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[秋のGI特別企画]有馬記念展望&阪神JF&朝日杯FS回顧

  • 2012年12月19日(水) 18時00分
 大好評企画、今井雅宏氏本人による「GI回顧&展望」を特別公開! 第2回の今回は年末の総決算・有馬記念編。その前に、先に行われた朝日杯FS&阪神JFのおさらい編もお届け。グランプリで必勝を期すためにも必見ですよ!

◆まずは阪神JF&朝日杯FS、2歳GIのおさらいから
担当編集(以下、編) 朝日杯FSはローエングリン産駒が1・3着でした。

今井(以下、今)) 僕はコディーノを本命にしたんだよ。

 ええ!? 珍しいですね、1番人気を本命にしたんですか?

 他の馬に危ない要素がありすぎて、本命にしたい馬がまったく見つからなかったんだよね。どれを本命にしても、どうも誠実さを欠くような気がしたんだ。

 まぁ、今回も連対はしてますから。今井さんがGIで1番人気を本命にすると、さすがに連は外しませんよね〜。前回、コディーノについては「理想は3〜4枠で前走より少し疲れがあるから、あまり流れに入らず溜めるくらいのほうがいい」とお聞きしました。

 枠は良かったけど、勝負どころで先頭まで行こうとしたでしょう?

 まずかったですか?

 少し疲れがある馬は流れに入るとよくないからね。あの仕掛けだと3着だよなぁ〜と4角では諦めて見てたけど、まぁ他も弱かったから、連対は出来て良かったよ。横山典らしくもう少し溜められると思ったけどね。そうすれば疲れの影響を抑えられるから、楽勝だったはず。

 勝ったロゴタイプについても解説してもらってましたね。「一本調子に加速したいタイプで、上がりは多少かかるけど前残りといった競馬が向き、ブレーキをかける場面があると厳しい」ということでした。それから、タイプ的にはエーシントップと似ているけど、ロゴタイプのほうが前走500万の鮮度があるということも教えてもらいました。

 今回は理想的な上がりのかかるパワーレースになって、外枠でブレーキをかける必要もなかったから。

 外枠はマイナスかと思ってましたが、ロゴタイプにはかえってそれがよかったんだぁ。

 僕もそもそも外枠は間に合わないレースになると思ってたから、外枠っていう時点で評価を下げちゃったけど。やっぱり朝日杯FSは内枠が有利だからさ。同じローエングリンで、前走も500万と、まったく同じようなステップだったゴットフリートのほうを、内枠という理由で対抗にしちゃったんだ。お陰でワイドの1点目になっちゃったよ。

 内外の枠の違いで、同じステップ、同じ血統の2頭のうち、ゴットフリートのほうを取ったわけですね。

 終わってみれば、例え物理的に不利な枠でもローエングリン産駒は、小回りのハイペースの場合、外枠のほうが揉まれずスムーズに流れに乗れて、ブレーキをかけずに走れるということだった。分かってはいることだけど、朝日杯FSの外枠不利を覆すほど、ローエングリンにとっては外枠のほうがいいとまでは思わなかったね〜。ゴットフリートは内のぶん、スムーズさを欠いて3着だったろう? 枠が逆ならローエングリン2頭の着順は入れ替わってたということだよ。4着馬フラムドグロワールが3番手評価で、ロゴタイプがいなければ、3連単も順番通りに決まっていただけに、ローエングリン産駒の枠順問題、スムーズさの重要性を、嫌というほど再認識させられたね。

 ロゴタイプと似たタイプだった、2番人気のエーシントップは8着でした。

 エーシントップは枠的にブレーキをかける競馬になっちゃったし、ストレスもあったから、そんなもんだろう。

 私は前回、穴なら前走1400組と聞いたので、コディーノと同じキンカメのラブリーデイを本命にしました。

 ラブリーデイも前走重賞好走のストレスがあるキンカメだよ。同じストレスがあるなら延長よりも短縮のほうがキングカメハメハ産駒はいいから、ラブリーデイがコディーノに先着するのは、論理的にはあり得ないよ。

 たしかに『大穴血統辞典』では疲労耐久指数「43」ですもんね。そういえば、ローエングリンは自分のペースで淡々と走るL系で外枠は向くんでしたね! つまり、今回はコース的な枠の有利不利より、ローエングリンの好走パターンにハマったということか〜。阪神JFも少しだけ回顧していただけますか?

 先週のコラムでも書いたけど、ハーツクライ産駒は断然人気でも、疲れのあったコレクターアイテムより、新馬1戦のレッドセシリアが先着した。ハーツクライは3割くらいの力差でもないと疲れていないほうが先着するってことだよ。経験より鮮度を取ったほうがいい。だから、新馬1戦のオツウを本命にしようと思ってたけど、抽選にずれちゃったから、その時点で何がきてもおかしくない、低レベルのレースになった。

 レッドセシリアが3着なら、オツウも上位にきていたかもしれませんね。

 コレクターアイテムより4割くらい弱い馬でない限り、疲れてるコレクターアイテムが4着に来られるレースなら、ステップ的に鮮度から連対してた可能性は高いよ。いずれにしろ、コレクターアイテムの断然人気は危なかった。

 前回聞いた理想の流れは「流れは速くないけど高速上がりの差し競馬という、体力を使わない消耗戦でない淡々とした流れ」でしたね。

 ペースが速くなったから疲れの影響が出ちゃったわけだ。これだけ走れる馬がいないと、当日の馬場で順番は決まるからね。内枠有利だったぶん、1着馬が勝ったという感じだった。

◆有馬記念展望
 今年も有馬記念がやってきました。昨年のこの企画ではオルフェーヴルの死角も聞きましたが、今井さんは結局オルフェーヴル本命だったんですよね。今年も出走すれば人気になっていたでしょうが回避、さらにジェンティルドンナもトーセンジョーダンもフェノーメノもいなくなってしまいました。というわけで、今年の有馬記念はゴールドシップが人気になりそうです。

 参ったなぁ。オルフェーヴルよりも鮮度の高いゴールドシップを本命にしようと思っていたんだ。強い相手にしぶといタイプだからさ。でも、オルフェーヴルがいなくなって1番人気になっちゃうようでは困る。相手が弱くなって人気になるほど、C系にとって面白くないものはない。

 『大穴血統辞典』ではおなじみのC系のステイゴールド産駒ですもんね。ステイゴールドの解説には「混戦に強く、強い相手にも怯まないが、そのぶん弱い相手に強いわけでもなく人気では危うさも」とあります。

 強い相手がいなくなっちゃうんでは、困っちゃったね〜。

 となると、逆転候補は…。ジャパンC3着のルーラーシップはどうでしょう? 競馬王1月号の付録「競馬収支ノート」で久々に『予想着順』をやっていただきましたが、そこではあまり期待度が高くないですね。キングカメハメハは2歳GI回顧にもあるように、『大穴血統辞典』の疲労耐久指数が「43」で、芝では欠点が少ないけれど疲労には注意すべき種牡馬ですよね。

 キングカメハメハは量もあってまとまっていて破綻は少ないんだけど、疲れやすい。ルーラーシップはすでに秋2戦しているから、若干の疲れはある。ただ、天皇賞もジャパンCも3着で、人気より着順が下で力を出し切っていないから、致命的な疲れではないよ。それに、精神的に安定しているのも特徴だから、弱い相手には着順の変動が少ない。C系と違って、どちらかというと弱い相手に強いタイプだから。つまり、ステイゴールド産駒と違って、有力馬回避は相対的にこのタイプには朗報だ。

 理想の枠はありますか?

 疲れが出ないためには、真ん中あたりの4・5枠かな。そしてあまり強気に動きすぎないこと。

 コディーノと同じですね。

 激しい流れを強気に動くと、疲れのぶん最後の詰めを欠きやすい。だから、疲れの影響が出にくい競馬をするのがいい。コディーノはそれでも2歳だから連対できたけど、もうルーラーシップはベテランだからね。もっと疲れは応えるよ。

 具体的な流れの理想は?

 ある程度溜めたほうがいいし被されるのもよくないから、馬群の中に入らず外がスムーズに伸びる馬場で中団外めくらいを流れに乗って伸びてきたい。

 内を突いたらダメですか?

 内が伸びるとそこに密集しちゃうからね。緩い流れならそれでも良いけど、理想はやや外よりだ。馬場自体も重くないほうがいいぞ。疲れの影響が出やすくなるから。軽いレースが理想的だ。

 あとは、この馬の最大の課題でもある出遅れでしょうか。

 例年のレベルだと疲れがあって3・4着ぐらいのステップだけど、今年は相手が落ちているからね。自分がどうかよりも相手次第のタイプだからさ。

 前走ジャパンC組では、天皇賞・秋で復活したエイシンフラッシュはどうですか? 昨年の有馬記念2着ですが、今年は昨年よりも1戦多く有馬記念が秋4戦目です。

 疲れがあると馬群を割れないタイプだから、前走は天皇賞・秋で激走したあとの中枠で疲れが出たのは仕方ない。

 となると、今回は前走よりは期待できるのかな…。昨年のここでも好走パターンをお聞きして、ずばりその通りになって好走しましたが、今年の理想の枠や流れは?

 昨年とやっぱり似ている。今回はストレスが少ないから馬群は割れるけど、速すぎる流れだと秋4戦目という蓄積疲労が出てしまう。だから、内目の枠でやや緩めの流れ、それほど速くないけど差しが決まるような競馬になるのが理想だ。

 昨年はこの理想条件に合うレースになって、見事儲かったわけですから期待しちゃいますね(笑)。今年も枠から注目します。ジャパンC組からもう1頭いいですか? ダンスインザダーク産駒のダークシャドウです。

 ダンスインザダークは精神コントロールの難しさが最大の問題だよ。

 飽きやすくて投げ出してしまうダンスインザダークというのは、『大穴血統辞典』ではおなじみの性格ですね。

 ジャパンCは後ろのペースが遅かったから、精神コントロールの難しさが出てしまった。距離延長は体力的には向いているけど、精神コントロールの面ではマイナス。ただ、今回は小回りに変わる部分ではプラス材料だよ。余計なこと考える暇が無いからね。

 そんなダンスインザダークに向く流れとは?

 上がりは速いけど差しが決まるとか、逆にものすごく上がりがかかるとか、レースとしては正反対なんだけど、こういう特殊な条件のほうが勝つという意味でのチャンスは広がるだろう。

 枠の希望はありますか?

 緩めの流れなら、前に壁を作れる内目のほうが精神コントロールしやすい。あとは、前に行く位置取りショックとか、反対に後ろで溜めて一気に捲るとか、とにかくペースも馬場もメリハリがあって極端になるといい。

 外国人ジョッキー騎乗で、位置取りショックは期待できそうな気がしてきました。

 つづいて、ジャパンC以外のステップも教えてください。まず、天皇賞・秋から直行のナカヤマナイト。この馬もゴールドシップと同じステイゴールド産駒ですが、前走はオールカマー好走の疲れですか?

 C系のステイゴールドが間隔を詰めての出走なら、どちらかというと馬体が絞れたほうが良かいけど、前走はプラス2キロだった。つまり、ちょっと反動が出たんだ。オールカマーは激戦だったしね。

 今回もさらに増えていたら危ないですか?

 今回は2か月あけているから、馬体に関しては前回ほど気にする必要もないよ。

 C系ならば、枠はどこでも大丈夫ですか?

 それは内目のほうがいいだろうね。

 揉まれても大丈夫?

 今回に関してはね。この馬にとって2500mは理想距離よりも少し長い。だから、経済コースというか馬群に入ってロスなく回ったほうがいいので、集中力を生かせる内目がベター。それと、前走は極端な上がり勝負だったというのも敗因のひとつだからね。上がりは少しかかったほうがいいよ。道悪もうまいから、馬場が渋れば上がりが掛かってベターだ。

 位置取りは?

 あまり前へ行き過ぎず、好位〜やや後ろくらいだろうね。さっきも言ったようにやや距離が長いから、あまり長く脚を使うとスタミナ的な部分で心配がある。多少溜めるくらいで、馬群の中でうまく集中力をかき立てられるような走りが理想的だ。

 それから、今回がGI初挑戦となるアルゼンチン共和国杯勝ちのルルーシュですが。

 別路線でローテーションとしては理想的といえる。ステイゴールドやキンカメ、ディープとかならば連対の可能性はかなり高いステップだけど…。非L系の種牡馬には、このステップは有利だからね。

 ルルーシュはセンノロブロイ産駒ですね。『大穴血統辞典』では「集中力が希薄で過度に揉まれたり、自分より強すぎる相手はいまいち」ということでした。

 自分より弱い相手に頑張るタイプなんだ。ただ、今回は鮮度があるぶん、その弱点をカバーできる可能性はある。

 理想の流れは?

