキの良さならピカイチ。ネオユニヴァース産駒で、渋い母方に配されてきた種牡馬は、トニービン、ブライアンズタイム、ノーザンダンサー、ヒズマジェスティ…。スタミナと底力は十分あると思える。
評価は大きく分かれるだろうが、決してレベルが高いとはいえない、現在ではGIII(良くてGII)級の組み合わせ。今のデキの良さで対応できると考えたい。3分51秒3で3年前に勝っているフォゲッタブル(この中間の動きは非常にいい)。上積みの大きそうな5歳メイショウウズシオ。この相手ならのトウカイトリック、マイネルキッツ、ケイアイドウソジン。大穴には、陣営は弱気だが、中山2500mを2分33秒3(57キロ)で乗り切ったことのあるサイモントルナーレ(父ゴールドアリュール)を加えたい。