この世代のクラシックにつながる一連の重要なレースは、8〜9月の「新潟2歳S」「札幌2歳S」をスタートに、1600m以上では、「デイリー杯2歳S」-「東京スポーツ杯2歳S」-「朝日杯FS」-「ラジオNIKKEI杯2歳S」。
3歳になって、「シンザン記念」-「京成杯」-「きさらぎ賞」-「共同通信杯」-「アーリントンC」-「弥生賞」-「スプリングS」まで。計13レースが行われた。残るは「毎日杯」。
一連のレースでは、コースや距離、状態やレースの流れ…などが具体的な検討要素であり、なにも振りかぶってクラシックに向けての「将来性や素質」を重視してきたわけではない。また結果も、クラシック候補だけが勝ち負けしてきたわけではない。
今年の3歳馬の路線は、牡馬も牝馬も、次つぎに新星が浮上し、また候補が次つぎに脱落していく難しい展開がつづいている。レースが終了するたびに勢力図は変化した。
だが、3月に入って、最重要とされるトライアルの「弥生賞とスプリングS」が行われ、どのレースがこの世代の大きなカギを握るレースだったのか、それがかなり明確になった。と同時に、今年の「能力比較の基準」になるだろう馬もはっきりしてきた。
最重要と思えるのは、例年とは大きくちがって、「朝日杯FS」だった。
・朝日杯FS 1600m
01着 ロゴタイプ 1分33秒4(札幌2歳4着)→スプリングS1着
02着 コディーノ 1分33秒4(ハナ) (札幌2歳1着、東スポ杯1着)→弥生賞3着
03着 ゴットフリート 1分33秒8→共同通信杯2着
08着 エーシントップ 1分34秒1→シンザン記念1着
09着 クラウンレガーロ 1分34秒1 (デイリー杯2着)→きさらぎ賞5着、若葉2着
朝日杯FSで上位を占めたグループは、ロゴタイプがスプリングSを快勝し、コディーノは弥生賞で3着に負けたとはいえ、脚を計るようなレース運びで「クビ、ハナ」の差だけ。
さらに、クラシックに出走しそうなところでは、クラウンレガーロが、きさらぎ賞を0秒3差の5着したあと、レッドルーラーの勝った「若葉S」を0秒1差の2着している。
これに次の成績を重ね合わせると、もうひとつのカギを握るレースもはっきりする。
・弥生賞 2000m
01着 カミノタサハラ 2分01秒0 ホープフルS3着
02着 ミヤジタイガ 2分01秒0(クビ) 東スポ杯7着 ホープフルS4着
03着 コディーノ 2分01秒0(ハナ) 東スポ杯1着 朝日杯FS2着
04着 エピファネイア 2分01秒0(クビ) ラジオNIKKEI杯1着
05着 キズナ 2分01秒1 ラジオNIKKEI杯3着
06着 へミングウェイ 2分01秒2 シンザン記念2着
10着 バッドボーイ 2分01秒9 東スポ杯5着 ラジオNIKKEI杯2着 きさらぎ賞4着
弥生賞では、最大のカギをにぎる馬と思える朝日杯FS2着のコディーノをはさんで、有力となるだろう候補がみんな並ぶように入線してみせた。
この世代、朝日杯FSと、弥生賞に多くの候補が集中して出走していたのは明らかであり、なおかつ、これから皐月賞の有力馬を絞り込もうと検討するなら、最終的に基準になる馬は、コディーノ(父キングカメハメハ)だろう。短絡な思考であることを承知でいうなら、第一冠の皐月賞では、「コディーノに先着できそうな馬を探す」のが、最良のアプローチである。そう考えてピント外れではないように思える。
この世代の路線重賞は、少々の馬場差は別に、ポイントになるレースのレベルは低くない。
・札幌2歳S 1分48秒5は、レースレコード
・朝日杯FS 1分33秒4は、レースレコードタイ
・弥生賞 2分01秒0(中山)は、史上4位タイ
・スプリングS 1分47秒8(中山)は、史上3位
2週前の弥生賞は非常に優秀な記録であり、こういう速いタイムがたたき出された年は、それが皐月賞に結びつく可能性が高いことを弥生賞の回顧で示したが、スプリングSも同様である。内側が走りにくくなり、明らかに高速の芝コンディションではないのに、また、レースの流れは伏兵がひっぱって速い時計が出るペースではないのに、ロゴタイプ(父ローエングリン)の1分47秒8は歴代3位の優秀なタイムだった。レースの流れは、前半1000m通過「60秒1」のごくふつうの平均ペースから、大半の馬が外に出して、後半「12秒1−12秒3−11秒4−11秒9」=47秒7−35秒6。きわめて優れた内容といえる。後半がしっかりしている。
スプリングS(中山)のレースレコードは、2002年、タニノギムレット(日本ダービー馬)の1分46秒9である。2番目は2005年、ダンスインザモアの1分47秒3。この年の上位馬は皐月賞で結果を残せなかったが、ディープインパクトの年だから仕方がない。
評価一転、ときに逆転のレースが多かった中で、衆目一致の1番人気にこたえてスプリングSを快勝したロゴタイプは強気になれる。あまりテンションを上げないように…のテーマがあったのだろう。調整は見方によっては加減したかのように映るもので、あくまでトライアル仕立て。けっしてギリギリの仕上げではなかった。だが、体つきは素晴らしいバランスに進化している、
1600mで好タイムを残したから、スピード型のマイラーのように思われるが、祖父シングスピールの父系の特徴は、父ローエングリンやムーンバラッドがそうだったように、カーッとなる気性が前面に出てしまうと距離をこなせないものの、もともとは中〜長距離OKの父系であり、2000〜2400mはむしろ歓迎に近い。祖母にスターバレリーナ(その父はセクレタリアト直仔でベルモントSなどのリズンスター)をもつ牝系も、距離延長に不安の大きいファミリーではない。
2着タマモベストプレイ(父フジキセキ)は、坂のあるコースの1800mはギリギリではないかと思えたが、和田竜二騎手の絶妙のコース選択もあって、渋い内容で皐月賞に望みをつないだ。ロゴタイプとの比較では1クラス下の印象はぬぐえないが、近年の大きな傾向として「きさらぎ賞」を勝っているポイントは大きい。
ここへきて盛り返してきた3着マイネルホウオウ(父スズカフェニックス)は、札幌2歳S9着、東京スポーツ杯8着。その当時よりパワーアップは明らかだが、とくに大きな進境を示したかとなると、そうは強気にはなれない。
残る「毎日杯」の組がどの位置に入ってくるかは、脚を余した感の強い弥生賞で小差5着のキズナ(父ディープインパクト)が比較の基準になることはいうまでもない。