 あまり激しく揉まれ込むとよくない。理想は、緩めの流れを淡々と揉まれずに前へいって、被されないような競馬。それと前走で馬体が減っていたけど、量系は馬体が増えて気持ちよく競馬をするほうがいいから、そこも注意したいね。

 『大穴血統辞典』の用語解説では、量系は間隔があいても好走できるとなっています。

 だから、今回もレース間隔があいているのはいいよ。

 枠の理想はありますか?

 とくにないよ。それよりもタフな競馬になると嫌気が差すから、緩い流れか、縦長で前がバラけるとか、前一頭が引っ張ってくれるような流れになるといいよ。

 縦長の展開で何か1頭行かせて、2〜3番手で競馬するんですね。

 自身が逃げてもいいよ。揉まれなければいいわけだから。

 逃げるのもアリですか?

 もちろん、それが一番いい。

 それから、菊花賞2着だったブライアンズタイムのスカイディグニティはどうでしょう? 今秋はこの馬とレインボーダリアがGIを盛り上げました。

 スカイディグニティは、セントライト記念では、新潟の1000万条件戦というかなり単調なレースでの弱い相手から、中山GIIのタフな重賞に変わったことで激走した。そして、菊花賞もGIIからGIで相手強化のうえに、勝ち馬が早めに動くというタフなレースになったから好走した。つまり、ブライアンズタイムは相対的に前走よりタフな競馬になれば、それだけチャンスがある。C要素も強い、今では珍しいタイプのS系だから、そういう流れになれば相対的な有利さが出てくる。

 それなら、古馬一線級との初対戦となる今回も、前走よりタフな競馬になるのでは?

 ただ、菊花賞が上がりのかかるタフなレースだったから、行く馬の少ない今回がそれ以上にタフなレースになるかは若干疑問がある。古馬相手の重賞という意味では、前走よりタフに感じる可能性がそれなりにあるし、ブライアンズタイムも疲れやすいから、レース間隔をあけたのもプラス材料ではあるけどね。

 どんな流れになるとタフといえますか?

 そりゃ、超ハイペースの消耗戦になってほしいよ。それか馬場が重くなるとか、菊花賞みたいに道中の出入りが激しくなるとか。

 最後にもう1頭、海外帰りのトレイルブレイザーについても教えてください。

 海外帰りで間隔があいているのはいいよ。それから、ゼンノロブロイだから揉まれるのは向かない。

 ルルーシュと同じですね。しかも、トレイルは昨年のアルゼンチン共和国杯勝ち馬です。

 昨年のジャパンCは11番人気で4着に激走しているけど、これは2走前の条件戦からアルゼンチン共和国杯という裏路線のステップに鮮度があったし、緩い流れを淡々と前へ行けたのもよかった。つまり今回のルルージュのステップに、昨年のジャパンCのステップは酷似していたわけだ。

 今回のステップも間隔があいているのは悪くないんですね。あとはどこをチェックすればいいですか?

 極端に馬体が減っていると体力タイプだけに心配だね。あとはタフな競馬で揉まれ込まないこと。被されるとモロいから、昨年のジャパンCのように淡々と前へ行ける流れが理想だ。それにしても、ステイゴールド産駒とか、ブライアンズタイム産駒とか、穴向きの馬はみんな押し出されて人気になりそうだなあ。

 そうなんです。これという人気薄の注目馬がみつからないんですよねぇ…。

 うーん、ダイユウサクみたいな思わぬ鮮度馬がいるといいんだけどねぇ(笑)。ちょっと古いか。

 それ、ちょっとじゃぁ…。

【12月の本コラムは特別編でお届け!】
有馬記念編はいかがでしたか!? 来週12/26(水)で特別編も最終回。そこで、一年の計は元旦にあり! ということで年明け最初の重賞・東西金杯編をお届けします。どちらも、10月20日に発売された新刊『ポケット版 大穴血統辞典 2013-2014』を使った実践編です! ご期待ください。

大穴血統辞典2013-2014

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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