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現役馬M3タイプ解説

  • 2013年04月24日(水) 18時00分
 春クラシック2戦が終わった。

 そこで今回は3歳牡馬のM3分析をしていこうと思う。M3分析とは、各馬の戦績と血統から、どういう状況でパフォーマンスを上げられるか、あるいはどういう状況でパフォーマンスが下がるのかを、馬券的に分析していく手法である。

 まず、皐月賞を勝ったロゴタイプ。

 ローエングリン産駒は、量やパワーが豊富で、力任せに単調な競馬をして強い。

 母父サンデーサイレンスも母父になると似たタイプになり、強引にパワー勝負に出て強い。闘う意欲(S要素)も強く、そこがやや量に偏っているローエングリンの弱点を補っている。

 苦しい状況のときにしぶとく粘ろうとするC的要素が希薄な配合だが、母の母がスターバレリーナと、母系からはC的要素を補っているのでバランスが良い。

 もちろん、ここまで活躍するのだから、血統構成が良いのは当たり前の話だが、もちろん問題点もある。

 ちなみに同じローエングリン産駒のゴットフリートは母系が非C系なので、C的要素が無く、揉まれず一本調子のレースをして強い部分が強調されている。別に無い要素があっても、競走馬として悪いわけではなく、むしろ頑強な突破力を持つことも多いが、ここで話しているのは強さの話ではなく、タイプ論だ。

 ゴットフリートが弱点を見せるレースは、しぶとさを要求されるレースであり、逆に強さを見せるのは一本調子に加速出来るレースになる。

 ローエングリン産駒には他にフェスティヴタローという競走馬もいるが、これは母系がC系で、ローエングリン産駒の中では、ややしぶとい走りをするタイプになる。

 ロゴタイプに話を戻すと、C要素が母系にはあるが、基本は単調なパワーで押すタイプだ。レコードを二度記録しているのも、目一杯パワーで強引に押しきれるようなレースに向くことを意味している。

 したがって、自分の走りをすると強く、強い相手に緩急のある競馬になると取りこぼしやすい。基礎能力そのものが他馬よりも高くないと辛い配合である。

 馬場は超高速時計決着や、逆に重など、力任せに走れる両極端な馬場に向く。

 ペースは平均速めが理想で、矯めるような競馬はあまり好まない。

 緩い流れで出入りが激しい変則ペースの場合は気持ちの持続が難しいので、強引に早めに動いて、自力勝負に持ち込んだ方が良い。

 エピファネイアの父はシンボリクリスエス。

 シンボリクリスエス産駒は、この連載や辞典でも何度も解説したように、体力と量の豊富な非C系で、揉まれると弱く、単調な競馬で強い。

 先程のローエングリン産駒に似ているが、ローエングリン産駒はS的要素も比較的強いSLないしLS系だが、シンボリクリスエスはL的要素が圧倒的に強く、体力と量への依存度が、かなり高い。

 そのぶん、緩急のある緩い流れでも対応出来るが、自分にとってタフな展開になったときに、嫌になって投げ出す割合は高くなる。

 皐月賞では、前走先行から流れ激化で差しに回る位置取りショックという、Mの基本ショックを行ったので連対できた。

 ただ、それまで厳しい競馬を経験したことがなかったL系なので、もし内枠だったら、前走より速い流れを差しに回った途端に、揉まれて嫌気が差して凡走していただろう。

 そういうタイプだから、単調に自分のペースで競馬を出来る広いコースの方が向くし、距離はいくら延びても、流れが緩慢になるぶん大丈夫だ。

 ただ、生命力を失うと我慢出来なくなるスピードが早まるタイプなので、生涯ストレスを溜め込んだ後では、強い相手での長距離は投げ出す確率が一気に高まる。生涯ストレスを失っても、強い相手に踏ん張れるのは2200m以下の非根幹距離になりやすい。

 したがって、生涯鮮度の低下が起こった後は、中長距離では自分より弱い相手に楽に競馬が出来るという意味で、トライアルホースになりやすいのがシンボリクリスエス産駒の特徴になる。

 その鮮度低下は使われ方にもよるが、ほとんどの場合、4歳を待たずに起きる。

 後は量で押しきるタイプだから、自分の肉体的限界がどこかが重要で、その潜在能力が2割程度他馬より上回っているのなら高齢になっても好走出来るし、ライバルと同程度の力なら、それより弱い相手か、生命力を要求されないレースでしか好走出来なくなる。

 生命力のある時期なら緩い流れになる延長の方が向くが、生命力を失うと、同程度の相手に、ストレス時の延長は厳しくなる。

 手薄なメンバーの場合なら、生命力を要求されないので、揉まれにくく量を活かせる延長の方が良い。

 サンカルロのように、自身の適性距離よりやや短い距離でのマイル以下なら、短縮やレース間隔を取ったり、使うレースを減らしたりすることで生命力を一時的に補給する方法も可能ではある。

 エピファネイアの場合は、母父が闘う意欲の強いスペシャルウィークなので、淡泊さを補っているが、本質的な性質は他のシンボリクリスエス産駒と何ら変わらない。

 自分のポジションを無理して取らないで済む条件で、揉まれないときがベストになる。

 したがって、広いコースや外枠、単調な流れ、ばらける道悪などは得意分野だ。

※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Struggle」の頭文字から。

C(集中力)
集中力を持つ馬。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は「Concentration」の頭文字から。

L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。Lの由来は「Light」の頭文字から。

M(まとまり系)
ひとつのタイプに偏らず、すべての要素を持ち、全体的にまとまっている馬。そのため、大きな特徴はないが、どんな条件も適度にこなせる。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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