牝馬三冠を達成し、続くジャパンCまでも制したジェンティルドンナ。海外遠征でも好走しており、現時点ではディープインパクトの最高傑作といえるだろう。
母のドナブリーニは英2歳GIの勝ち馬で、引退と同時に繁殖セールに出され、それをノーザンファームの吉田勝己オーナーが高額で落札。ディープインパクトを相手に、最初に出したのがドナウブルー(京都牝馬S、ヴィクトリアマイル2着)、2番目に出したのがジェンティルドンナである。
セレクトセールは今年もディープインパクト産駒の高額落札が相次いだが、それらの母の競走成績と繁殖成績を調べてみると、この姉妹の活躍が参考になっていることがよくわかる。
1.母が海外の重賞勝ち馬
2.引退と同時に輸入
3.初仔から3番仔
この3項目に当てはまる馬がけっこういるのだ。たとえば当歳部門においては、落札価格2位のマルペンサの2013(2億3000万円)、3位のリリーオブザヴァレーの2013(1億9000万円)がこれに該当する。ともに初仔で、マルペンサは亜GIの勝ち馬、リリーオブザヴァレーは仏GIの勝ち馬である。
競走成績が優秀だからといって、繁殖牝馬として成功するとは限らないのがサラブレッドの世界。むしろ、期待を裏切ることのほうが多い。
だから、名牝の初仔をいきなり高額で落札するのは、「愚かな金持ちのやること」、「大金をドブに捨てるようなもの」と、本来なら物笑いの対象となりやすい。
しかしドナウブルー、ジェンティルドンナの姉妹が示すとおり、ディープインパクトはそれで実績を上げているのもまた事実だ。売り手側はそこを最大のセールスポイントとして強調し、買い手側が乗ったということなのだろう。
むろん、その陰には同様の配合による失敗例がいくらでもある。セレクトセールで高額落札されたディープインパクト産駒は、多くがこれまで不振続き。この選択方法が、果たして新たな流れをつくり出すのか。3年後のクラシック戦線をしかと見届けたい。