先週の続きで、ハーツクライ産駒の激走パターンを重賞から見てみよう。
愛知杯ではサンシャインが10番人気で2着に激走。その前走は準OPで6着だった。前走では弱い相手に凡走でまったく疲れがなく、相手強化で好成績という流れは、これまでの激走馬とほとんど変わらない。
このレースには同じ人気薄のハーツクライ産駒ダイワズームも出ていたが、こちらは9着止まり。ダイワズームはここ5戦ずっとオープンで、今回は中1週とレース間隔が詰まっていた。鮮度や疲れの観点から、同じ人気薄のハーツクライ産駒なら、より疲れが無く、相手強化で人気を落としている馬のほうが狙い目な種牡馬だということが分かる。
1月5日の中山金杯では1番人気ジャスタウェイが出ていた。同馬は休み明けなので疲れがあまりない。そういう意味では、ハーツクライ産駒としては比較的狙い頃だった。
ただ、前走はGIの天皇賞・秋。そこで8番人気6着に頑張っている。中9週開けているとは言え、果たしてGI激走の疲れが抜け切れているのか?また、今までの激走パターンと違って相手弱化だ。馬券期待値としてこのパターンはどうなのか?
結論から言えば、疲労の判断が微妙なグレーゾーンの臨戦過程と言えるだろう。結果、1番人気3着。中9週開けていたので崩れてはいないが、ハーツクライ産駒の激走パターンでない馬は、それほど期待値できないという思いを強くさせられる結末だった。
1月13日日経新春杯では、10番人気でカポーティスターが1着に激走。前走が1000万なうえ休み明けだった。再三連載でも触れてきたが、準OPはOPと同等の疲労が残るケースはあるが、さすがに1000万では疲労の心配は皆無に近い。しかも休み明けだ。
疲れがなく、相手強化という、得意のパターンでの激走だった。
1月21日京成杯。ここではフェイムゲームが7番人気で1着に激走。前走未勝利戦で、中4週とレース間隔も詰まっていない。まったく疲れていない状態での相手強化。ハーツクライ産駒の激走のツボを押さえていた。
1月20日AJCCでは、2番人気アドマイヤラクティが3着。人気と着順がほぼ同じ場合は、その種牡馬の特徴というより、単に普通に走ったというだけなので、あまり血統的な深い意味はない場合が多い。
2月9日クイーンCでは、1番人気コレクターアイテムが9着惨敗。1番人気がこれだけ惨敗したのだから、ここにこそ種牡馬の特徴が色濃く出ているはずだ。
そこでさっそく戦績を見てみると、前走がGIの阪神JFで4着に好走。そこから若干間隔が開いたとはいえ、今回は輸送競馬だ。疲れが多少残ったのは否めない。東京マイル重賞のアルテミスSで1着だった馬が、わずか3か月後に、まったく同じ条件の、東京マイル重賞で9着に敗れる。この「まったく同じ条件なのに着順が入れ替わる」という現象。ここにこそ、血統の本質、Mの本質があるのだ。
まったく同じ条件で着順を大きく入れ替える。これは得意な条件を考えるような静的な血統論では分析しきれない点だ。馬は「東京マイル」というような特定の条件以上に、そのときのストレス状態で着順を大きく変えるということを意味している。それが同じ東京マイルで1着から9着という、まったく違う結末の、最大の答えだ。
皮肉なことに、同じハーツクライ産駒では、13番人気スマートルピナスのほうが、6着と先着を果たした。同馬は前走11頭立ての500万を9着という惨敗。もちろん疲労はまったくなかった。1番人気コレクターアイテムとの対比は、まさに見事としか言いようがない。
このほかにも、やや気がかりなレースがあったので、続きをまた今度やっていきたいと思う。
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※正誤表が
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