小倉競馬の滞在出張期間は普段は接することのない藤沢和、上原といった関東の名門キュウ舎を取材できたことで記者としても大きな刺激になった。しかし、一番の“衝撃”は遠い小倉のターフビジョンから見た新潟競馬のある映像。それが10日に行われたサトノアラジン(牡・池江)の芝外1600メートル新馬戦だ。
当時は栗東を離れていたので直接取材をする環境になかったうえに、週末栗東から小倉へやってきた記者仲間から入ってきた情報は「池江先生は泣きが入っている」というもの。さらには「白井キュウ舎のスザクは相当な大物らしい」という声も。単勝オッズはサトノアラジンが1.5倍に対し、スザクは4.5倍。(スザク勝負の)誘惑を断ち切るのは簡単ではなかったが、仕事にかこつけて馬券を見送り、大型の画面でレースを見守ることにした。
ゲートが開くとスザクが軽快に好位につけるのとは対照的に、サトノアラジンはモタつき気味。戸崎圭に促されて直線で大外に進路を取ったときもまだ頼りなさそうに見えたのだが、ゆったりとしたフットワークで加速しスザクに並びかける。脚の回転数では明らかにスザクの方が速いのだが、そこからどんどん後続を引き離したのはサトノアラジンの方。ターフビジョンに大映しになっても全くスピード感はないが、一見速く見える馬たちを置き去りにしていくシーンは違和感を覚えるというか…それこそ父ディープインパクトのデビュー戦とはまた違った衝撃だった。
栗東に戻って池江調教師にその感想をぶつけてみると、トレーナーのレース前の不安も記者の“違和感”に重なるものがあったようだ。
「直前の追い切りではゴール前でモタモタしているように見えた。それで“これで大丈夫かな”って感じのコメントをしたんだけどね。跳びが大きいからそう見えるんだろう。後から見たら時計は出ていたし、やっぱり走るんだなと思った」
一流馬のレースぶりを「他馬が止まっているように見える」と表現することがあるが、この馬の雄大なフットワークは言うなれば逆。記者はこれを上手に表現する方法を見つけられなかったのだが、池江師自らがあるトップアスリートにその走りを例えてくれた。“世界最速の男”ウサイン・ボルトだ。
「ボルトは100メートルでも見た感じはすごくゆったりと走っているように見えるよね。それでも余裕がある。この馬もそういう感じじゃないのかな。“サラブレッド界のボルト”を目指したいね」
現在はノーザンファームしがらきに放牧に出て軽めの調整を行っているが、すでに池江師の中には今後の大まかなビジョンはできている。
「次はどことは決めていないが、東京競馬場で走らせたいね。そこから“王道”を進ませるつもり。そろそろ朝日杯FS勝ち馬じゃないところから最優秀2歳牡馬が出てもいいころじゃない?」
サラブレッド界のボルトはこれまでの常識すら変えようとしているのかもしれない。次走はあくまで未定ながら、願望込みでGIII東京スポーツ杯2歳S(11月16日=東京芝1800メートル)で、その規格外の走りを見せてほしい。
※本日は『トレセン発秘話』も更新されております。下部のバックナンバーからご覧ください。
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