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出遅れると有利?!

  • 2013年06月19日(水) 18時00分
 以前、出遅れについて書いたことがあるが、出遅れで興味深いレースがここ2週重賞であったので、もう一度考えてみよう。

 ユニコーンSのベストウォーリアと、エプソムCのジャスタウェイだ。ユニコーンSでは、そのベストウォーリアを本命に予想していた。

 まだ中央のオープンを一度も走ってなく、また前走は地方のレース。かなり鮮度が高いステップに加え、ご丁寧に短縮ショックも掛かる。精神的に優位に立てる要素が満載だったわけだ。

 いつも書くが、精神的にフレッシュな場合は、馬群を割れる可能性が高まる。そういう馬が15頭立ての多頭数で6番枠というのは、内をロス無く回って馬群を割る形が取れるわけだから、かなり有利だ。

 ということで、本命に予想したわけだが、レースは隣の枠で人気のチャーリーブレイヴの出遅れにつられたのか、一緒に出負け気味に。「あちゃー」と頭を抱えていると、出負けを挽回するためにスタートから仕掛けて好位に。そのため、少し掛かり気味になってしまった・・・。

 これは完全に負けパターンだ。

 スタートのロスを取り返すために無理に仕掛けたのと、掛かり気味になったこと。この2つで体力を消費している。このパターンで連対するには、この後、ゴール板までの体力消費を最小限に抑えない限り無理だ。

 するとどうだ。さすがは地方のトップジョッキー上がりだけあって、馬群の内を選択。もちろん予定通りに馬群を厭わず、するりと抜け出して快勝。相手が一番人気だったので馬単27倍しか付かなかったが、ちょっとしたお小遣いをプレゼントしてくれた。

 もし出遅れた上に外を選択していたら、少なくとも勝てなかったはずだ。

 これと似ていて、微妙に違ったのがエプソムCのジャスタウェイである。

 それまでの馬場状態から、やや外目の差し馬が来ると私は戦前踏んでいた。外目で上位に来そうなのは、前走惨敗でストレスのないファイナルフォームと、休み明けで鮮度の高いジャスタウェイの2頭になる。となれば、当然ここから選ぶことになる。

 1番人気のサトノアポロも外枠の差し馬だが、再三書くようにシンボリクリスエス産駒はそれほど相手強化を好まない。特にレース質の軽い新潟のGIIIから東京のGIIIの流れは合わないので、押さえの1頭でよい。

 最初はジャスタウェイにしようかとも思ったのだが、気になる要素が2つほどあった。

 1つには血統。闘う意欲は強いが、やや精神コントロールの難しいハーツクライ産駒だ。東京の緩い単調な流れで、ずっと馬群の外々を回っていたら、途中で走るのがバカらしくなって投げ出すリスクがある。

 もう1つは、単純に物理的な問題だ。もし超スローになった場合、外枠から馬群のずっと外々を回った差しを選択したら、外差しの決まる馬場でも、さすがに物理的に間に合わなくなる恐れがあった。

 そこでジャスタウェイよりはやや内目の6枠だったファイナルフォームの方を選択して、ジャスタウェイは対抗に予想した。

 レースは、そのジャスタウェイが出遅れ。流れはスロー。しかも、この日あたりから前週安田記念の外差し馬場から、急激にイン伸び馬場に変化したのだった。その為、内枠の1、2、3番の馬が1、3、4着になるという、極端な内を選択した馬以外は用なしの競馬になった。

 ファイナルフォームも、2頭を除くと6着まで5番枠以内の内枠絶対競馬を、なんとかステップの優位性で中枠から4着に突っ込も、さすがにここまでが精一杯。

 もちろん、大外枠だった1番人気サトノアポロは、馬場も味方しないのでは、為す術もなく7着に沈んだ。

 だが、1頭だけ、外枠から馬券に絡んだ馬がいた。それが出遅れたジャスタウェイである。

 ジャスタウェイは出遅れたために、腹をくくって、そのまま最内に入れて道中を運んだのだ。その為、内伸び競馬の流れに乗って、最内から抜け出して2着に突っ込んで来たわけである。

 内伸び馬場と、精神コントロールの難しさを、馬群に入れることでコントロールするという、戦前2つあった懸念材料を見事にプラスに転化したのである。加えて、休み明けなので鮮度が高く、馬群を割れる状態をも、最大限に活かすことができたのだ。

 もしスタートを決めて、そのまま大外枠から馬群の外々を回っていたら、ファイナルフォームと同じか、あるいは途中で投げ出して5着以下に惨敗だったろう。出遅れることで、外から自然と内に進路を取れたという、災い転じて福と成すパターンとなった。

 出遅れには、このように外差し不利な競馬を自然に内に進路を取れるパターンの他、揉まれ弱い馬の内枠の場合は、逆に馬群から離れて外を選択できるという形もある。

 馬のそのときの精神状態と馬場、脚質によって、プラスに作用することも多いのが出遅れである。もちろんマイナスに作用するケースの方がより多いが、それほど両者に決定的な差はない。

 出遅れを利して、そのときの心身状態に合わせたコース取り、位置取りを取れるかが、明暗を分けるのである。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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