創設されて今年がまだ5回目の新しい重賞。3歳馬限定のダート重賞は、JRAではこの1800mのレースと、6月の「ユニコーンS」1600mしか組まれていない。そのため、のちのトップホースを送る登竜門のレースとしての役割を持つのは当然だが、過去4回の出走馬はその期待を少しも裏切っていない。
09年、第1回の勝ち馬トランセンドは、ジャパンCダートなどGI格のレースを4勝するチャンピオンに育ち、ドバイWCでも快走した。第2回の勝ち馬になる牝馬ミラクルレジェンドは、交流重賞を中心に計12勝も記録し、3着だったソリタリーキングもマーキュリーCなどここまでに9勝を挙げている。昨年の勝ち馬ホッコータルマエのそのあとも素晴らしく、帝王賞を含め現在5連勝中、もう通算9勝である。
この距離1800mにマトを絞るようになってから、1戦ごとに充実しているインカンテーション(父シニスターミニスター)から入りたい。1800mの走破タイムを使われるごとに短縮していると同時に、先行して粘り込むだけでなく、追い出して再加速が利くようになってきた。ここまで10戦、連続して騎乗したのは国分優作騎手だけで、毎回のように乗り代わり、すでに9人の騎手が騎乗している。成長期には珍しいケースだが、それで結果を残しているから、クセがないとかではなく、素直な対応力がある。今回の大野拓弥騎手はテン乗りではなく、4走前の中京ダート1800mを逃げ切っている。
父シニスターミニスターは、米3冠馬シアトルスルー直系。9ハロンのGIブルーグラスSを1分48秒85で大差の独走がある。日本で種牡馬となってまだ重賞級の大物はいないが、典型的なアメリカ血脈の、かつシアトルスルー系だから、平均ペースで流れる1800m前後で先行するのがベストと思える。多分に一本調子の死角をもつことが多い父系だが、ハナを切ってレースをしたのは大野騎手だけ。変に控えるよりいい。
母の父は、前出トランセンドの母の父として、またドバイWCに強い種牡馬として名を上げたマキャヴェリアン。3代母は英オークスなどGI4勝の名牝タイムチャーター。凱旋門賞に2回も挑戦し、83年は1番人気だった。そのタイムチャーターの父方祖父がダンサーズイメージ(父ネイティヴダンサー)なので、父母両系から高いダート適性を受けたのは間違いない。数えたわけではないが、6〜7代の血統表にするならネイティヴダンサーの名前がもっとも数多く出現しそうな血統構成は、いかにも夏のローカルで行われるダート重賞のイメージでもある。
デキの良さを評価したいのは、目下2連勝の上がり馬ジェベルムーサ(父アグネスタキオン)。1600〜1700mで全3勝だが、レース内容から1800mの方が合っている可能性が高い。追って確実にのびてくる。ドバイのUAEダービーに挑戦したケイアイレオーネ(父へニーヒューズ)は、毎年このレースで連対馬を送るジャパンダートダービー(大井)の3着馬でもある。ここは強敵相手と対戦の経験が生きそうだが、あまり距離は延びないほうがいいタイプとも思えるので、あえて3番手にとどめた。
以下、めったに崩れないシグナルプロシード、リキサンステルス、牝馬アムールポエジーが連下候補。2〜3着には人気薄の伏兵が台頭するレースなので、サトノプリンシパル、ハイパーチャージも連穴級に考えておきたい。