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netkeiba

ハーツクライ産駒分析 1番人気コレクターアイテムが来なかった理由

  • 2012年12月12日(水) 18時00分
 GI特別企画の中休みということもあり、久しぶりに個別血統の解説をしようと思う。今回はハーツクライ産駒だ。過去にも何度か解説したが、産駒も増えてデータが揃ってきたので、改めて分析してみたい。

 ハーツクライ産駒は戦う意欲はそれなりに強いが、精神コントロールが難しく、先行したり、追い込んだり、捲ったりという極端な競馬になりやすい。ウインバリアシオンが追い込んだり、ギュスターヴクライが捲ったりしているのも、そのためで、気持ちを何とか抑えて一気にどこかで爆発させるような競馬が向いている。

 逆に、脚を小出しに使うような器用な好位差しの競馬はあまり向かない。また、加速したら持続的に加速させないと駄目なタイプが多く、どこかでブレーキを掛けるような競馬だと嫌気が差しやすい。

 昨年のジャパンCのとき、ウインバリアシオンが大捲りの雑な競馬で5着したのも同じ理由だ。負けて強しの競馬に見えるが何のことはない、ああいう一気に脚を使わせる競馬が一番向くということに過ぎない。それをよく理解して乗った、安藤勝のファインプレーだった。

 阪神JFで1番人気になったコレクターアイテムも同じようなタイプだ。先週書いたように、牝馬のほうがややしぶといが、本質的な部分はだいたい同じである。牝馬のぶん、やや器用な追い込みは出来るが、本質が一本調子な追い込みであることは変わらないのだ。

 先週解説したように、凡走後でストレスが無かったアルテミスSでは内枠でも良かったが、ストレス時の阪神JF、18頭立ての内枠を引いてしまっては、ゴチャついて一本調子に加速して追い込む競馬が出来ない可能性が高まる。それで6番手評価に下げた。実際レースでは内が伸びる内差し競馬という、内の差し馬には物理的に絶対有利な展開になったのにも関わらず、4着に沈んでしまったわけだ。

 内枠以外にも、コレクターアイテムが断然人気としては期待値が低かったポイントがあった。それは、これも先週話したように、疲労耐久力の低さである。疲労耐久力47のハーツクライ産駒が、重賞を2戦して、前哨戦を1着した状態では、疲労が出ない確率のほうが低いと考えられる。

 実際、ハーツクライ産駒がGIいまいち勝ちきれない理由は、この2つの理由によるところが大きい。

 例えば今年の天皇賞・春でのウインバリアシオンは、前哨戦の日経賞で2着に好走した後の疲労と、18頭立ての多頭数でスムーズに追い込めなかったことが原因で、2番人気3着と勝ちきれないで終わった。この天皇賞・春にはギュスターヴクライも出ていたが、やはり前哨戦の阪神大賞典1着後に4番人気5着と期待を裏切っている。

「前哨戦の疲れ」+「前走よりスムーズに加速出来ない」という2つの条件が重なりやすいGIにおいては、取りこぼす比率がどうしても高くなる種牡馬だといえるだろう。

 今年の天皇賞・秋におけるジャスタウェイも、前哨戦の毎日王冠を最速上がりで2着した後の疲労と、フルゲートGIで前走のような思い通りの加速が出来なかったことが響いて6着に凡走している。

 したがって、GIで高いパフォーマンスを出すには、前哨戦で力を出し切れなかったり、トライアルを使わなかったり、裏路線だったり、疲れが残りにくい条件がベターになる。それに加えて、前走よりスムーズに加速しやすい条件が揃えば、一気に有利になるだろう。

 なお、ウインバリアシオン、ギュスターヴクライが長距離のトップクラスで活躍したのは、この「一気に加速する」という性質が大きく影響している。長距離戦のほうが自分のペースを守って一気に加速したり、捲ったりをスムーズにしやすいというのがその理由だ。

 それに加えてスタミナがあり、また高速上がり指数が54と高いように瞬発力勝負の適性も高いため、流れの落ち着く長距離戦で最大限のパフォーマンスを出しやすいのだ。

 だからといって、ハーツクライ産駒が長距離に距離的なピークがあるというわけではない。M的なピークが存在するだけであり、それを解消する条件さえ揃えば、中距離でも同じようなパフォーマンスを出せることも、頭には入れておいていただきたい。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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