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京都新聞杯激走馬も血統が教えていた

  • 2013年05月08日(水) 18時00分
 3歳クラシック路線の現役馬を見ながら、種牡馬のタイプも同時に解説していこう企画の3週目。

 せっかくなので、記憶が新しい先週行われたトライアル京都新聞杯を使って、見ていこう。

 私が予想で1、2、6番目に取りあげた3頭で決まって、3連複は万馬券と荒れた。勝ったのはディープインパクト産駒のキズナ。

 ただ、同馬は単勝1.4倍の断然人気だったので、あまり血統を解説しても意味はない。血統云々以前に、ここでは力と状態に差があったという部分が大きいからだ。

 一応、簡単に解説すると、ディープインパクト産駒に母父がストームキャット。

 ストームキャットは量系の母父で、安定した量を与える。そのぶん、我慢強さはない。

 したがって、今回のように後方に待機して上がりに賭けるような競馬は向く。揉まれないし、量を活かしやすいからだ。

 広いコースでスムーズに競馬をしたときに強く、極端に揉まれ込むと良くない。ただ母系から安定した量を供給されているので、疲れていなければ、多少揉まれても大崩れは少ない。

 そういうタイプだから自分の競馬をして強いので、楽に競馬が出来る延長や、広いコースに向き、自分より弱い相手には俄然安定感が高まる。

 気が良く、凡走からの巻返しは利きやすい。

 以上が基本的な性質だ。

 勝ったのは断然人気キズナだったが、2、3着には9、11番人気の人気薄が飛んできて、波乱になった。

 このレースで私は、滅多なことでは重賞で断然人気は本命にしないこともあり、キズナを同点評価で対抗とし、11番人気のジャイアントリープを本命に予想していた。

 血統辞典には、ネオユニヴァース産駒は、安定感はあまりないが、体力とパワーで押すタイプで、闘う意欲も高いと書いた。

 したがって、気分さえ乗れば自分より強い相手でも頑張れるし、気持ちが空回りすると自分より弱い相手にもあっさりと負ける。

 性質としては、キズナとは真逆なタイプだ。

 だからこそ、同点で2頭を評価したのである。

 キズナは相手弱化が向くし、逆にジャイアントリープは相手が強い方が余計なことに気が向く暇ながなく、レースが終わる可能性が高くなり、期待値が上がるのだ。

 ジャイアントリープは前走500万を2着に負けた。

 500万で負けてるぐらいだから、疲れやストレスはないし、相手強化も甚だしいという、血統的には実に走り頃な条件になる。

 また、同馬の母父はエルコンドルパサー。体力と量を供給するので、延長というのは願ってもない。

 あとはペースアップしてくれることで、体力を活かせ、かつ追走に懸命になって余計なことを考える余裕を与えない状況になってくれれば、ポカが少なくなって、ベストだ。

 メンバーを見ると比較的先行馬が多いので、スローはないだろう。

 ペースが上がればタフさが出てくるので、鮮度馬が有利に働きやすいのは、いつも書いてきている通りで、あらゆる意味で好都合だ。

 ただこのレースでは、前走がオープンではなかった鮮度馬が実に11頭もいた。

 格上げ戦や格上挑戦の鮮度馬の中には、2番人気リグヴェーダ、4番人気サトノメジャーなど、人気馬もいたのだ。

 彼らはどうなのか?

 せっかくなので、これまで何度か見てきた「鮮度馬が走りそうなレースで、どの鮮度馬をピックアップするのか?」という、Mの真価が発揮される部分を、もう一度復習しておこう。

 まず2番人気リグヴェーダ。

 前走は500万で1着だった。

 気になるのは、前3走全てで、テンの方が上がりより0.8秒以上遅いスローだった点。

 今回は流れが緩くなりやすい延長になるので、スローの経験しかなくても悪くはないのだが、ここ2走が9頭立てと6頭立て。

 スローに加えて少頭数では、精神的負荷が少なすぎる。鮮度は重要だが、負荷が掛かっていないようなレースを走り続けていると、もし今回タフな競馬になったら、受ける精神的ダメージは相当になってしまう。

 3走全てが1800mというのも気になる。

 これもいつも言うように、今回と近い距離の経験は別に必要ないというより、鮮度的には有利に働くことも多いのだが、経験の質は問題になってくる。

 1800mという、同一距離のスローばかりを経験しているのでは、さすがに他の質になったときの戸惑いは多い。

 いや、それは他の距離に限ったことではない。

 もし今回が1800mの重賞でも、いや1800mの重賞であれば余計に、危なくなる場合もある。

 同一距離ばかりを走り続けるという、閉塞感、飽きが如何に競馬にとってよくないのかは、もう解説するまでもないだろう。

 ただ、同馬には鮮度以外にも、プラスポイントもあった。

 レース間隔が8週開いている点だ。

 レース間隔が開くことで、ある程度過去をリセット出来るし、鮮度も高まる。ディープインパクト産駒自体が、間隔が開いて、フレッシュな方が走りやすいということもある。

 また、京都特有のスローになれば、血統的にもプラスだ。

 以上を鑑みれば、相手の1頭が妥当だろう。

 4番人気のダイワメジャー産駒サトノキングリーはどうか?

 同じ500万勝ちで、同じように前3走が1800m。

 この中には、速い流れのレースもあったのだが、これが同馬の場合はむしろプラスとは言い切れない。

 ダイワメジャー産駒は精神コントロールが難しく、前走より速い流れの方がコントロールしやすいのだ。

 これまで1800mで比較的速めの流れを経験してきたぶん、仮にペースが速かったとしても、距離が400m延びて、これまでよりレースは単調なものに感じる確率は高まる。

 また、2走前に重賞の毎日杯で6着に頑張っているのも微妙だ。

 重賞6着程度の好走なら、むしろストレスは残らないが、厳しい体験としては残るという、プラス要素に働くケースも多く、それが直接的ストレスを与える前走でない限り、積極的に評価することの方が私は多い。

 だが、今回のケースは諸刃の剣だ。

 というのも、やはり同馬がダイワメジャー産駒だからである。

 血統辞典などで何度か書いてきていることだが、ダイワメジャー産駒最大の欠点は、疲れやすさ、硬くなりやすさだ。

 毎日杯を6着好走後の中2週で前走を接戦勝ち、それからまた中2週で今回。

 疲れている可能性が高い。

 疲れている場合は、厳しいレースになると耐えきれなくなる。したがってペースが上がると危ないが、スローになればなったで、今度はダイワメジャー産駒の延長における精神コントロールの難しさという問題が顔を出す。

 2走前に重賞を経験していること、格上げで鮮度が高いこと、格上挑戦の馬の中では実力そのものもある程度高いことを考慮して、リグヴェーダの次、やはり相手の1頭評価が妥当だろう。

 それでは、11頭いた鮮度馬の1頭、9番人気ペプチドアマゾンはどう評価するか?

 彼はアグネスタキオン産駒であり、そしてそれが全てだった。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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