今週月曜日の19日より全4日間の日程でサマーセールが始まっている。国内最大頭数が上場されるこのセールはかつて定期市場と呼ばれ、各地を巡回しながら開催されていた。それが新ひだか町静内の北海道市場に集約されるようになり、現在はここだけで開催される。
19日より始まったサマーセールの会場風景
昨年まで5日間の日程であったが、購買者側から「長すぎる」との意見が多く寄せられ今年より1日短縮されて4日間となった。しかし、上場予定頭数は1240頭と例年並みである。サラブレッドの生産頭数は漸減傾向にあるものの、市場上場予定頭数にさほどの変化が見られないということは、つまりそれだけ庭先で売れていないということでもある。
もっとも、相対的に市場落札価格が下がってきている昨今の状況を見れば、無理に庭先でなくとも市場で安く買える時代になったのは間違いない。かつては夏のこの時期だと100万円、150万円という価格帯は例外に属していた。しかし、今では、この価格帯で落札される馬が決して少なくない。こうした傾向にもう誰も驚かなくなった。
昨日まで2日が終了しており、現時点での数字は以下の通り。初日(19日)は上場頭数275頭(牡154頭、牝120頭、せん1頭)、落札頭数146頭(牡91頭、牝55頭)。売り上げ総額6億4533万円(税込)。売却率は53.09%(牡59.09%、牝45.83%)、平均価格は442万0068円。
2日目(20日)は上場頭数299頭(牡153頭、牝146頭)。落札頭数164頭(牡93頭、牝71頭)。売り上げ総額6億6029万2500円(税込)。売却率54.84%(牡60.78%、牝48.63%)。落札平均価格402万6173円である。
2日間の数字を集計すると、上場頭数は574頭(牡307頭、牝266頭、せん1頭)、落札頭数は310頭(牡184頭、牝126頭)、セール日程を半分消化した段階で約13億562万円の売り上げとなっている。
昨年は24億2835万円の売り上げで平均価格429万円であった。この数字を基にすれば、今年の場合は1日当たり6億円ずつの売り上げで計24億円となる。今のところそのノルマは達成できており、この勢いを後半でも持続させたいところだ。
初日の最高価格は「オマイタ2012」
2日目の最高価格は「コールドフロントの2012」
なお、初日、2日目ともに最高価格馬は2050万円(税抜)であった。初日は173番「オマイタ2012」(牡栗毛、父アドマイヤムーン、母オマイタ、母の父Miswaki)で、生産は浦河の(有)駿河牧場。飼養管理者は(有)チェスナットファーム。半兄にツルマルジュピター(父マンハッタンカフェ、京王杯2歳S3着、4勝)がいる。
2日目の最高価格馬は534番「コールドフロントの2012」(牡青鹿毛、父サムライハート、母コールドフロント、母の父Storm Cat)生産は(有)荻伏服部牧場、飼養管理者は(有)チェスナットファーム。
毎年感じることだが、とりわけサマーセールの場合には、「個体」が重視される傾向にある。性別、血統とはまた違った「馬の出来栄え」が、厳しく吟味される。ブラックタイプはもちろん無視できないし、種牡馬もランキング上位の産駒ほど有利なのは言うまでもないが、それとは異なる部分にも1頭ずつ丹念に購買者の目が注がれる。その意味でここはプロの犇めく世界だ。
ただし、生産者の立場からすれば、いかにもシビアな現実に直面させられる。お台付け価格くらいには何とか売れて欲しいと切なる希望を抱いて上場させても、半数近い馬は声がかからず、また声がかかったとしても、いきなり、100万円、150万円というような価格が打診されたりもする。そこで鑑定人との“相談”になるわけだが、このわずか数秒の間に、どうかすると牧場の経営を揺さぶりかねない判断をその場で迫られるのだ。
公設市場だから、多くのバイヤーの目が光る中での上場である。その場で付けられた価格が現時点でのその馬の評価となる。もちろん価格が希望額に達しなければ「売らない自由」も販売者にはあるわけだが、現実問題として「このまま売らずにいたらこの先どうなるか」というようなこともまたわずか数秒の間に頭を過る。オータムセール?または育成牧場に預けて来年のトレーニングセール?さもなくば自分の服色で競馬に供する?おそらくは、これらの選択肢よりも、今の時点ではたとえ安くともこの場で商談をまとめた方が得策と判断する生産者が多いのも事実だ。だからこそ、叩き売りのような落札馬が大量に出て来る。以前ならばオータムセールで見られたような風景が、今はサマーセールでも数多く見られるようになった。生産は事実上「我慢比べ」になりつつある。どこまで持ちこたえられるか、になってきている。