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大阪杯

  • 2013年04月01日(月) 18時00分
 5歳の春を迎えた注目のオルフェーヴルが、今年の初戦を多くのファンが納得の好スタートで決めた。十分に期待にこたえて10勝目を記録し、これで通算[10−5−1−2]。総獲得賞金は約12億4千万円となり、歴代5位に進出した。

 この日の早朝、2410mのドバイシーマクラシックに出走したジェンティルドンナは惜しくも2着に敗れたものの、牝馬の初の海外遠征とすれば少しも悲観する内容ではない。もちろんまだ流動的ではあるが、6月23日の「宝塚記念」でオルフェーヴルと再対戦が実現しそうである。当然、そこには4歳のチャンピオン牡馬ゴールドシップ以下も加わる。

 初の海外遠征で手ごたえをつかんだジェンティルドンナも、凱旋門賞挑戦の可能性が高くなったのではないかと伝えられる。ライバルではあっても同じサンデーレーシングの所属馬だから、滞同の遠征に大きな問題はない。今年の4歳以上の古馬のビッグレース路線は春後半から秋にかけ、3歳クラシックを圧倒しかねない最高の盛り上がりが期待できそうである。

 大阪杯2000mは、予測された通り前半は緩いペースで展開したが、1000m通過「61秒5」ならまあスローの許容範囲だろう。折り合いが心配されたオルフェーヴルは、向こう正面に入るまでうまくインに進路を取れたから、ほんの少し行きたがる素振りをみせたくらいでほとんど心配なしの追走になった。むしろ、行きたがっていたのは正攻法のレース運びになったエイシンフラッシュや、流れに乗っているかのように見えたダークシャドウのほうだった。

レースの後半1000mは「57秒5」。上がり4ハロンで刻まれたラップは「11秒6-11秒3-10秒9-11秒5」=45秒3-33秒7の高速フィニッシュである。

 外から進出を開始し、直線に入ると早めに抜け出す形になったオルフェーヴルは、驚くような加速を示したスパートではないように映ったが、自身の後半600mのラップは推定、「10秒9-10秒6-11秒5」=33秒0。苦もなく2ハロン連続して11秒を切る高速ラップをこなしている。全体が速すぎたから目立たなかっただけである。

 気合をつける瞬間と、抜け出すあたりで軽くムチが入ったが、苦しくなった場面ではなかったから斜行しかかる場面も一瞬だけだった。折り合いの不安を出さず、かつ、勝負どころでムチを受け入れたこと。あまりにスムーズなレースを展開させたオルフェーヴルは、妙に穏やかになってしまったのがかえって心配になるほどだった。天才の荒々しさが表面に出なくなったのは物足りない気もするが、一般的にはいいことである。

 ふつうのオープン馬とは異なる状況に置かれることの多い3冠馬が、5歳になって走り続けるのはきわめて珍しいケースである。だからこれまで実を結んだケースはないが、7歳になってもまったく能力減のなかったステイゴールド産駒で、母の父は同じようにタフだったメジロマックイーン。オルフェーヴルのピークは3〜4歳時だったろうとする見方が常識的あり、さらには、さすがに昨年より強くなる可能性は乏しいだろうと考えるのが一般的ではあるが、そんな一般に…のくくりに納まらないとき、オルフェーヴルに悲願の凱旋門賞制覇が待っているのだろう。

 コンビの池添謙一騎手は、4月中旬から約2か月間のフランス滞在(経験)を試みる予定。はたたして、ロンシャン2400mでそれなりのレースに乗ることができるのか。そして、このアピール作戦が凱旋門賞騎乗に結びつくのか。この1年で立場や評価が変わったとは思えないが、鞍上はまだ発表されていないから、池添騎手が凱旋門賞で乗れる可能性十分ということだろう。外野はなんともいえない。沈黙の努力こそ金。周囲も本人も、饒舌は信頼をなくす。

 2着のショウナンマイティ(父マンハッタンカフェ)は、道中オルフェーヴルをマークするように進んで直線勝負に出ると、記録した上がりは32秒9。オルフェーヴルと異なり、勝負どころで一気にトップスピードにギアチェンジできないところが、GI馬とGII馬の差なのだろう。しかし、直線大外一気を決めた昨年の大阪杯よりはるかに中身が濃かったのは、走破タイムや上がりの数字が示す通り。完敗ではないように思えた。昨年の宝塚記念ではオルフェーヴルから0秒5秒差の3着(2着はル−ラ−シップ)にとどまっているが、明らかに今年の方がパンチ力を加えている。このあと出走予定の安田記念1600m向きとはいえない気がするが、活力のロスなく宝塚記念に出走できるなら、昨年以上の好勝負が可能と思える。

 エイシンフラッシュは、超スローの日本ダービーでもスパートを待つように我慢し、上がり32秒7を記録した馬。4歳時の有馬記念もスパートを待って一瞬の脚を使ったから2着。昨秋の天皇賞2000mでもあえて控え、インから直線一気の作戦に出て自身の上がりは33秒1。今回は少し行きたがりながらも早め早めの正攻法に出たわりに崩れなかったが、結局3着。やっぱり位置取りやスパートのタイミングの難しいである。このあとは香港のクイーンエリザベス2世Cの予定。騎手は、天皇賞.秋と同じM.デムーロ。チャンス大だろう。

 スローの流れを利して懸命に粘ったトウカイパラダイスは全能力を発揮した気がするが、案外だったのはダークシャドウ。無理なくスムーズに先行しているように映ったが、最初からハミをとるロスがあったという。それでもベストの距離2000mでこの内容は不満。エイシンフラッシュと同じで、道中のタメが利かないと苦しいタイプなのだろうか。

 4歳牝馬ヴィルシーナは、牝馬同士で上がりだけのレースなら33秒台でまとめることも可能だが、瞬発力や、高速スピードを求められるレースはもともと不向き。レースの後半が「57秒5-45秒3-33秒7」の高速決着。それが牡馬相手では、さすがに競り合いに加われない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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