同日のアメリカJCCも注目レースだが、春のビッグレースに向けて始動する重量級の別定GIIとすると、やや手薄な組み合わせ。人気馬も限られるから、馬券の興味も乏しい。
一方、「東海S」は本来の中京コースに4年ぶりに戻ったと同時に、時期が1月になり、距離は1800mの左回り。これまでの「平安S」より2月のGI「フェブラリーS」の前哨戦らしくなった。まだまだこれから、層の厚いダート界のトップグループに出世してきそうな、成長株もいる。注目度はこちらの方が上だろう。6歳グランドシチーの本格化、もうひと回りのスケールアップに期待したい。
なんとなく地味なタイプとあって、4歳秋に1000万条件に上がって以降、1番人気になったことは一度もない(12戦)。
だが、少しずつパワーアップし、5歳時からオープンで強敵相手と対戦するようになり、オープンのペースに慣れた5歳春のブリリアントS以降は[2−3−1−0]。差し一手とあってちょっと勝ち味には遅いものの、まず崩れない馬になっている。
馬場に出てくると、いつもゴソゴソ見せて買い控えたくなる歩様を見せることが多いが、ここ2戦はそれほどひどくはなく、500キロを切るようになった馬体は、ひところよりずっとシャープに映る。前走、今回も対戦する4歳ホッコータルマエを、上がり3ハロンで1秒も上回る37秒7。数字以上の完勝だった。川崎記念(1月30日)に出走すると、魅力的なGIではあるが、2月17日のフェブラリーSとの間隔が中1週になってしまうため、大目標のフェブラリーSに万全の状態で出走するには、この東海Sの方がいいと判断したと伝えられる。
父キングカメハメハは、昨12年、11年と連続して全日本の「ダート種牡馬」ランキング1位。そしてそれを陰でささえる形になる母の父ブライアンズタイムは、産駒が4歳になった1994年以降、これまでに「7回」も日本のダート・チャンピオンサイアーに輝いている。
新ダート王キングカメハメハと、元王者ブライアンズタイムの血の結集が、グランドシチーの誇れる長所である。
ファミリーは、73年のオークス馬タケフブキに、現在その全盛期を迎えたヘイルトゥリーズン直仔のパーソナリティ(初期の産駒)を配合したのが、祖母にあたるタケバンザイ。そこにブライアンズタイムを意識的に配合したので、グランドシチーの母になるレディクラシックは、時代を先取りした血を秘めるようにヘイルトゥリーズンの[3×3]。
そこに配されたのが若い現代のダートチャンピオンのキングカメハメハ。スピード系ではないように見えるが、ダート1700mに1分42秒9、1000万当時にダート1400mに1分23秒9があるから、もうひと回りスケールアップするなら、決してパワーだけを前面に出すダート巧者ではないオープン馬に育って不思議ない。
中京のダートは追い込みが決まり、ゴール寸前で変わるケースが多い。グランドシチーの相手本線は、タフな牝馬ミラクルレジェンド(ローマンレジェンドの半姉)。
牡馬相手のオープンではちょっと足りない印象はあるが、川崎、船橋、新潟など左回りダートは[5−0−2−1]。1800mに1分49秒6(大井)があるから、差し馬向きの展開になるとみれば逆転もある。
4歳ホッコータルマエ、良化(復活)著しいグレープブランデー、サイレントメロディが相手。波乱の可能性十分とみて、ハートビートソング、オースミイチバン(ユニコーンSは強かった)。バックトゥジエースも少し買いたい。