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ゼンノロブロイ産駒の激走と惨敗の法則

  • 2013年07月10日(水) 18時00分
 今週は2場のメインで、ゼンノロブロイ産駒がキーを握るレースがあったので、ゼンノロブロイ産駒について、ちょっと復習してみようと思う。

 七夕賞では、ゼンノロブロイ産駒のトレイルブレイザーが2着に激走した。

 個人的には、割れた人気で単勝が4倍付いてたこともあるが、前日予想で滅多にしない重賞での1番人気の本命だったマイネルラクリマが勝ったレースだったのだが、トレイルブレイザーまでは印が回らず、悔しい思いをした。

 実はこのトレイルブレイザーが、如何にもゼンノロブロイらしい激走パターンだったので、拾い上げきれなかった反省の意味も込めて、詳細を見ておこう。

 トレイルブレイザーは、確か一年ほど前にこの連載で、ゼンノロブロイ産駒の典型パターンとして、分析した馬だった。そのときの解説で、ゼンノロブロイ産駒は、体力と量で淡泊に押すタイプで、揉まれたりすると脆く、またストレスに弱いので交互になりやすいというようなことを書いた。

 ゼンノロブロイ産駒の典型であるトレイルブレイザーは、格上げで鮮度が高かったAR共和国杯を除くと、一度も連続連対していないという話もした。実際、この解説を書いた後の海外に遠征しても、ゼンノロブロイ産駒はゼンノロブロイ産駒だった。

 休み明けのアロヨセコマイル5頭立てを2着に激走。休み明けの少頭数で強いというのは、量系血統の基本中の基本だ。続くブリーダーズCは、マイルからいつも走っている2400mに戻って、しかもアメリカ2戦目の慣れも見込めるということで期待も膨らんだが4着。休み明けを叩いて、相手が強化されるというシチュエーションはあまり得意ではなく、まだアメリカ2戦目の鮮度と延長適性がプラスには働くも、連対圏にはさすがに持ってこられなかった。

 続く有馬も9番人気と穴人気の一角だったが、13着に惨敗。12頭立ての4着とは言え、ブリーダーズCは激走の部類だし、そのストレスのある中、16頭立てでタフな中山のGIに向かう流れでは、投げ出すのは仕方ない。

 その後、海外遠征を続けるが、海外にも飽きてきて鮮度もなくなったところに、相手も強かったことが重なりり、連続して惨敗。そして迎えたのが今回だった。

 海外帰りの休み明けで、実績の少ない小回りローカルの58キロ。恐らくここは何かの叩き台で、全く陣営も当初から走らせる気もなく、仕上げていないと考えて、あまり考えることもなく、相手に取りあげなかった。

 しかし、直線では早めに動いて、マイネルラクリマに肉薄してきた。

「あ、しまった・・・。こんなのいたのか」それが素直な感想だった。

 確かに今回は、休み明けでリフレッシュして、GIからローカルメンバーに一気にレベルダウン。パワーのあるタイプの量系が好きなパターンが揃っている。

 また、捲り気味に早めに動いたのも良かった。揉まれると投げ出す確率が格段に上がるのがゼンノロブロイ産駒だ。そのため、格下相手のローカルなら、捲った方がよい。持ち前の体力とパワーが活きるし、捲り気味に動いた方が、小回りの好位で馬群に入ってじっとしているより、勝負所で揉まれ込むリスクがグンと減るからだ。

 したがって、パワーのある量系は、小回りで相手が弱い場合は捲るのが一番良いのだ。また、58キロを背負っているのもポイントだ。

 斤量を背負っている場合、直線の瞬発力勝負は分が悪い。瞬時の加速が難しいからで、惰性で走る捲りの方が斤量の影響は受けにくくなる(もともと量系は斤量の影響を受けにくい性質もあるのだが)。

 全てを解決する、見事な捲りだ。

 ただ、マイネルラクリマに直線襲い掛かる様子が目に入っても、単勝に関しては安心していた。馬体を併せれば、闘う意欲のより強いチーフベアハート産駒のマイネルラクリマが競り落とす確率の方が高い。トレイルブレイザーが勝つには、もっと一気に加速して交わすべきだった。

 少なくとも同じようにパワーがあるタイプのマイネルラクリマがやられる確率は低い。負けるなら、瞬発力があって、体力を温存した、これからやってくる正反対の性質を持った差し馬であって、トレイルブレイザーではない。

 今度は危ないパターンのゼンノロブロイ産駒を見てみよう。

 同じ日の函館メインマリーンS(ダート1700m)に、3番人気でマカニビスティーというゼンノロブロイ産駒が出ていた。

 この人気馬の評価を6番手に下げたこともあって、3連複44倍を1点目で当てることが出来た(2着馬が同点で当日人気がない方が来たため)。そのマカニビスティーを、前走大沼Sから順に分析していこう。

 大沼Sは2走前から中8週開いていた。量系らしく、リフレッシュして走りやすい状態だった。9着惨敗後というのも、ストレスを残さずに、ゼンノロブロイ産駒にとってはむしろプラス。さらには、前走が芝のレースだったので、リフレッシュ度はかなり高くなる。唯一、そしてかなりの問題は、2400mから小回り1700mへの短縮になるという点。

 これでは、流れが忙しくなったときに揉まれるリスクがかなり高くなって危ない。この危険性を回避するには、先程も見た特別な方法を騎手が背後を断って選択する以外にはないのだ。

次回は、この続きとダイワメジャー産駒との違いを見ていこうと思う。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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