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フィリーズレビュー

  • 2013年03月11日(月) 18時00分
 3歳牝馬のクラシック路線は、それこそ1戦ごとに有力候補の評価が大きく変化している。難解な乱戦ムードにもつれこんできた。ここまでの主要レースは阪神JF(ローブティサージュ=クロフネサプライズ)を出発に、3歳になってから

・フェアリーS(クラウンロゼ=ウキヨノカゼ)、
・紅梅S(レッドオーヴァル=メイショウマンボ)、
・エルフィンS(トーセンソレイユ=ウインプリメーラ)、
・クイーンC(ウキヨノカゼ=スイートサルサ)、
・チューリップ賞(クロフネサプライズ=ウインプリメーラ)、
・アネモネS(クラウンロゼ=ジーニマジック)、
・フィリーズレビュー(メイショウマンボ=ナンシーシャイン)…と進んできた。

 これら8競走の全連対馬16頭のうち、注目の期待馬(1〜2番人気)として、それなりの結果(1〜2着)を残したのは、紅梅Sを快勝したレッドオーヴァル、エルフィンSのトーセンソレイユ=ウインプリメーラ、アネモネSのクラウンロゼの4頭だけ。ほかはみんな人気薄だった。

 多くのレースは波乱の結果で、中でも有力馬のそろう「阪神JF、クイーンC、チューリップ賞、フィリーズレビュー」では、人気の注目馬(コレクターアイテム、サンブルエミューズ、イリュミナンス、サウンドリアーナなど)が残念な結果に終わり、そのうえ、評価の高まっていたレッドオーヴァル、ローブティサージュは、肝心のチューリップ賞で評価が非常に難しくなってしまった。

 主要レースで頭角を現し、引き続きここまでその評価を保っているのは、

・クロフネサプライズ(阪神JF2着→チューリップ賞1着)
・クラウンロゼ(フェアリーS1着→アネモネS1着)
・メイショウマンボ(紅梅S2着→フィリーズレビュー1着)
・トーセンソレイユ(2戦2勝。エルフィンSから直行の予定)
・ウインプリメーラ(エルフィンS2着→チューリップ賞2着)
・(ウキヨノカゼは体調整わずオークスに目標変更とされる)

 「フィリーズレビュー」1400mを快勝したメイショウマンボ(父スズカマンボ)は、ただ1頭だけ上がり3ハロンを34秒台でまとめた勝ち方が非常に力強かったこと。勝ちタイム1分22秒1「自身の推定前後半は35秒6-(11秒7)-34秒8」は、新阪神コースになった最近7年間で、改修直後で高速の芝だった2007年の1分21秒8(アストンマーチャン)につづき、2番目にあたる速いタイムになること。また、注目馬が次つぎに評価を落としている中、つづけて好走した数少ない馬であることから、本番の最有力候補の1頭に浮上した。

 いかにもメイショウ○○○の馬にふさわしく、父スズカマンボ(12歳)の送り出した初めてのJRA重賞勝ち馬がこのメイショウマンボ。スズカマンボはサンデーサイレンスの後継種牡馬であり、当然、日高では最初は人気種牡馬だったが、交配数は2007年から順に「96、92、71、73、34、41…頭」。しだいに減って、そう評価の高くない種牡馬になりかけていた。

 メイショウサムソンの場合と同じように、ファミリーは決して現代の名牝系とはいいがたいものの、祖母メイショウアヤメ(父ジェイドロバリー、同じ飯田明弘厩舎)は98年のこのレースの2着馬であり、さかのぼる6代母ダイユウ(父ライジングフレーム)は、1965年の牡馬クラシックを(2、2、1着)だったダイコーター(父ヒンドスタン)の半姉。少し古くなりかけてはいても、伝統のクラシックファミリーの出身である。騎乗停止のため今回は乗れなかった武幸四郎騎手に桜花賞では戻ることになるが、4コーナー手前から激しく手が動きながら、それでも馬込みをこじあけてきた今回のようなレースが再現できるなら、チャンス十分だろう。

 2着ナンシーシャイン(父ブラックタキシード)は、小柄ながらタフ。今回は直前入厩にもかかわらず、素晴らしく状態も良かった。前回こそスローで逃げ切ったが、今回の好位差しが本来の戦法。メイショウマンボの父スズカマンボと同様、父ブラックタキシードは、公営のダート戦を別にすると芝では活躍馬の少ないサンデーサイレンスの後継種牡馬である。カギは本番の1600mだろう。ファミリーはヌエボトウショウなどが代表するビバドンナの一族。

 土曜日のアネモネSを制して3戦3勝となったクラウンロゼが、種牡馬ロサード(その父サンデーサイレンス)産駒であるように、今春は(本当はそうではないのに)ちょっとマイナーではないかと思われている種牡馬の産駒が、ランキング上位のディープインパクトやキングカメハメハ産駒に逆転の快打を放つ年かもしれない。

 3着に粘って出走権を確保した外国産馬ティズトレメンダスもまた、日本では直系種牡馬が何度も途切れているインリアリティ系(マンノウォー直系)ティズワンダフルの産駒になる。パワーにあふれている。馬場でも渋ると本番でもちょっと怖い。

 注目のサンブルエミューズは、人気だった阪神JFにつづき、肝心なレースでまた凡走したマイナスは大きい。今度は栗東に滞在することになるが、巻き返せるのだろうか。

 また、サウンドリアーナは、この1400mで強いレースができるなら1600mもこなせるかもしれない。そう思われていたのに、馬体は決して細くはなかったものの、この1400mで伸び悩んでは強気になれない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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