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共同通信杯

  • 2013年02月11日(月) 18時00分
 牡馬クラシックロードに新星が登場した。完勝したメイケイペガスター(父フジキセキ)の勝ち時計は1分46秒0。これまでのレースレコードは2009年のブレイクランアウト(2着はトーセンジョーダン)の1分47秒3なので、一気に1秒3もの短縮である。前週の東京新聞杯1600mが1分32秒9。その日の3歳未勝利戦1800mでも1分47秒1が記録された高速の芝コンディションでもあり、時計が速ければいいというものではないが、レース全体の流れは「48秒1−(12秒1)−45秒8」。3歳馬の重賞とすれば平均ペースに近い前半1000m60秒2から、後半の猛加速だった。

 引っ張られたものではない。サッと2〜3番手につけて自分からスパートして抜け出し、自身の最後は「11秒1−11秒2−11秒5」=33秒8。ギリギリしのいだという内容ではなかった。昨年、ゴールドシップが先行して抜け出したレースは、非常にゆるい流れで「50秒1−(12秒5)−45秒7」=1分48秒3であり、ゴールドシップ自身の後半は「10秒9−11秒0−11秒4」=33秒3だった。逃げて粘って2着のディープブリランテが上がり33秒9。

 今年、前半のペースがスローの昨年より1000m通過地点で「2秒4」も速かったことを考えると、こと共同通信杯(東京1800m)の中身に限るなら、メイケイペガスターの示した能力は少なくとも互角、それ以上のランクもあり得るだろう。昨年の共同通信杯のゴールドシップのレーティングは「110」、ディープブリランテのそれは「107」だった。評価がどうなるかにも注目したい。今年、きさらぎ賞のタマモベストプレイ(父は同じフジキセキ)は105である。

 朝日杯FSを1分33秒8で3着しているゴットフリート(父ローエングリン)に1馬身半差。中山2000mに2分01秒台の記録をもつグループや、札幌2歳Sを1分48秒8(従来のレコード更新の2着)のラウンドワールドを完封したから、レースレベルは低くない。

 ここまでの後方からの直線勝負とは一変、先行抜け出しのレース運びは大きな前進を思わせた。土曜の京都「つばき賞」に出走していたら、仮に勝っていたとして収得賞金額は「900万円」。メイケイペガスターは横山典弘騎手を配し、強気に共同通信杯でクラシックを展望して勝ったことにより、収得賞金「2250万円」となった。大手を振ってクラシックに出走できる。陣営の強気の挑戦は大正解だった。このあと、トライアルを必死で戦うロスがない。

 種牡馬フジキセキ(1992年生まれ、21歳)は、2011年、2012年と種牡馬生活を中止しているので、この世代が最後から2年目の産駒になる公算大だが、マイラー系に近いパーソロンは晩年になって、19歳時の種付けで本当の大物シンボリルドルフを送った例もある。

 フジキセキの産駒は、ここまで日本の牡馬クラシック産駒を送っていない。カネヒキリなどを別にするとマイラータイプが多く、メイケイペガスターの場合も、母の父ブライアンズタイムの影響力を考慮しても牝系のスピード系から飛び出せない心配もあるが、のびのびみせる体型や、東京1800mで激変のレース内容は、マイラーにとどまるものではないだろう。

 2着ゴットフリートは、メイケイペガスターをマークする位置から、こちらも上がり3ハロン33秒8を記録して1分46秒2。差せそうもなかったゴール前の脚いろで完敗の内容から、騎乗したW.ビュイック騎手、斉藤調教師ともに「1800mはギリギリか、もしかすると1ハロン長いかもしれない…」。そんなトーンのコメントだったが、レースレベル自体がきわめて高かった可能性がある。マイル路線を視野に入れることになるだろうが、個人的には2000mくらいなら平気と思える。父ローエングリンは、気性面を別にすると、必ずしもマイラー系ではない。

 3着マイネルストラーノ(父ディープインパクト)は、京成杯の失速で強気になれなかったが、この粘り腰は見事。前回は日程変更が応えていたのだろう。すでに7戦、大きな変わり身はなくとも、だいたい人気薄で評価以上のレースをしてくれるのだから、今後も侮れない。芝が良かったとはいえ、先行してこの時期の1分46秒3はたまたまではない。

 問題は、人気で4着のラウンドワールド(父ディープインパクト)。レース前は、この路線で2度もつづけて勝ち負けに加われなかった馬は1歩も2歩も後退するとしたが、坂を上がってやっとエンジンがかかってからのストライドは、実に鋭かった。多くのディープインパクト産駒の快走が京都コースに集中する(この日、京都記念のベールドインパクトなどその典型)ことを考慮すると、勝負どころの反応の鈍さには坂が関係しているかもしれない。皐月賞も、ダービーも坂のあるコースだから、今回の4着止まりも合わせ、春の候補ランキングから後退するかもしれないが、しかし、なぜか本番では怖い気がする。岩田康誠騎手はちょっと注文をつける騎乗スタイルなので、爆発力のない馬には合わないことも珍しくないが、ラウンドワールドは切れはある。今回は出負けも痛かった。東京1800mで上がり33秒6を記録し、1分46秒4で乗り切ったら、ふつうの年の共同通信杯なら大楽勝である。評価下げはやめよう。

 マンボネフュー(父バゴ。伯父に当る母の半兄が、名種牡馬キングマンボ)は、インのもっとも苦しい位置に入って、直線で2度もブレーキを踏む残念なレースだった。収得賞金900万円。この路線では条件戦なら次に巻き返せば済むことが、目標のレース日時が決まっているため、大きなロスとなって響きかねない。だから、サバイバルロード。でも、まだ時間はある。トライアルで巻き返したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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