スマートフォン版へ

馬体重と血統

  • 2013年07月31日(水) 18時00分
 いよいよ、8月。暑さも佳境に入ってくる。真夏や、真冬。極端な気候の時期は、馬体重にも注意が必要だ。馬体重を見るだけで、ほとんど走れる状態の馬が分かるレースも少なくない。

 過去にも何度か解説してきたが、馬体重はただ太いとか細いとかで、好凡走が決まるものではない。500キロ近くある動物で、しかも陸上選手と違って、ある程度アバウトに走っているのが馬だ。2キロや4キロが競走に決定的な影響を与えることは、ほとんどない。しかし、2キロの増減で結果は全く違うのも、また競馬である。

 それは、「2キロ馬体が重い」ことが重要なのではなく、「前走より2キロ増えた」ことが重要だからだ。生命(馬)は過去との連続性でしか、生きることはないし、そこから逃れることは出来ない。連続性が断たれたときが、すなわち生命でなくなるときであって、連続性そのものが生命だからだ。過去との差異が、生命の営みに与えるインパクト、それを端的に表すのが馬体重である。馬体重という数字が絶対値として重要な意味を持つのは、10キロを超えた辺りの部分でしかないだろう。ただ、連続性、相対性の中で捉えたときには、たった2キロでも、全く違う結果を生むのだ。それが馬体重である。

 馬体重の連続性、相対性とは、これまでのローテーションと馬体重の動きで判断される。それに、今回の距離、流れ、位置取りによって最適な増減値が決まる。

 また、馬固有の問題、すなわちタイプ、血統によっても、最適な増減値は違ってくる。抽象的な話が長くなったので、今週あった分かりやすい単純な例を見ていこう。

 まず日曜の小倉7R。1番人気でプリュムという馬が出ていた。私も珍しく1番人気で本命にしていたのだが、その理由が「休み明け」だった。

 休養前の2戦が3着、4着、9着と順に着順を落としている。このパターンで考えられるのは、蓄積疲労か、馬が休み明け2戦を好走したことで硬くなってしまったケースだ。であるなら、休んだのは大きなプラスだ。

 もし、この馬が前走から中2週で出てきたなら、買い目には全く入れなかったろう。ただ、疲労を取るためには、1つ絶対的な条件がある。

 馬体を増やすことだ。前走8キロ減っていたので、10キロは増えるのが望ましい。例え20キロ増でも、2キロ減で出てくるよりは、好走確率で3倍ぐらいは違う。そこで予想でも「10キロくらい増えてくれば」と書いた。

 ところが当日は2キロ減。この時点で、ゼロではないが、ほぼ90%は消えた。だが、馬体重の発表後でも、1番人気のままだ。

 これが、馬体重が好凡走に重要であると同時に、馬券的にもあらゆる要素の中で最も重要といわれる所以だ。2キロ減で出てくるのと、10キロ増で出てくるのは、今回の場合では好走確率は10倍近くは違ってくる。つまり、馬体重の発表時点で、単勝3.2倍の馬なら、32倍にならなければいけない。しかし、それほど馬体重はオッズに影響を与えない。

 例えば天皇賞秋において、トライアル毎日王冠が1着と15着だった場合で、トライアル前と評価は変わらないだろうか? 大きくオッズに影響を与えるはずだ。

 それなのに、前走着順と同じくらい、いやM的に言えばそれ以上に重要な馬体重の発表後に、オッズがあまり動かないのだから、期待値との観点からも、馬体重ほど相対的に重要な馬券指標は他にないのである。

 ところで、なぜプリュムは10キロ増える必要があったのか?もちろん休養前に細化していたこともあるが、それだけはなない。それは、「ダート小回りの延長」で、「先行馬」で、「ダイワメジャー産駒」だったからだ。

 逃げ、先行馬、特にダートの場合は、MではS質なパワーが要求されると考えられている。誤解を恐れずに単純化して言えば、S質なパワーが要求されるケースにおいては、馬体が増えていた方がよいのだ。

 また距離延長で、かつキレ味を要求されない条件の場合、単純にパワーがあった方が良いので、馬体細化はよくない。

 そして何より重要なのは、ダイワメジャー産駒という点だ。この馬がダイワメジャー産駒でなかったら、敢えて本命にしていなかった可能性が高い。

 先週まで見てきたように、ダイワメジャー産駒は蓄積疲労に弱い。だから前走の9着は、単純に蓄積疲労によるものと判断できる。したがって、今回休養で馬体が増えてきたら、リフレッシュして疲れが取れた可能性が高まる。ダイワメジャー産駒だからこそ選んで、ダイワメジャー産駒だからこそ、10キロ増えることが好走への条件だったのである。だが、2キロ減だったので、馬群に沈んでいった。

 その直後の函館8Rも予想していたのだが、本命にしていたのはエアウィーバーという馬だった。この馬も休み明けだった。だが、敢えて馬体重に言及しなかった。

 そして、当日はプリュムの2キロ減どころか、10キロ減っていたが、1着。馬単20倍を当てることが出来た。この馬と前述のプリュムとは、一体何が違ったのだろうのか?

※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Struggle」の頭文字から。

大穴血統辞典2013-2014

大穴血統辞典2013-2014

 競馬王新書054『ポケット版 大穴血統辞典2013-2014 反動編』は、10月20日(土)発売です!!

今作は、シリーズ最多100頭の父&母父の最新データ、激走後の反動力を見る新指数「衝撃指数」、激走の仕組みや狙い方を血統が苦手な人にも使えるように書き下ろした「ショックの全貌」など、著者・今井氏の理論の集大成ともいうべき一冊になっています。進化を続ける血統辞典を片手に、驚愕の大穴馬券を狙い撃ちしてください!!

※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング